彼は当然のように、夜になっても帰る気配もなくテレビを見ている。
「ねえ、あんた、帰らなくていいの?」
「家の人が心配してないの?」
「僕、エイル」
突然、私の言葉にむくれたように返してきた。
「僕は魂導天使」
「天へ帰る魂を導く天使だよ」
再びエイルは嬉しそうに話した。
「……。」
なるほど。
中二病をこじらせた少年か……。
綺麗な顔をして質が悪いわね。
そもそも何で私なんだ?
三日で死ぬ?
この前の会社の人間ドックでも何の異常も無かったのに。
ちょっと真実味の無い設定ね。
クンクンッ
エイルは少し部屋の匂いを嗅ぎながら口を開いた。
「この部屋、眞琴さんの良い匂いがいっぱいだね」
こういうところは少し苦手かもしれない。
赤い顔をしているのが自分でも分かる。
「でも、それ以外の人の匂いがしない」
「この部屋には誰も来ないの?」
その言葉に妙にイラッとした。
「それの何が悪いの!」
私は少し強めに言ってしまった。
「ううん」
エイルは少し瞳を伏せて目を逸らした。
私は今年で三十二。
年齢イコール恋人いない歴。
勿論、恋をしたことは何度もある。
でも、その度にフラれる……。
ぱっとしない女。
それが私。
エイルの言葉は、認識したくない事実を言い当てられたように聞こえた。
でも私は知らなかった。
エイルがずっと前から私を見ていたことに。


