君という夢を描いて The after story―Embrace it all―

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 今回の改稿で、『君という夢を描いて』という物語が、より鮮明に、そしてより壮大なものになったように思います。
 本編は、涼平視点。
 そして、その後の物語では、梨歩と亞紗斗、それぞれの視点から未来の姿を描いています。
 これまで『Embrace it all』シリーズとして展開していた物語も、振り返ってみれば、『君という夢を描いて』のアフターストーリーとして充分に成立している。
 そう感じたことから、今回、ひとつの大きな物語としてつながるように改稿しました。
 そして、その改稿にあたり、新たに追加したエピソードがあります。
 一つは、梨歩の妊娠・出産。
 もう一つは、亞紗斗のルーツです。
 亞紗斗は、アメリカと日本のハーフ。
 そして、日本人である亞紗斗の母・理華子は大阪出身です。
 大阪弁丸出しの、the・オカンです。

 この設定を思いついたきっかけは、筆者が小学生の頃に転入してきた、一人のクラスメイトの女の子でした。
 その子とは中学三年生の頃を最後に会っていませんが、とにかくいろいろな国を転々とする生活をしていたようです。
 詳しい事情まではわかりません。
 ただ、ヨーロッパやアメリカ、アフリカ大陸、そしていくつかの島国にも住んだことがある――。
 当時の私からすると、想像もつかないような世界で生きてきた子でした。
 そんなふうに、いくつもの国や文化を見てきた彼女が、どうしてクラス分けすらない田舎の小さな学校に、それも二度も転入してきたのだろう。
 子どもながらに、とても不思議だったことを覚えています。
 彼女は三人姉妹の次女で、年の離れた妹がいました。
 その妹は、ケニアで生まれています。
 彼女が初めて転入してきたのは、小学校二年生のとき。
 その一年後、彼女はケニアへ旅立ちました。
 そして、小学校六年生の三学期。
 再び同じ学校へ戻ってきて、そのまま一緒に卒業しました。
 中学校では別のクラスになりましたが、小学生の頃、よく教室で一緒にイラストを描いて遊んでいたこともあり、なぜか私は彼女のお母さんにも気に入っていただいていました。
中学に入ってから、
「英語を教えてあげるから、うちに遊びにおいで」
と誘われ、彼女の家へ遊びに行ったことがあります。
 そうです。
 その、お母さん。
 めちゃくちゃ大阪弁でした。
 一方で、彼女自身はとても綺麗な標準語。
 そのギャップが、子どもの私にはなかなか強烈で、今でもよく覚えています。
 その後まもなく、彼女は、
「セントルシアに行くことになった。今度は日本人学校じゃなくて、まったく現地の生活になるから不安」
 そう話しながら、また日本を離れていきました。
 現在は外国人の旦那さんと結婚し、海外で暮らしているようです。
 そんな彼女のことを、今でも時々思い出します。
 すごく美人で、頭もいい。
 それなのに、少しもそれを鼻にかけることのない子でした。
 もし、いつか彼女がまた日本へ戻ってくる日があるのなら。
 そのときは、もう一度会えたらいいなと思っています。
――と、かなり話がそれてしまいましたが。

 そんな記憶から生まれたのが、亞紗斗の母・理華子です。
 大阪弁で、息子を容赦なくいじり倒す母。
 いつも冷静で、滅多なことでは動じない亞紗斗の最大の弱点が、まさかの母親だった。
 そんな落ちまで含めて、あの頃の記憶から自然と降りてきたものでした。
 本当に些細なエピソードです。
 けれど、何年も経った今、こうして物語の中で新しい人物像やエピソードを生み出すきっかけになったことを思うと、不思議な縁を感じます。

 筆を進めるきっかけをくれた彼女に、感謝を込めて。


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