その転入生は、田舎臭いダブダブの服を着て、中途半端な短髪の前髪で目をわざと隠しているかのように見えた。その上、ずっとうつむいていたので、誰もはっきりと顔を見ることは出来なかった。
「え〜と、今日からこのクラスに転入してきた十勝、ゆうきさんだ。入学式には間に合わなかったが、まだ新学年が始まって間もないのだから、早く仲良くなるように。それから、十勝はまだ制服を持っていないので、暫くは私服でも良いことになっている」
先生の言葉が終わっても、ゆうきは何も言わず、すでに下がっている頭をそれ以上下げることもなかった。
その日の授業が終わった時、ある男子が、ゆうきに向かって話しかけた。
「おい、十勝、だったよな。お前、なんでそんな小作ばばあみたいなかっこしてるんだよ。それって......、まさか、おかあちゃんの服じゃないだろうな?」
周りで、他の男子たちがドッと笑いだした。すると、教室の反対側でそれを見かけた大柄で体格の良い女子が、ドカドカと近寄ってきて、からかった男子の襟首を掴んだ。
「おい、何言ってんだ。転入生をいじめるなよ!」
周りの男子たちが「あいつ道場通ってるんだろう?」「黒帯とか?」と囁きあっているのが聞こえた。ゆうきをからかっていた男子は、「まだ、いじめてなんかいないだろう?」と言うと、すっとその場をすり抜けて逃げた。
その大柄な女子は、ゆうきを誘って校門を出た。
「全くろくでもない奴らだ。投げ飛ばしてやりたいよ。ほんとだよ。私は道場で鍛えているんだから。この中学でも、早速柔道部に入ってるんだし。それで、私は美春つばめ」
ゆうきは何も言わない。
「分かってるよ。私の名前が似合わないって思ってんだろう。うちの親父が美空ひばりのファンで、それにヒントを得て付けた名前なんだ。何とも浅はかだよな。道場の男どもは、私の事を、つばめじゃなくて、ダチョウだろうって言うんだ。全く失礼だよ。まぁ、ダチョウだって良い所はあるけどね。例えば、細くて長い足かなぁ。私にはそれも無い」
帰り道の途中、つばめが思いついたように言い出した。
「それで、ゆうき、私の家においでよ。私、もう一着制服があるから、貸してあげるよ」
これを聞いた時、ゆうきは初めて顔を上げた。そして、頷いてから、「ありがとう」と言った。
「へ〜、喋れるんじゃない。それも、ちょっとした低音だな。まぁ、どうでもいいことだけど」
つばめは自分の部屋にゆうきを入れると、制服を出して言った。
「しかし、あの男どもの肩を持つ訳じゃないけど、ゆうき、その服、ほんとにお母さんのを借りてきたんじゃないの?」
「あ〜、もともと、あまり服を持っていなかったし、引っ越しで無くなったりして」
「ふ〜ん。兎に角着てみて」
ゆうきは着替えた。
「私のだから大きすぎるかと思ったけど、大丈夫だ。あのダブダブの服を着ていた時には気が付かなかったけど、ゆうきは前が随分膨らんでるから、このくらい大きくないとピチピチで目立っちゃうよね」
ゆうきは少し顔を赤らめたようだった。
「それで、ちょっと、髪型もなんとかしないと。私は柔道やってるし、それに、不細工だから、自分の髪型をどうのこうのって言う柄じゃないんだけど、ほんとは興味あるんだ。ゆうきをモデルにしてみるかな」
つばめは母親の部屋から整髪用品を持ってきて、ゆうきの髪の毛をいじり始めた。
「わぁー、驚き。意外と可愛いじゃん! うん、ゆうき、すごくきれいな顔してる。これで学校に行けば、もういじめられないよ。それどころか、男どもの視線が集まるかな」
ゆうきは、喜ぶどころか困ったような顔をしだした。
「あの〜、俺、あまり目立ちたくないんだけど」
つばめはキョトンとした。
「今、『俺』って言った?」
ゆうきは少しためらってから答えた。
「あ〜、うん。前居たところでは、みんなそう言うんだ」
「へ〜、おもしろいじゃん。相当な田舎なの? まぁ、いいや。でも、この辺で『俺』は止めたほうがいいと思うよ。また、いじめられないように。それで、これも貸してあげるから、明日は髪の毛を整えて来なよ」
