君はSSS賞

 ——じんわり。
 世那くんといると、胸の奥があたたかくなる。

 世那くんはホットコーヒーを、僕はチーズケーキとカフェラテを注文した。不安になると、甘いものを口にしたくなるのが僕の癖だ。

「話って……?」
 普通に聞くつもりだったのに、声が震えていた。

「……俺、来月からイギリス行くんすよ」
「イギリス? 留学ってことですか? どのくらい?」
「そう、留学。一年弱かな。来年三月には帰ってくるんだけど……」

 大学を一年休学して、語学留学をするのだと教えてくれた。半年前から決まっていたらしい。

 仲良くなったばかりなのに、一年も離れ離れになるんだ……と思った。たぶん顔に出ちゃってたと思う。寂しいよ。

「……だから、りっちゃんと遊べるの、あとちょっとなんすよね」
 世那くんは困ったように笑った。

「もっと早く言わなきゃって思ってたんすけど……なんか、言い出せなくて」

 その言葉に、胸がきゅっとなった。

 きっと僕が寂しがるって分かってたんだろうな。そう思うと、今度は胸の奥がじんわりとあたたかくなった。

 いつもなら、寂しい、離れたくない、もう終わりだーって嘆いていたと思う。

 でも、世那くんが頑張ろうとしていることを、僕は応援したい。だって、僕は世那くんに応援してもらって、頑張れているから。

「教えてくれてありがとうございます。……僕、世那くんが帰ってくるまでに進路のこともそうだし、自分ともちゃんと向き合って、良い報告します! 絶対」

 僕がそう言うと、世那くんは驚いた顔をした。

「だから、世那くんも頑張ってください」
「ありがとう、りっちゃん。良い報告楽しみに待ってるね」

 そう言って、世那くんは笑顔に戻った。
 僕もつられて笑顔になって、いつもの二人の空気に戻った。

「なんでイギリスなんですか?」
「好きなサッカーチームの影響で」
「あー! ユニフォーム、飾ってましたもんね」
「そうっす。そこから文化にも興味持つようになって、実際行って肌で感じてみたいなーって」

 やっぱり、世那くんは行動派なんだな。かっこいい。
 僕も自分の『好き』に本気で向き合って、行動してみようと思った。

「素敵です。世那くんの考え方、すごく好きです」

 僕が真っ直ぐにそう伝えると、世那くんは照れたようにこめかみを押さえて、「そうかな……?」と言った。

「りっちゃん、これ受け取ってほしい」
 世那くんが手渡してきたのは、さっきクレーンゲームで取ったフィギュアだった。

「え……?」
「りっちゃんと仲良くなれたきっかけがこれだったし、二人で遊んだ思い出も詰まってるから……持っててほしい」

 僕は受け取ったフィギュアを見つめた。

 これを見るたびに、今日のことを思い出すんだろうな。
 世那くんと二人で笑って、喜んで、たくさん話したこと。
 ……離れていても、忘れないように。

 僕はそれをぎゅっと抱きしめた。ああ、なんて愛おしいんだろう。

「大事にします!」