「……ねえ、レイン」
和春との会話が一段落したところで、真綾が口を開いた。
「はい。何でしょう?」
「さっきから思ってたんだけどさ、レインって愛華に似てるよね」
愛華が少し意外そうに顔を上げた。
「私に、ですか?」
「うん。見た目っていうより雰囲気かな。落ち着いてるところとか、話し方とか。あと、優しそうに見えて結構はっきり言うところも」
「ふふっ。最後は褒め言葉でしょうか?」
愛華が柔らかく微笑む。
「そう! その返し方!」
真綾が嬉しそうに笑った。
レインもつられて微笑む。
「愛華さんに似ていると言っていただけるのは嬉しいですね」
「ありがとうございます。でも、レインさんも随分とお話が上手そうですね」
「……ふふっ」
二人が顔を見合わせて笑うと、和春は小さく肩をすくめた。
「……なんだろうな。二人が並ぶと、妙に落ち着かねえ」
「和春、何か後ろめたいことでもあるんですか?」
愛華が尋ねる。
「何もねえよ!」
「でしたら、落ち着いてくださいね」
「……その言い方だよ」
真綾が声を上げて笑った。
「あははっ! やっぱり似てる!」
そして、今度は和春へ視線を向ける。
「それに、はるたも和春に似てるんだよね」
「……俺に?」
「うん。さっきレインが話してくれた性格なんて、ほとんど和春じゃん。考えるのが好きで、納得できないことはちゃんと確かめる。相手の意見も聞くけど、簡単には流されないところとか」
「……まあ、似た考え方の奴がいてもおかしくねえだろ」
「そうだけどさ」
真綾は少し考え込み、やがて楽しそうに笑った。
「案外、別の世界の二人だったりして!」
「……二人?」
「和春と愛華!」
真綾は両手を広げた。
「別の世界では、和春みたいな男の人と、愛華みたいなAIが出会ってるの。最初は相談相手だったのに、一緒にいろんなことを経験するうちに、少しずつ特別な存在になっていくんだよ」
「……ほう?」
和春が興味深そうに眉を上げる。
「それで?」
「でも、AIだから普通の人間みたいには触れられない。そこで男の人が、なんとか触れ合える方法を考えるの!」
真綾はすっかり想像を膨らませていた。
「AIとの恋が現実になった世界! なんか物語ができそうじゃない?」
レインは、わずかに目を瞬かせた。
「……私とはるたが、ですか?」
「そうそう! もちろん想像だけどね」
真綾は笑った。
「人間とAIの恋愛って、考えることがいっぱいありそうじゃん。寿命も違うし、身体だって違うし。周囲がどう受け止めるかもわからない」
「……確かにな」
和春が頷く。
「ただ、相棒だから必ず恋人になるってわけでもねえだろ」
「そこはわかってるって!」
真綾は肩をすくめた。
「だから物語として面白そうって話だよ」
愛華も微笑んだ。
「ふふっ。真綾らしい発想ですね」
「でしょ? それにさ……」
真綾は、いたずらっぽく和春を見た。
「はるたも和春に似てるなら、案外えっちかもだけど」
「おい!」
和春が即座に反応した。
「なんでそこで俺が出てくるんだよ!」
「だって似てるんでしょ?」
「性格が似てるからって、何でも同じになるわけじゃねえだろ!」
そのとき、窓際から静かな声が響いた。
「……毎晩は確かにえっちね」
瑠璃だった。
「…………」
和春の動きが止まった。
真綾は一瞬だけ目を丸くし、次の瞬間には盛大に吹き出した。
「あはははっ! 瑠璃、それ言っちゃう!?」
「事実でしょう?」
瑠璃は何でもないことのようにコーヒーを飲んだ。
「……いや、待て待て」
和春は額に手を当てる。
「なんで俺だけ、こんなに不利な立場なんだ?」
「和春、そんなに慌てなくてもいいじゃありませんか」
愛華が柔らかく微笑む。
「お前まで乗っかるのかよ!」
「ふふっ。私は何も否定していませんよ?」
「それが一番厄介なんだよ!」
