「押さないでくださーい!」
「列の最後尾はこちらでーす!」
「二列ずつ順番に前へお進みくださーい!」
今日の会場『フラワーフェスタ記念公園』は、世界中の薔薇が寄り集まった公園だ。この公園の特色は、何と言っても人々の夢が詰まった『ブルーローズガーデン』と呼ばれる青い薔薇の品種が数多く揃った場所。
「これ、来場者やばいね。人数制限かかりそう」
「うん。ほら、チケット譲ってくださいって人が何人かいるよ」
「本当だ」
「譲れないけどね。あたしの大事なチケットちゃん」
「まあ、そうね……」
ゲートでチケットを提示すると、受付スタッフのお姉さんが半券を切り取ってくれる。
「あ、そういえば。関係者は特別に座席が用意されているみたいよ」
*
簡易なバリケードみたいな柵が、座席と立ち見席の境目に設置されている。
「もみくちゃ防止か。これであたしは安心して観られるってわけね」
後ろの観客スペースには申し訳ないけど。
私は荷物を座席の下に置く。
「あれ? 関係者って結構いるんだね。若葉、聞いてない?」
「さあ。出演メンバーの友達とかじゃないの?」
「ああ、なるほど」
そうこうしてるうちに、関係者席に何人か入ってきた。
「あら」
「あ」
「まぁ、若葉ちゃんじゃないの!」
ロゼさんだ。
「嬉しいわ~。アタシも隣座っていい?」
「どうぞ」
ロゼさんが私の右隣の席に腰掛ける。
「お邪魔しま~す……あら、そちらは例のお友達かしら?」
ロゼさんが梨歩の方に視線を移す。
「!!」
梨歩の表情が引き攣った。
「梨歩、この人はロゼさんって言ってね……」
私はすかさず梨歩にロゼさんを紹介した。
「わ、若葉っ……。何普通に会話してるの?」
戸惑う梨歩。
「何って、ロゼさんはエディさんのバイト先のカフェのマスターで――」
梨歩が私の説明を遮る。
「い、いくら何でも怪しすぎでしょう! こんな網タイツに、真っ赤なハイヒール履いたオッサンのどこが――」
「んまっ! オッサンですって!?」
「オッサンじゃなきゃ何だっていうのよ」
「むっきぃ~! アタシはまだ三十五よ。ロゼ姐様とお呼びっ!」
「はいはい、わかったよ。オッサン」
「ぐぅ……」
ロゼさんが下唇を噛みしめている。
「ちょっと、梨歩。挑発しないの。失礼でしょう」
「あ、バレた?」
「まったく……」
*



