君はSSS賞

 ——ぽかん。
 え……? 何が起こってる?

 世那くんは僕から買い物袋を受け取り、中の食材を冷蔵庫に入れ始めた。

「お! チョコモナカ! 食べたかった、ありがとうね」
 世那くんは僕の方を見て、満面の笑みでそう言った。

 世那くんの笑顔を見たら、緊張が解けた。
 昨日眠れなかったのが嘘みたい。

 鍋の準備をしながら、機内での話を聞いていた。
 映画を三本見たけど、三本目は途中で飽きて寝ちゃってたとか、機内食は絶対和食にしようと思ってたのに、前の列で和食がなくなっちゃって、結局洋食を食べたとか。だから、僕が選んだ鍋つゆを見て、『和風出汁、ナイス』と言ってくれた。

 留学中の話はビデオ通話でもよく聞いていた。それでも、こうして隣で何気ないやり取りをしていると、世那くんが帰ってきたんだなぁって実感する。

 僕たちの時間が、また動き出したような気がした。

 話していたらあっという間に鍋ができ、テーブルに横並びで座って鍋をつついた。
 ……タコパのときを思い出すなぁ。百個分作ったんだっけ。笑ったなぁ。

 これから伝えることから逃げるように、僕の頭には思い出たちがぼんやり浮かんでいた。

「てか、りっちゃん。俺に報告ある?」

 世那くんの言葉で、ハッと我に返る。
 ……ついに、始まってしまうんだ。

「報告……あります」

 世那くんは僕の方に身体を向けた。

「大学の第一志望……合格しました!」
「ん! すごいじゃん! おめでとう! ……大学どこかとか、聞いてもいい?」

 僕は、世那くんと同じ大学の文学部の哲学専攻に合格したことを伝えた。
 世那くんは目を丸くしていた。

「え……? 一緒じゃん」
「はい。春から、大学でも仲良くしてくれますか?」
「もちろんもちろん! えー、りっちゃんと大学でも会えんのめっちゃ嬉しいわ」

 その言葉を聞いてほっとした。
 僕はついに、気持ちを伝えることにした。

「僕、この一年で自分の学びたいことに向き合えたし、そのために頑張れました。……世那くんのおかげです。哲学の話、ここで言ってくれたの覚えてますか?」
 
「うん、覚えてるよ」
 
「世那くんがあのとき話してくれなかったら、就職するときのために無難な学部を志望したままでした。大袈裟かもしれないけど、世那くんのおかげで人生変わったと思ってます。もちろんいい方向に」

 世那くんは、優しい顔で僕の話を聞いてくれていた。

「それで、僕、いつのまにか世那くんのことが……」
「……待って」

 世那くんの人差し指が、僕の唇にそっと触れた。

「高校生だから、ダメだよ」
 

 えーーーーー?????