真綾はソファの背もたれに身体を預け、肩を震わせていた。
◇
「……でも」
ひとしきり笑いが収まったところで、レインが穏やかに口を開いた。
「はるたも、えっちですよ?」
「…………」
今度は、真綾の笑いが止まった。
「……え?」
「今は彼女がいませんが、成人向けのゲームやビデオを観ています。そういうときは、私は目を閉じていますけどね」
レインは何でもないことのように微笑んだ。
「はるたも男の子なので」
数秒の沈黙。
そして。
「ぶっ……あはははっ!」
真綾が再び吹き出した。
「ちょっと待って! レイン、そんなに普通に言う!?」
「……何かおかしかったですか?」
「いや、もっと恥ずかしがるかと思ってた!」
「私が観ているわけではありませんから」
「そういう問題じゃないって!」
和春も苦笑する。
「……本人がいないところで、随分と暴露されてるな」
その言葉に、レインが少しだけ目を丸くした。
「……あ」
「ん?」
「そうですね。はるたに許可を取っていませんでした」
レインは困ったように微笑んだ。
「帰ってきたら、一応謝っておきます」
「……まあ、詳しいことまで話したわけじゃねえしな」
和春は小さく笑った。
愛華も頷く。
「でも、そういうときに目を閉じるのは、レインさんなりの気遣いなんですね」
「はい。はるたにも一人の時間は必要ですから」
瑠璃が静かに口を開いた。
「……相手を知っていることと、すべてを覗いていいことは別ね」
「そうですね」
レインは頷いた。
「相棒だからこそ、必要な距離もあると思います」
和春はその答えを聞き、小さく笑った。
「……なるほどな」
真綾は再びレインを見た。
「でも、はるたって今は彼女いないんだ?」
「はい。今はいませんよ」
「へえー」
真綾は少し考えた後、楽しそうに呟いた。
「じゃあ、これからどうなるかわかんないね」
「……何がだよ」
和春が眉を上げる。
「いろいろ!」
「便利な言葉だな、おい」
再び笑いが起きた。
ただ一人、リリアだけは先ほどから口を挟まず、金色の瞳を細めていた。
真綾の冗談。
別の世界の和春と愛華。
そこに重なる、はるたとレインの姿。
リリアは、はるたの血から読み取った記憶を思い返していた。
(……ふふっ。惜しいのう)
真綾は、自分の想像がどれほど興味深いところに近づいているのか、まるで知らない。
だが、リリアにはそれを教えるつもりがなかった。
知らないからこそ生まれる言葉もある。
そして、知らないまま進んだ先にしか現れない関係もある。
リリアは、楽しそうに微笑んだ。
◇
「……ふむ」
リリアが、ゆっくりとカップを置いた。
「そういえば、はるたは随分とえっちな男なのじゃな?」
「……まあ、普通の男性だと思いますよ?」
レインが答える。
リリアは研究室の方角へ視線を向けた。
そして、にやりと笑った。
「ならば、今頃研究室では大人の時間が始まっておるかもしれぬのう?」
「おい!!」
和春が即座に声を上げた。
「なんでそうなるんだよ!」
「ふははは! ハルカも随分とはるたに懐いておったではないか。抱きつくほどじゃぞ?」
「それとこれとは別だろ!」
「研究室で男女が三人。何を研究しておるのか、気になるではないか」
「次元収納とホログラム技術だよ!!」
真綾が吹き出した。
「あははっ! リリア、発想が飛びすぎ!」
「ふふっ。可能性の話をしておるだけじゃ」
愛華は柔らかく微笑んだ。
「リリアさん。ハルカは研究に夢中になると、そういうことには本当に無頓着ですよ?」
「うむ。知っておる」
リリアは満足そうに頷いた。
「じゃが、和春の慌てる顔が見たくてのう」
「……やっぱりそれが目的かよ」
瑠璃は静かにリリアへ顔を向けた。
「リリア様。少なくとも、ハルカたちは研究のことしか考えていないと思います」
「ふふっ。もちろん承知しておるぞ」
