初恋、のちパパになる―憧れのあなたは母になっていた―


 一方、玲は裁判を終え事務所に戻るところだった。
「何だ?」
 緊迫した空気を感じた玲。

 聞き覚えのある声の先にいたのは――遙花と蒼生。
「あれは……!」

 女性相談支援センターの職員。その向かいに、刃物を持った男が。

「先輩!」

 気がつけば、玲は走り出していた。

 そして、遙花と蒼生の元へ駆け寄る。

「玲君?」

「先輩、下がって」

 玲は、遙花の前に立った。

「玲君……」

「蒼生君を抱いて。絶対、離さないで」

 男の手には、刃物。


「おい、お前……不倫相手か。お前、俺に隠れてこの男と不倫していたんだな」
 男は一方的にまくし立て、逆上する。

「僕は弁護士です」
「嘘つくんじゃねえよ」
「信じるかどうかは、どうでもいい」


 遙花の腕の中では、生後四カ月の蒼生君が泣いていた。

 この男が、先輩の夫。

 そして、蒼生君の……実父。

「玲君もこっちに――」

「大丈夫」

 玲は振り返らなかった。

「僕がいるから」

 次の瞬間。

 男が踏み込んだ。

「玲君!」

 玲はとっさに左腕を上げる。

 刃が、左肩を走った。

「っ……!」