「ただいまー」
「エイル、お腹空いたでしょ」
パタパタッ
「お帰りー、眞琴さん!」
「・・・」
その一言に、私の呼吸は一瞬止まった。
この部屋で「お帰り」と迎えてくれる存在。
帰ると声を掛けてくれる存在。
全ての色が変わった。
――いえ、色が付いた感覚だった。
「眞琴さん?」
「はっ!」
「・・・た・だ・い・ま」
ヤバい。
意識飛んでた……?
「これ貰ったんだ!」
「眞琴さん、一緒に食べよ」
パンの耳?
「もうお腹ペコペコだよ!」
食べないで待っててくれたの?
ガサガサッ
「ゆ、夕食だよ」
「エイルは特盛ね」
「わ~、美味しそう!」
「眞琴さん、だ~い好き」
「くっ!」
でも今は素直に嬉しい。
「エイルのパンの耳と一緒に食べよ」
「うんっ」
その日の夕食は、牛丼とパンの耳という不思議な取り合わせ。
でも、ここ十何年かで一番美味しい食事だった。
エイルの設定だと、私は明日を過ぎたら死ぬことになっている。
中二病って、こんなに筋書きがキッチリしてるんだ。
本当に死ぬなんて無いけど……。
でも、この暖かさが無くなることを思うと、死ぬことより怖くなっていた。


