波打ち際にざざ、と水が寄ってくる。
まだ陽が高く、海面が光を反射してきらきらと輝いていた。
しばらくして、砂浜へと繋がる階段から2人降りてきた。
長身の男と小柄な青年である。
「うおー!海だ!」
「見りゃわかる」
「風、気持ちいいな。春って感じしてさ」
「……あーね」
男は海を指し、楽しそうな笑みを浮かべて、青年へ話しかけた。話し方から明朗快活な印象を受ける。
青年は男の話に淡泊な返事をした。少し刺々しさもあるが、男は全く気にする様子はなく、話を続けた。
青年の髪が風に揺れる。橙色のそれは、まるで太陽のようだ。2人を包む風はあたたかい。
水辺へ着くなり、男は得意げに語る。
「君は知っているか?海へ来たらまずやることがある」
「準備体操?」
「それは泳ぐときね。探索するときの話!今日は身を以てそれを教えよう」
「?」
「こうだ!」
「えっ」
男は唐突に靴を脱いだ。靴下は丸めてポケットに入れる。そうして足先を水へと付けた。
「うおあ!まだ冷たい!」
「そりゃそうだろ。海開きまで何ヶ月あると思って……」
「ちょっと貝殻探してくるわ!」
「おい馬鹿!話聞いてんのか!」
男はその後、口にした通り貝殻を探し始めた。対して、ため息をついた青年は、海を眺め始める。
青年から少し離れた場所で、きれいな貝殻を見つけたらしい。
男は「あったー!」と大きな声で、戦利品入手の報告をする。青年はそれを無視して、海を眺め続けた。
男はそれから、次から次へ砂浜を探し回った。やがて、大きな手のひらいっぱいに貝殻や何やら持って、男は青年に走り寄ってきた。子供のようにはしゃいでいる。
「ほーら、いっぱい落ちてたぞ!ガラス玉まであった!あとこれ……えーと、ほら、なんだっけ、あー名前出てこねえ……」
「シーグラス」
「それそれ!これ綺麗に洗ってさ、玄関にでも……」
「先生」
男をそう呼んだ青年の雰囲気が変わる。2人へ寄ってきていた波は、ざざ、と捌けていく。
青年は男に向き合った。
「せんせい、ぼくは──」
海だけが、その時の彼らを知っている。
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