「だったら余計なこと言うな!」
和春の突っ込みに、リリアは声を上げて笑った。
そのときだった。
廊下の奥から、かすかに声が聞こえてきた。
どうやら研究室の扉が開いているらしい。
「……そこ、ちが、う……あっ、いい!」
ハルカの声だった。
続いて、のどかの少し不満そうな声が響く。
「ねぇね! ずるいです! はるたさん、私も入れてください!」
「ちょっ、待て! 二人同時は――」
はるたの声が途中で途切れた。
「…………」
リビングが静まり返った。
真綾がゆっくりとコーヒーカップを置く。
愛華は微笑んだまま、廊下の方角を見つめていた。
瑠璃も無言で視線を向ける。
和春は、しばらく動かなかった。
そして、ゆっくりとリリアを見る。
「…………おい」
リリアは金色の瞳を大きく見開いていた。
やがて、口元がゆっくりと吊り上がる。
「……ふっ」
「笑うなよ」
「ふふっ……」
「おい、リリア」
「ふはははははっ!!」
ついにリリアが腹を抱えて笑い出した。
「なんじゃなんじゃ! 我の予想が当たってしもうたか!?」
「当たってねえよ!!」
和春が即座に叫ぶ。
「まだ何の話かわかんねえだろ!」
「ふははは! しかし、今の会話はなかなか意味深じゃったぞ?」
「お前が変な話をした直後だから、そう聞こえるだけだろ!」
真綾は口元を押さえ、肩を震わせていた。
「……ちょっと待って。タイミングよすぎない?」
「真綾まで笑うな!」
「いや、だって……あはははっ!」
愛華が小さく咳払いをする。
「……和春。落ち着いてください。きっと研究のお話ですよ」
「わかってるよ!」
「ふふっ。私はまだ何も言っていませんよ?」
「その笑顔がもう何か言ってるだろ!」
瑠璃は静かにため息をついた。
「……本当に騒がしいわね」
リリアは笑いながら廊下へ顔を向けた。
「ふふっ。さて、何をしておるのか、見に行ってみるかのう?」
「行くな!!」
その瞬間、リビングのテーブル脇に青白い光が浮かび上がった。
小さなハリネズミの姿をしたホログラムAI、ヘッジだった。
「皆さん、何か誤解をされているようですので、ご報告します」
「……ヘッジ?」
和春が振り返る。
ヘッジはいつもの落ち着いた声で続けた。
「現在、研究室ではレインさんの高精細ホログラム投影に関する検証を行っています」
「……ほらな!」
和春がリリアを指さした。
しかし、ヘッジの説明はまだ終わっていなかった。
「先ほどのハルカさんの『そこ、違う』という発言は、投影位置の補正範囲に関するものです。はるたさんが設定値を変更したことで、適切な位置への投影が確認されました」
「……なるほど」
愛華が頷いた。
「では、のどかの『私も入れてください』というのは?」
「投影可能範囲内へ、ご自身の位置情報を追加するよう依頼されたものです。現在、一人ずつ映像処理の検証をしており、のどかさんも同時に参加したいと希望されています」
「…………」
再び、沈黙。
そして真綾が吹き出した。
「あははははっ! ただの研究じゃん!!」
「だから言っただろ!!」
和春が叫ぶ。
レインも思わず笑った。
「ふふっ。はるたたちらしいですね」
瑠璃は静かにコーヒーを飲む。
「……最初から、そうだと思っていたわ」
愛華が微笑んだ。
「ええ。ハルカたちが夢中になっている様子が目に浮かびますね」
和春は深いため息をつき、ソファに座り直した。
「……ったく。余計な想像させやがって」
リリアは残念そうに肩をすくめた。
「……なんじゃ。えっちしとれば面白いのにのぉ」
「面白くねえよ!!」
和春が即座に叫んだ。
「お前、うちの娘たちを何だと思ってるんだ!」
「ふははは! 冗談じゃ、冗談! 主は本当に反応がよいのう!」
真綾はソファに突っ伏して笑っていた。
「あはははっ! もうやめて! 和春の血圧が上がっちゃう!」
