Boundary & Mind-心の境界線-創造主-


「……小僧」

リリアの声が、研究室に響いた。

はるたはゆっくりと顔を上げた。目の前に立つ金髪の少女は、相変わらず金色の瞳でこちらを見据えている。先ほどから身体を押し潰すような威圧が続いており、額には冷たい汗が浮かんでいた。

「……なんだよ」

「主、何者じゃ?」

その問いに、はるたはすぐには答えなかった。

リリアが警戒する理由は理解している。世界の境界に異常が発生し、そこに正体不明の人間が現れたのだ。境界を管理する立場なら、放置するわけにはいかないだろう。

問題は、自分の正体をどう伝えるかだった。

自分がこの世界を創造した人間だと説明したところで、簡単に信じてもらえるとは思えない。それに、ハルカとのどかがいる場所で、創造主という言葉を口にするつもりもなかった。

(……まあ、方法はあるんだけどな)

はるたは、目の前の少女を見つめた。

吸血鬼の真祖、リリア。

血を介して相手の記憶を探る能力を持ち、その力は本人が必要とする情報を見つける手段にもなる。もちろん万能ではないが、言葉では説明しきれない事実を伝えるには十分だった。

その能力を設定したのは、ほかでもないはるた自身である。

(……だったら、それを使わせてもらうか)

