君はSSS賞

 ——そわそわ。
 この胸の高鳴り、久しぶりすぎて落ち着かない……!

 夕方、またあのコンビニへ向かった。あまり期待しないでおこう。今朝の落胆、しんどかったもん。
 ドアが開くと、すぐにレジのほうを見た。……いない。

 もう一生会えないんじゃない?
 そんな極端な考えに行き着いた途端、甘いものが食べたくなってきた。家で甘いもの食べながら、アニメでも見よう。

 冷蔵スイーツコーナーをじっくり吟味していたとき。

「何買うんすか?」

 そう聞きながら、顔を覗き込んできたのは、あのお兄さん!

「うわ! びっくりした!」
「あはは! すみません。……昨日話したんですけど、覚えてます? 一番くじのときの」

 忘れるわけない。
 お兄さんのことを一日中考えてました。

「覚えて……ます……」

「あ〜、よかった! これで忘れられてたら、俺いきなり話しかけて……やばい店員っすよね」
 お兄さんはそう言って笑った。

 僕はあわあわして、何も答えられずにいた。

「ここ、前から来てました?」
「い、いえ……たまにです」
「そうなんすね! じゃあ、二日連続会えるのは珍しいってことっすね」
「そうですね……。あ、あの! お名前、聞いてもいいですか?」

 今日は逃げない! 勇気を振り絞った。
 お兄さんは一瞬、不思議そうな顔をしたが、すぐに口角をきゅっと上げた。

「松倉世那(まつくら せな)です。世那でいいっすよ」
「世那くん……。僕は、梅野律(うめの りつ)です。親以外には『りっちゃん』って呼ばれることが多いです」
「りっちゃん、いいね。俺もそう呼ぶ」

 ——『りっちゃん』
 家に帰ってからも、世那くんが僕を呼ぶ声が頭の中でリフレインする。呼ばれ慣れた自分のあだ名が、超スペシャルなものに感じられた。

 世那くん、今日もかっこよかったなぁ。
 次はいつ会えるかな。

 そんなことをぼんやり考えながら、コンビニで買った桜パフェを食べていた。
 この辺りの桜はまだ固い蕾(つぼみ)をつけているけど、僕の桜はもう満開です。
 こんな胸の高鳴りをずっとずっと待っていた。
 思わず、にやにやしてしまう。

 そんな僕の様子を見た姉の莉子(りこ)が、悪戯っぽい表情で話しかけてきた。
「なに〜? りっちゃん、いいことあったの?」
「莉子ちゃん〜、聞いてよ聞いてよ」

 莉子ちゃんは一つ年上で、幼い頃からずっと仲良し。何でも話せて、悩みごとなんかは親よりも先に莉子ちゃんに相談する。
 昨日と今日の世那くんとのことを全部話した。

「誰かに取られる前に、いくしかないね」
 莉子ちゃんは、親指と人差し指で顎を挟むポーズをしながら、そう言った。

「え〜、わかんないよ? もう誰かのかもしれないし……。かっこいいから、きっと周りが放っておかないよ」
「みんながそう思ってたとしたら?」

 ……なるほど。高嶺(たかね)の花ってことか。
 黙っていると、少し近寄りがたいイメージがあるもんね。

 でも、恋愛初期装備の僕には、この先どう戦えばいいのか分からなかった。