君という夢を描いて The after story―Embrace it all―

 ローズフェスの後、あたしはとある事務所から声がかかり、念願の歌手デビューを果たした。

「梨歩」
「何?」
「デビュー祝い」
「え、ありがとう」

 あたしはエディから一枚のディスクを受け取った。

「音源?」
「うん」
「エディが作ったの?」
「そうだよ」

 彼にとっては、楽曲を制作するのは呼吸をするようなものなのだろうか。

 以前、あたしが作詞した『ブルーヘヴンの彼方に』を、彼はあっという間に曲に仕上げた。

 悔しいけど、爆即なのに完成度が異常に高い。

「あの、これ……あたしが歌ってもいいやつ?」
「いいよ」
「やった、ありがとう」
「歌えるものなら、ね」
 エディは含みのある笑みを浮かべながら言った。

「……は?」
「梨歩が歌える曲を書いたとは言ってないし」
「ど、どういう意味よ!」
「さあね。まずは聴いてから歌うかどうか決めたら?」
「きぃー! 何かいちいちムカつくな」
「あー、いちいち面白い」

 エディはこの十数年で、随分性格が悪くなったような気がする。それも、あたしだけに。
 若葉には、超絶甘いくせに。

「そこまで言うなら、聴いてやろうじゃないの」
 あたしは音源を再生した。



 冒頭からキラキラしている。

 イントロだけでわくわくするような、爽やかなポップ調だ。

 これから何が始まるんだろう――そんな期待感と、ドラマチックな展開を予感させる旋律。
 
 ところどころにハープの音色が入っているのが、エディらしい。

 そして、エディの声。