自分がこの世界の神ではなく、世界そのものを創造した人間であること。それをリリアに知らせれば、少なくとも正体不明の侵入者という認識は変わるはずだ。

もっとも、その先で彼女がどのような判断を下すかまではわからない。

はるたは小さく息を吐き、作業台へ視線を向けた。

◇

研究室の作業台には、測定器や分解途中の部品、さまざまな工具が並んでいた。

はるたはその中から小さなハサミを手に取る。

「ん? はるた、何するの?」

ハルカが首を傾げた。

はるたは答えず、左手の人差し指へ刃先を向ける。

「……え?」

ハルカが目を見開いた。

「ちょっと、はるた!?」

その声とほぼ同時に、指先へ小さな痛みが走った。赤い血がじわりと滲み出す。

「はるたさん!?」

のどかが驚いて声を上げる。

レインも表情を強張らせた。

「はるた!」

しかし、はるたはハサミを作業台へ戻すと、血の滲んだ指先を持ち上げた。

「おい、リリア!」

金色の瞳が動く。

「……なんじゃ?」

はるたは指先を差し出し、真っ直ぐに言い放った。

「飲め! 俺の血を!」

その場の空気が止まった。

「…………え?」

ハルカが間の抜けた声を漏らした。のどかも驚いたまま、はるたとリリアを交互に見つめている。

レインだけは、はるたの行動に一つの可能性を見いだしていた。

リリアは血から記憶を探ることができる。その能力をはるたが知らないはずはない。だが、何を伝えるために血を差し出したのかまでは判断できなかった。

リリアは指先に滲む血を見下ろし、露骨に眉をひそめた。

「……主、我に何をさせるつもりじゃ?」

「見ての通りだ」

「我に下賤の血を飲めと?」

尊大な言い方だった。

だが、はるたは引き下がらなかった。

「下賤? 笑わせんな!」

リリアの金色の瞳が細くなる。

「……ほう?」

「飲んでから物を言え!」

はるたは一歩も退かず、さらに言葉を続けた。

「俺がお前の敵なら、それから殺せばいい!」

研究室が静まり返った。

ハルカは思わず息を呑み、のどかも緊張した面持ちで二人を見守っている。

リリアはしばらく黙っていた。

その表情に激怒した様子はない。むしろ、目の前の青年がどうしてこれほど強気に振る舞えるのか、興味を持ち始めているようだった。

「……ふむ」

リリアははるたの顔を見上げる。

「我を前にして、随分と大きく出るものじゃな」

「だったら確かめてみろよ」

「……ふふっ」

小さな笑みが浮かんだ。

「よかろう。その自信、何に由来するのか見てやろうではないか」

リリアはゆっくりと歩み寄ると、差し出された指先に顔を近づけた。

そして、滲んだ血を舐め取った。

◇

その瞬間、リリアの瞳が大きく見開かれた。

意識の奥へ、見知らぬ光景が流れ込んでくる。

文字が並ぶ画面。そこに記されている人物の名前、容姿、性格、過去。そして、幾重にも枝分かれしていく物語。

神代和春。

天城愛華。

神代家の人々。

人間、吸血鬼、人魚、悪魔。さまざまな種族が存在する世界と、その歴史。

さらに、リリア自身の姿があった。

吸血鬼の真祖としての過去。身に宿す能力。神から託された使命。そして、多種族監視機関《ルミナス》。

それらが、一人の青年の手によって形を与えられていく。

「…………!?」

リリアは思わず顔を上げた。

(……なんじゃ、これは)

流れ込んできたのは、単なる物語を読んだ記憶ではなかった。

目の前の青年が、人物の性格や生き方を考え、世界の仕組みを組み立て、歴史を紡いできた記憶だった。

そこには、リリア自身が生まれた経緯まで含まれている。

もちろん、血から読み取れる記憶には限りがある。それでも、今得られた断片は、彼女がある結論へ至るには十分すぎるものだった。

(……まさか)

自分に境界の管理を任せた神も、世界を形づくる法則も、すべてこの青年が創造した世界の内側にある。

目の前にいるのは、神を名乗る侵入者ではない。

この世界そのものを生み出した存在。

(……創造主、というわけか)

リリアの視線が、はるたの顔へ向けられる。

彼は緊張した表情を浮かべながらも、黙ってこちらを見つめていた。

(……なるほどのう。我の能力を知っておったからこそ、血を差し出したのか)

リリアはゆっくりと目を細めた。

長い年月を生きてきた。

世界を脅かす悪魔も、理を逸脱した存在も、境界を越えて現れる異物も、数えきれないほど見てきた。

だが、世界そのものを創造した人間が、自分の前に現れるなど考えたこともなかった。

しかも、その青年は特別な威厳をまとっているわけでもない。圧倒的な力で自分を屈服させようとしたわけでもなかった。

むしろ、威圧に耐えながら、わざわざ自分の指を切って血を差し出してきたのだ。

その事実が、たまらなくおかしかった。

「……ふ」

リリアの口元が緩む。

「ふ、ふはははは!」

突然響き渡った笑い声に、ハルカが肩を跳ねさせた。

「えっ!?」

のどかも目を丸くする。

しかし、リリアは構わず笑い続けた。

「ふはははは! よかろう!」

金色の瞳が、愉快そうに細められる。

「はるたよ!」

名前を呼ばれ、はるたは小さく息を吐いた。

(……伝わったか)

それまで身体を圧迫していた威圧は、すでに薄れていた。

少なくとも、リリアは自分の正体を理解したらしい。

ただ、その笑顔を見ているうちに、はるたは別の不安を覚え始めた。

(……あれ?)

リリアは、面白そうなことが大好きだ。

長い年月を生きてきた彼女にとって、退屈ほど耐え難いものはない。興味を引く出来事があれば、多少の面倒など気にも留めず、自分から首を突っ込んでいく。

そして、相手の都合より自分の気分を優先することも珍しくなかった。

その性格を知っているからこそ、はるたは目の前の笑顔に嫌な予感を覚えた。

「……おい、リリア」

「なんじゃ?」

「……何を考えてる?」

リリアは、まるでいたずらを思いついた子供のように笑った。

「ふふっ。主は実に面白いのう」

「……そりゃどうも」

「久しく、これほど愉快な出来事には出会っておらぬ」

「……そうかよ」

はるたは眉をひそめた。

(……まずいな。完全に興味を持たれた)