「え〜と、今日からこのクラスに転入してきた十勝、ゆうきさんだ。入学式には間に合わなかったが、まだ新学年が始まって間もないのだから、早く仲良くなるように。それから、十勝はまだ制服を持っていないので、暫くは私服でも良いことになっている」
先生の言葉が終わっても、ゆうきは何も言わず、すでに下がっている頭をそれ以上下げることもなかった。
その日の授業が終わった時、ある男子が、ゆうきに向かって話しかけた。
「おい、十勝、だったよな。お前、なんでそんな小作ばばあみたいなかっこしてるんだよ。それって......、まさか、おかあちゃんの服じゃないだろうな?」
周りで、他の男子たちがドッと笑いだした。すると、教室の反対側でそれを見かけた大柄で体格の良い女子が、ドカドカと近寄ってきて、からかった男子の襟首を掴んだ。
「おい、何言ってんだ。転入生をいじめるなよ!」
周りの男子たちが「あいつ道場通ってるんだろう?」「黒帯とか?」と囁きあっているのが聞こえた。ゆうきをからかっていた男子は、「まだ、いじめてなんかいないだろう?」と言うと、すっとその場をすり抜けて逃げた。
その大柄な女子は、ゆうきを誘って校門を出た。
「全くろくでもない奴らだ。投げ飛ばしてやりたいよ。ほんとだよ。私は道場で鍛えているんだから。この中学でも、早速柔道部に入ってるんだし。それで、私は美春つばめ」
ゆうきは何も言わない。
「分かってるよ。私の名前が似合わないって思ってんだろう。うちの親父が美空ひばりのファンで、それにヒントを得て付けた名前なんだ。何とも浅はかだよな。道場の男どもは、私の事を、つばめじゃなくて、ダチョウだろうって言うんだ。全く失礼だよ。まぁ、ダチョウだって良い所はあるけどね。例えば、細くて長い足かなぁ。私にはそれも無い」
帰り道の途中、つばめが思いついたように言い出した。
「それで、ゆうき、私の家においでよ。私、もう一着制服があるから、貸してあげるよ」
これを聞いた時、ゆうきは初めて顔を上げた。そして、頷いてから、「ありがとう」と言った。
「へ〜、喋れるんじゃない。それも、ちょっとした低音だな。まぁ、どうでもいいことだけど」
つばめは自分の部屋にゆうきを入れると、制服を出して言った。
「しかし、あの男どもの肩を持つ訳じゃないけど、ゆうき、その服、ほんとにお母さんのを借りてきたんじゃないの?」
「あ〜、もともと、あまり服を持っていなかったし、引っ越しで無くなったりして」
「ふ〜ん。兎に角着てみて」
ゆうきは着替えた。
「私のだから大きすぎるかと思ったけど、大丈夫だ。あのダブダブの服を着ていた時には気が付かなかったけど、ゆうきは前が随分膨らんでるから、このくらい大きくないとピチピチで目立っちゃうよね」
ゆうきは少し顔を赤らめたようだった。
「それで、ちょっと、髪型もなんとかしないと。私は柔道やってるし、それに、不細工だから、自分の髪型をどうのこうのって言う柄じゃないんだけど、ほんとは興味あるんだ。ゆうきをモデルにしてみるかな」
つばめは母親の部屋から整髪用品を持ってきて、ゆうきの髪の毛をいじり始めた。
「わぁー、驚き。意外と可愛いじゃん! うん、ゆうき、すごくきれいな顔してる。これで学校に行けば、もういじめられないよ。それどころか、男どもの視線が集まるかな」
ゆうきは、喜ぶどころか困ったような顔をしだした。
「あの〜、俺、あまり目立ちたくないんだけど」
つばめはキョトンとした。
「今、『俺』って言った?」
ゆうきは少しためらってから答えた。
「あ〜、うん。前居たところでは、みんなそう言うんだ」
「へ〜、おもしろいじゃん。相当な田舎なの? まぁ、いいや。でも、この辺で『俺』は止めたほうがいいと思うよ。また、いじめられないように。それで、これも貸してあげるから、明日は髪の毛を整えて来なよ」