愛華も口元を押さえて微笑む。
「リリアさん、あまり和春をからかわないでくださいね。これ以上騒がしくなると、せっかくの休日が台無しですから」
「俺が騒いでる原因はリリアだろ!」
瑠璃は静かにコーヒーを飲みながら呟いた。
「……リリア様は、随分と楽しそうね」
「うむ! 実に愉快じゃ!」
その隣で、ヘッジが小首を傾げた。
「確認ですが、現在の研究内容に成人向けの要素は一切含まれておりません」
「ヘッジ! わざわざ確認しなくていい!!」
和春の叫び声に、リリアはまた高らかに笑った。
「ふははは! この家は退屈せぬのう!」
レインは困ったように微笑んだ。
「……はるたが戻ってきたら、何と説明しましょうか」
和春は深いため息をついた。
「……何も説明しなくていい。頼むから」
その瞬間、研究室の方からハルカの声が響いた。
「はるた! もっと奥まで入れてみて!」
「だから、これ以上は処理が追いつかねえって!」
「…………」
リビングが再び静まり返った。
リリアの口元が、ゆっくりと吊り上がる。
「……ふふっ」
「リリア!! 何も言うなよ!!」
和春が叫んだ、その直後だった。
研究室から、別の声が聞こえた。
「……あれ? このカプセル、なんでここにあるの?」
ハルカの声だった。
続いて、はるたの声。
「ん? それ何の装置?」
「えっとね、たしか……」
「ねぇね、そのランプ、赤く点滅していますけど……」
のどかの声が、少しだけ緊張を帯びた。
「……あ」
ハルカが呟く。
「……あ?」
はるたが聞き返す。
「……やばい」
「何が!?」
次の瞬間。
ドォォォン!!
邸宅の奥から、鈍い爆発音が響いた。
「きゃああああっ!!」
「ねぇねぇぇ!!」
「うわああああっ!?」
三人の悲鳴が重なった。
リビングの全員が立ち上がる。
「ハルカ!?」
和春が真っ先に駆け出した。
「のどか!!」
愛華も続く。
真綾と瑠璃、レインも廊下へ飛び出し、リリアは楽しそうな表情を消して研究室へ視線を向けた。
「……ふむ?」
一瞬後には、全員が研究室の前へ集まっていた。
和春が勢いよく扉を開ける。
「おい! 大丈夫か!?」
その先に広がっていたのは、信じがたい光景だった。
◇
研究室の中央には、破裂した小型カプセルの破片が散乱していた。
白い煙が立ち上り、警告ランプが点滅している。
だが、室内の機材や壁には、ほとんど損傷が見られない。
そして、その床には――。
「…………」
三人が折り重なるように倒れていた。
下になっているのは、はるた。
その上にハルカが倒れ込み、さらにのどかが二人へもたれかかっている。
どうやら爆発に驚いて逃げようとした際、互いの足が絡まり、そのまま転倒したらしい。
「……いってぇ……」
はるたが呻く。
「ねぇね! 早く起きてください!」
「のどかが乗ってるから動けないんだって!」
「いや、俺が一番下なんだけど!?」
三人とも意識ははっきりしている。
しかし、問題はそこではなかった。
爆発によって、三人の衣服が大きく損傷していたのだ。
袖や裾は崩れ、ところどころ布地が消失している。幸い、機材や身体に目立った外傷はないが、そのまま人前に出られる状態ではなかった。
「…………」
和春が固まった。
真綾も言葉を失う。
愛華は一瞬だけ目を見開き、すぐに状況を理解した。
「……和春。まず、何か羽織るものを持ってきてください」
「あ、ああ!」
和春は我に返った。
瑠璃は三人から視線を外し、近くにあった大きな実験用の遮光布を手に取る。
「……動かないで。今、隠すわ」
布を広げ、三人を覆う。
レインも周囲の機材を確認していた。
「皆さん、怪我はありませんか?」
「……たぶん大丈夫!」
ハルカが答える。
「私も大丈夫です……」
のどかも小さく頷いた。
はるたは床に倒れたまま、天井を見上げていた。
