君はSSS賞

 案の定、俺の言葉に困惑した顔をしてあわあわしてるりっちゃん。
 可愛いな。今すぐ俺のものにしたくなる。

 俺に向けられる好意には、わりと早い段階から気づいていた。合格発表のあと、報告を兼ねて話があるって言われた時も、大体の予想はついていたし。
 
 だけど、いざ真っ直ぐな瞳で見つめられて、告白されそうになると嬉しかった。
 
 りっちゃんが合格したのが俺と同じ大学ってことも、内心かなり喜んでいた。……だってこれで、目が届くし。

 でも、今すぐ返事をするわけにはいかなかった。

 それから約一年間、俺がどれだけの理性と戦ってきたか、りっちゃんはきっと露ほども知らない。

 相手はまだ高校生で、俺には一年間の留学が決まっていた。手を出して変に縛るわけにはいかない。
 だけど、離れている間に目移りなんてされたら困る。

 だから、付き合う以外の方法でりっちゃんを繋ぎ止めておく必要があった。

 家に呼ぶのは絶対に昼間だけ。夕方には何がなんでも帰す。そう決めていたから、二人の距離を縮めるにも限界があった。

 離れている間も、俺のことを忘れてほしくなかった。だから、りっちゃんの住むこの小さな街に俺との思い出を残そうとした。
 近所のコンビニもスーパーも銭湯も、あのゲーセンも。

 まあ、ありがたいことに、ほとんど偶然が重なっただけ。でも、運も実力のうちでしょ?

 二人で取ったあのフィギュアを渡したのも、俺がいない部屋で、毎日俺のことを思い出してもらうため。

 留学中も、りっちゃんに俺を意識してほしかった。
 だから、イギリスで見つけたものを写真に撮って送った。美味しいものを食べたら教えて、綺麗な景色を見たら共有して。
 そうすれば、少しは俺のことを考えてくれるかなって。
 
 ……そこまでは正直、計算だった。
 
 でも、いつからだろう。
 気づいたら、何を見てもりっちゃんに教えたくなっていた。

 誰にも絶対に渡したくない、最高で特別な存在。

 まさに、奇跡みたいな『SSS賞』。


「な、なんで……ダメ、なんですか……? 僕、もうすぐ卒業だし、世那くんのこと……っ」

 涙目になりながら食い下がってくるりっちゃんを見て、胸の奥が締め付けられた。
 でも、その場の感情に流されて、今までの我慢を台無しにするわけにはいかなかった。

「高校生だからダメって言ったでしょ」
 
 指先でりっちゃんの唇をそっとなぞり、怖がらせないように少しだけ微笑む。

「高校生じゃなかったら……?」
「……こんなに容赦してない」
「どういう意味……っ?」
「内緒。……卒業するまでに、ちゃんと考えといて」

 ぽかんと固まるりっちゃんに、あと少しだけ待ってねと心の中で謝る。

 卒業式が終わったその瞬間に、俺の我慢のタガは完全に外れる予定だ。