君はSSS賞

 ——ほかほか。
 報告と、あたためてきた言葉。

 世那くんは、それから約二週間後にイギリスへ旅立った。

 世那くんの留学を受け入れられたつもりだったけど、出発の数日前から急に実感が湧き、寂しさが込み上げてきた。
 お見送りに行きたかったけど学校があるし、泣いてしまうかもしれないから、飛行機に乗る前にメッセージを送るだけにした。

『世那くん、いってらっしゃい!
 僕も、僕の〈好き〉とちゃんと向き合ってみます。
 身体に気をつけて頑張ってください!』

 世那くんはイギリスにいる間、こまめにメッセージを送ってきてくれた。
 ビデオ通話で、有名な観光地を見せてくれたり、一緒にご飯を食べながら話したりすることもあった。
 お互いの勉強のことやクラスメイトの話など、特別な話じゃなかったけど、そんなやり取りが嬉しかった。離れているのに、世那くんが近くにいるような気がしたから。

 それに、あのコンビニやスーパー、銭湯の前を通るたびに、世那くんのことを思い出していた。近所だから、ほぼ毎日になる。一日たりとも世那くんのことを忘れなかった。ずっとずっと、好きなままだった。


 僕は志望校と学部を変えた。今まで重点的に勉強していた数学の優先順位を下げて、世界史と小論文の対策を本格化させた。慣れない小論文には苦戦したけど、考えること自体は嫌いじゃなかった。

 クラスメイトの萌ちゃんとは三年生になっても同じクラスで、よく放課後に一緒に勉強している。

「りっちゃん、数学得意だったのに、ここに来てまさか文学部にするとはね〜」
「自分でもびっくりしたんだよ。調べてるうちにね、なんか心がしゅーって吸い寄せられたみたいだったんだ」


 二月、運命の合格発表の日。

 一人で結果を見るのは怖くて、大学へ向かう前の莉子ちゃんに一緒に見てほしいと頼んだ。
 二人でスマホの前に正座した。

 マイページにログインし、合否案内をタップする。
 画面が切り替わるまでの数秒が、ものすごく長く感じた。

 ——合格

 赤い文字で『合格』の二文字が浮かび上がった瞬間、僕と莉子ちゃんは大声を上げた。

「きゃーーー! りっちゃんおめでとう!」
 莉子ちゃんの目には涙がたまっていた。

 本当に嬉しかった。
 早く世那くんに伝えたい。
 でも、絶対直接言うと決めていた。

 それに、言いたいことも一年間あたためてあるし。