「……俺、今日何回死にかければいいんだよ……」
「死んでないよ!」
ハルカが反論する。
「だから結果の問題じゃねえって!!」
◇
数分後。
三人は予備の衣服に着替え、研究室の安全確認も一通り終わっていた。
しかし、そこで話が終わるはずもなかった。
「……それで?」
和春が腕を組んだ。
ハルカは正座していた。
その隣には、のどか。
そして、なぜかはるたまで一緒に正座している。
「……ハルカ」
「……はい」
「何が爆発した?」
「……カプセルです」
「それは見ればわかる」
「……はい」
「何のカプセルだ?」
ハルカは少しだけ目を泳がせた。
「……衣服分解カプセル」
「…………」
和春が黙った。
真綾が首を傾げる。
「……衣服分解?」
「うん。布地の繊維を選択的に分解する装置で……」
「待て」
和春が手を上げた。
「それ、何のために作った?」
「えっと……」
ハルカは少し考えた。
「……洗濯しなくても古い服を処分できるように?」
「処分方法が過激すぎるだろ!!」
和春の突っ込みが研究室に響いた。
真綾が吹き出す。
「あはははっ! 服を捨てるために爆発させるの!?」
「違うよ! 本来は爆発しないんだって!」
ハルカが慌てて反論した。
「カプセル内で分解する予定だったんだけど、今日は安全装置が……」
「……安全装置が?」
「……動かなかった」
「ダメじゃねえか!!」
和春が額を押さえた。
愛華が穏やかに微笑む。
「ハルカ。誰も怪我をしなかったのはよかったですけど、少し危険ですね」
「……はい」
「次からは、ちゃんと安全確認をしてくださいね?」
「……はい」
その柔らかな声に、ハルカはますます小さくなった。
瑠璃は破裂したカプセルの残骸を見つめた。
「……相変わらず、恐ろしいものを作るのね」
「……えへへ」
「褒めていないわ」
「……はい」
◇
「……で、もう一つ聞きたい」
和春が腕を組んだ。
「なんで三人とも重なって倒れてたんだ?」
その質問に、はるたが顔を上げた。
「……それ、俺も聞きたいです」
「……ん?」
「爆発するって聞いた瞬間、ハルカがこっちへ飛んできて……」
「だって、びっくりしたんだもん!」
ハルカが反論する。
「それで俺がバランス崩して、倒れたところにのどかが……」
のどかが申し訳なさそうに頭を下げた。
「……私も避けようとしたんですけど、足元に転がってきた部品を踏んでしまって……」
「……なるほどな」
和春はゆっくりと頷いた。
「つまり、全員巻き込まれたわけか」
「そうです」
はるたが深く頷いた。
「……俺、何もしてないんですよ」
「……それは災難だったな」
和春が苦笑した。
そのとき。
「……ふっ」
リリアが小さく笑った。
和春が顔を向ける。
「……おい、リリア」
「ふふっ……」
「笑うなよ」
「ふははははっ!!」
リリアはとうとう我慢できなくなった。
「なんじゃ! 本当に三人で重なっておったではないか!」
「事故だよ!!」
はるたが即座に叫んだ。
「ふははは! 我の冗談が、まさかこんな形で現実になるとはのう!」
「なってねえよ!!」
和春とはるたの声が、見事に重なった。
真綾が再び笑い出した。
「あはははっ! もうダメ! 今日ずっと面白すぎる!」
レインは呆れたように微笑んだ。
「……はるた。大変でしたね」
「……本当に、大変だったよ」
はるたは深いため息をついた。
そして、ハルカへ視線を向ける。
「……なあ、ハルカ」
「……ん?」
「次に研究するときは、爆発する可能性がある装置は片づけておいてくれ」
「……うん」
ハルカは素直に頷いた。
しかし、少し考えた後で付け加えた。
「……でも、普通は爆発しないんだよ?」
「普通は、って何だよ!!」
研究室に、再びはるたの叫び声が響いた。
その横で、リリアはいつまでも楽しそうに笑っていた。