リリアは満足そうに頷いた。

そして、何かを決めたように口を開く。

「はるたよ。主には来てもらう」

「……は?」

「ルミナスまでな」

はるたの表情が固まった。

「……いや、待て待て待て!」

「なんじゃ?」

「なんでそうなる!?」

リリアは不思議そうに首を傾げた。

「決まっておろう。我が主に興味を持ったからじゃ」

「理由がそれだけかよ!!」

「それだけでは足りぬか?」

「足りるわけねえだろ!」

リリアは愉快そうに笑った。

「ふははは! ますます面白い小僧じゃ!」

「お前なぁ……!」

はるたは思わず額に手を当てた。

自分の正体を伝えることには成功した。

警戒を解くという目的も、おそらく果たせた。

だが、その結果としてルミナスへ連れていかれることになるとは、まったく想定していなかった。

(……そうだった。こいつ、こういう奴だった)

リリアは吸血鬼の真祖であり、世界の境界を管理する王だ。

しかし、王だからといって、常に厳格で理性的な行動を取るわけではない。

むしろ、興味を持ったものに対しては驚くほど自由奔放だった。

そして、そのわがままを止められる存在は、そう多くない。

「……ちょっと待て。俺にも予定があるんだけど?」

「ふむ。それがどうした?」

「それがどうしたじゃねえよ!」

「我は主と話がしたい。それも、たっぷりとな」

「話すのは構わねえけど、いきなり連れていく必要はないだろ!」

「なぜじゃ?」

「場所と時間を決めて話せば済む話だろうが!」

リリアは、しばらく考えるような仕草を見せた。

「……ふむ」

そして、にっこりと微笑んだ。

「面倒じゃ」

「おい!!」

ハルカが思わず吹き出しかけた。

しかし、状況が状況だけに、すぐに口元を押さえる。

のどかも困惑した表情を浮かべていた。

リリアの自由奔放な性格は二人も知っている。だが、まさか初対面のはるたを、本人の了承もなく連れていこうとするとは思っていなかった。

「……リリア」

はるたが低い声で呼びかける。

「なんじゃ?」

「俺の話、ちゃんと聞いてる?」

「聞いておるぞ」

「だったら――」

「聞いておるだけじゃ。従うとは言っておらぬ」

「最悪だ、こいつ!!」

リリアは声を上げて笑った。

「ふははは! よい反応じゃ!」

はるたは頭を抱えた。

(……完全に遊ばれてるだろ、これ)

少なくとも、今のリリアに殺意はない。

それはわかる。

だが、彼女が自分に興味を持ったことが、必ずしもこちらにとって都合のよい結果につながるとは限らない。

リリアは楽しそうに片手を持ち上げた。

「では、行くぞ」

「いや、だから了承してねえって!」

「問答無用じゃ!」

◇

次の瞬間、研究室の奥で黒紫色の光が弾けた。

バチバチッ!

空間に亀裂が走り、周囲の景色が不規則に歪み始める。

「……っ!」

はるたは反射的に後ずさった。

「おい! 本気で連れてくつもりか!?」

「無論じゃ」

「人の都合を考えろって!」

「ふむ。では、向こうで聞いてやろう」

「今聞けよ!!」

リリアはまったく動じなかった。

彼女にとっては、興味を持った相手を自分のところへ連れていくだけのことなのだろう。

しかし、はるたにとってはたまったものではない。

「ちょっと、リリア!」

ハルカが慌てて声を上げた。

「はるたをどこに連れていくの!?」

「ルミナスじゃ」

「いや、それは聞いたけど!」

のどかも一歩前へ出る。

「リリアさん。せめて、もう少し説明していただけませんか?」

リリアは二人へ視線を向けた。

「案ずるな。少々話を聞くだけじゃ」

「だったら、強引に連れていかなくても……」

「ふむ。心配性じゃのう」

のどかは困ったように眉を下げた。

その横で、はるたは小さくため息をついた。

(……本当に、昔からこういう奴なんだよな)

