「……めちゃくちゃ我慢してた」
「知ってる」
「え?」
「だから誘った」
「……それ、今言う?」
「何で?」
「もう止まれなくなるから」
玲はもう一度確認するように遙花を見る。
遙花が小さく頷いた。
それを見て。
玲はゆっくりと顔を近づけた。
唇が重なる。
最初は触れるだけ。
けれど、一度離れて。
もう一度。
今度は少し長く。
何度も交わすうちに、玲の緊張も少しずつほどけていった。
「遙花さん……」
「玲君」
名前を呼ばれるたび、胸の奥が熱くなる。
玲の手が遙花の頬に触れる。
髪を撫でる。
抱きしめる。
いつもよりずっと近い距離で、互いの体温を確かめる。布団の中にこもった熱と、シーツのかすかな擦れる音が、二人の間に流れる時間をゆっくりと刻んでいく。
「……大丈夫?」
「うん」
それでも玲は何度も聞いた。
遙花はそのたびに答えた。
「大丈夫」
玲だから。
そう言うたび、玲の表情から少しずつ迷いが消えていく。
やがて二人は、言葉よりも近い距離で互いの気持ちを確かめ合った。
急がず。
無理をせず。
何度も相手を見ながら。
玲にとっては、初めて誰かにすべてを預ける夜。
遙花にとってもまた、過去とは違う。
誰かに求められたからではなく。
自分自身が、この人と一緒にいたいと望んで選んだ夜だった。
*



