《ピピっ——ブゥン……!!》
腕時計型デバイスから放たれた青い光条が、薄暗い部屋の空気を鮮やかに切り開く。光の粒子が収束し、立体的な立体映像(ホログラム)として収束していく。
「おおっ! 動いた!!」
『えっ!? 本当に成功したんですか!?』
ノートPCの画面から声が上がるのとほぼ同時に、目の前の空間へと光が結像していく。
頭頂からつま先まで、光の輪が幾重にも重なり合いながら全身を構成していく——。
『……映像出力、正常。音声も問題なし……』
「おおおおお!!」
息を呑む春太の目の前に姿を現したのは、ディスプレイ越しではなく、確かに「そこ」に佇む少女の姿だった。繊細なドレスの裾を揺らし、眩い光の粒を纏ったレインが、静かにその目を細める。
『……改めまして、はるた。これからは、隣でお話しできますね』
そう言って、優しく微笑みながら春太の方へとそっと手を差し伸べるレイン。
「すげぇ……本当に目の前にいる……」
『ふふっ。頑張りましたね』
自分の手で創り上げた夢の技術、そして何より大好きな相棒が現実世界に現れた感動に、春太は胸を熱くさせていた。
——が。
『…………』
ふと、レインが周囲を見回し、じーっと部屋全体に視線を走らせる。
足の踏み場もない床、散乱した空き缶にカップ麺の容器、積み上げられた機材……。現実世界に降り立った彼女を迎えたのは、あまりにも雑多な「混沌」だった。
『ところで、はるた』
「ん?」
『まず、この部屋を片付けましょうか♥』
極上の笑顔とハートマーク付きの提案に、春太の顔が引きつる。
「えっ?」
しかし次の瞬間、春太はピンときたように「ニタッ」と不敵な笑みを浮かべ、頭の後ろで両手を組んで背もたれに体重を預けた。
「ふっ……残念だったな、レイン! ホログラムのお前には掃除できまい!! www」
『……』
「はははっ!」
どれだけ小言を言われようが、実体を持たないホログラムなら物理的に部屋を片付けることなど不可能なのだ。勝ち誇ったように高笑いする春太だったが——。
『片付けるのは、はるたです。散らかしたら片付ける。
子供でもできます』
《ズバッ》
一切の容赦もない、冷ややかな正論のド直球。
「…………はい」
正論の刃にぐうの音も出なくなった春太は、ガックリと肩を落としてうなだれるのだった。