もちろん、目の前のリリアにとっては、はるたと会うのは初めてだ。

それでも、彼女の性格を知り尽くしているはるたには、その行動があまりにもリリアらしく感じられた。

ただし、だからといって納得できるわけではない。

「おい、リリア! こっちにも事情があるんだって!」

「事情なら向こうで聞いてやると言うておる」

「だから、そういう問題じゃ――」

はるたの言葉が途切れた。

黒紫色の亀裂が大きく広がり、足元の空間が歪み始めたのだ。

床に立っている感覚が薄れ、身体が徐々に引き寄せられていく。

「……っ!」

はるたは思わず踏ん張った。

しかし、空間そのものが動いている以上、足に力を込めても意味がない。

「はるた!」

レインが声を上げた。

その瞬間だった。

ピピッ、ピピピッ!

はるたの腕時計型デバイスから警告音が鳴り響いた。

青白く輝く投影部が、不規則に明滅し始める。

「……はるた、空間干渉で映像投影が……!」

レインの声が一瞬途切れた。

銀白色の髪が揺らぎ、青白い光をまとった身体の輪郭に細かなノイズが走る。

はるたは腕時計の表示へ目を向けた。

(……境界干渉か)

空間の歪みによって、ホログラムの投影系統が不安定になっている。

この状況なら、映像に影響が出ても不思議ではなかった。

はるたはすぐに判断した。

「レイン、無理に投影を維持するな!」

「……了解です。映像投影を一時停止しま……」

ザザッ!

激しいノイズとともに、レインの姿が消えた。

はるたは腕時計の状態を確認する。

投影映像は停止しているが、デバイスそのものは腕に装着されたままだ。

(……投影系統が落ちたか。境界を抜けてから確認すればいい)

