君という夢を描いて The after story―Embrace it all―


 デジャブ。

 確かにあの時のあたしは、若葉を傷つけた。
 涼ちゃんを失ったショックで、あたしも死にかけた。
 奇跡的に目覚めたら、いろんなことを知った。

 目覚める直前、あたしは幼い頃のエディを思い出していた。
 病床で孤独だったあたしの、心の支えになってくれた男の子。
 もし、もう一度会えたなら。
 今度こそ元気な姿で、笑って「ありがとう」を言おうと思っていた。
 なのに、目を覚ました時。
 若葉とエディは、恋人同士になっていた。

 二人の時間だけが進んでいて、あたしは涼ちゃんを失って、あたしだけが取り残されたような気がして。

 二人に当たり散らした。

 そして今――当時のいろんな感情が入りまじったあたしの記憶まで、思い出してしまった。


 せっかく曲の余韻に浸っていたのに――全部台無しだ。
 思い出すのは涼ちゃんだけで、良かったのに。
 黒歴史級に忘れたい過去だっただけに、何とも言えない感情が宙を舞う。


「その曲は、そのままあげるよ」
「え?」
「それでしばらく“涼ちゃん”を感じていたらいい。気の済むまで」
「……恩に着ます」
「素直でよろしい」
「うーん……やっぱり、いちいちムカつくな」
「そうなんだ」
「……それだけ?」
「うん」
「あたしが、何でムカついてるか聞かないの?」
「うん」
「何で?」
「だって、梨歩が勝手にムカついているだけだよね」
「!」
「別に、僕のせいで梨歩がムカついてるって言われたわけじゃないし。『あ、何かイライラしてるなー』ぐらいにしか思わなかったから」
「あんたのせいだわ!」
「え、もしかして聞いて欲しかった? 何か、ごめんね。気づかなくて」
「謝るとこ違うし!」