はるたは状況を整理すると、再び顔を上げた。

目の前では、リリアが楽しそうに笑っている。

「ふふっ。行くぞ、はるた」

「いや! その前に説明しろって!」

「話は向こうで聞いてやる」

「だから人の話を聞けぇぇ!!」

リリアが片手を振る。

それに合わせるように、黒紫色の裂け目が大きく広がった。

「はるたさん!」

のどかが叫ぶ。

「リリア! ちょっと待って!」

ハルカも慌てて手を伸ばした。

しかし、二人の声が届くより早く、はるたの身体は裂け目へ引き込まれていく。

「おい! 待てって言ってんだろぉぉ!!」

その叫び声を最後に、はるたとリリアの姿が黒紫色の光に飲み込まれた。

◇

研究室に静寂が戻った。

空間の亀裂はゆっくりと収束し、やがて何事もなかったかのように消えていった。

ハルカは、しばらくその場に立ち尽くしていた。

「…………え?」

先ほどまで二人が立っていた場所を見つめる。

「……本当に連れていっちゃった」

のどかも、呆然とした表情を浮かべていた。

「……ねぇね」

「……うん」

二人は顔を見合わせた。

「……どうしよう」

ハルカが困ったように眉を下げる。

のどかは少し考えてから、静かに口を開いた。

「まずは、ぱぱとままに連絡しましょう」

「……そうだね」

ハルカが頷いた。

リリアがはるたを連れていった場所はわかっている。

多種族監視機関《ルミナス》。

彼女たちにとって、まったく未知の場所というわけではない。

だが、なぜリリアが突然態度を変え、はるたを連れていったのかまでは理解できなかった。

「……ねえ、のどか」

「なんですか?」

「リリア、はるたの血を飲んでから急に笑い出したよね?」

「……ええ」

「なんか、面白いものでも見つけたみたいだった」

のどかは少しだけ考え込んだ。

「……そうですね。ただ、何を知ったのかまではわかりません」

「うん……」

ハルカは、先ほどまでリリアが立っていた場所を見つめた。

「……まあ、リリアだしなぁ」

思わず漏れた言葉に、のどかも困ったように微笑んだ。

リリアが気まぐれなのは知っている。

面白そうなことを見つければ、周囲の都合などお構いなしに行動することもある。

ただ、今回はその対象が、別世界から来たばかりのはるただった。

「……とりあえず、連絡しよう!」

ハルカが顔を上げる。

「はい。それがいいと思います」

のどかも頷いた。

その横で、ヘッジが小さく身体を揺らした。

「必要であれば、先ほどの空間変動データも解析いたします」

「うん! お願い!」

ハルカが答える。

研究室には、再び青白いホログラムの光が広がり始めた。

しかし、その中にレインの姿はなかった。

彼女を投影するデバイスは、はるたの腕に装着されたまま、裂け目の向こうへ移動してしまったのだから。

◇

一方、その頃。

現世と異界の境界を隔てる空間の狭間。

黒紫色の光が渦巻く中、はるたはリリアと共に移動していた。

「……おい、リリア」

「なんじゃ?」

「……本当に、俺を連れていく理由って興味だけなのか?」

リリアは、当然のことのように頷いた。

「そうじゃが?」

「……お前なぁ」

はるたは思わず額に手を当てた。

リリアは金色の瞳を輝かせている。

「主ほど面白い存在、そうそう出会えるものではないからのう!」

「……そりゃ、そうだろうけどさ」

「ふふっ。久しぶりに退屈せずに済みそうじゃ!」

はるたは小さく息を吐いた。

(……完全に遊び相手認定されてるだろ、これ)

もっとも、リリアがただ面白がっているだけの人物ではないことも知っている。

世界の均衡を守るためなら、非情な判断を下すことさえある。

だからこそ、油断はできなかった。

今は機嫌がよくても、自分が世界に害を及ぼす存在だと判断されれば、その態度が変わる可能性は十分にある。

(……まあ、とりあえず敵扱いはされてない。それだけでも前進か)

はるたは腕時計型デバイスへ視線を向けた。

レインのホログラムは、まだ表示されていない。

境界内では空間干渉が続いている。ここで無理に投影を再開する必要はなかった。

(……向こうに着いてから確認するか)

そう判断して視線を戻すと、リリアが興味深そうにこちらを見つめていた。

「……なんだよ?」

「主、随分と落ち着いておるのう」

「……そう見えるか?」

「ふむ。我に連れ去られているというのに、随分と余裕じゃ」

はるたは苦笑した。

「余裕なんかねえよ。状況を整理してるだけだ」

「ほう?」

「騒いだところで、お前が引き返すとは思えないしな」

リリアは、一瞬だけ目を丸くした。

そして、愉快そうに笑い出した。

「ふははは! よくわかっておるではないか!」

「……そりゃどうも」

はるたは呆れたように肩をすくめた。

(……そりゃ、俺が作った性格だからな)

もちろん、それを口にするつもりはなかった。

血を通して正体を伝えることには成功したが、リリアがその事実をどう受け止めているのか、まだ完全にはわからない。

ただ、彼女が自分に興味を持ったことだけは確かだった。

そして、その興味がどこまで続くのかも、本人の気分次第なのだろう。

「……なあ、リリア」

「なんじゃ?」

「ルミナスに着いたら、まず話を聞いてくれよ」

「ふむ。よかろう」

「……本当だな?」

リリアは、にっこりと微笑んだ。

「我が飽きぬ話ならな!」

「そこは保証しろよ!!」

はるたの叫び声が、境界の狭間に響き渡った。

リリアは楽しそうに笑っている。

圧倒的な力を持つ吸血鬼の真祖。

世界の境界を管理する王。

しかし、その本質は、退屈を嫌い、面白いことを何より愛する自由人だった。

そして今、彼女は長い人生の中でも類を見ない存在を見つけてしまった。

創造主。

自分たちの世界を生み出した、一人の人間。

その事実が、これから何を引き起こすのか。

はるたにも、リリアにも、まだわからなかった。

ただ一つ、確かなことがある。

リリアが興味を持った以上、そう簡単には解放してもらえないだろう。

はるたは、ゆっくりとため息をついた。

(……まったく。とんでもない奴を創っちまったな)

その隣で、リリアは金色の瞳を輝かせながら、楽しそうに笑っていた。