初恋、のちパパになる―憧れのあなたは母になっていた―


 *

 玲は無事に退院し、職場に復帰した。
「このたびは、お騒がせして申し訳ありませんでした」
「神城先生、お帰りなさい」
「ニュースで流れてびっくりしたわよ! よく無事で……」
「怪我の具合はもう良いの? 大きな怪我だったんでしょう?」
 口々に言われ、玲は戸惑いながらも答えた。
「ご心配かけてすみません。でも、もう大丈夫なので、今日からまたよろしくお願いします」

「玲」
「佐々木先生……」
「無事でよかった。よく頑張った」
「え、ちょっと……」
 武蔵に抱きしめられる玲。
「心臓、止まるかと思ったよ」
「先生……」
 武蔵の声、肩が震えている。
「お帰り、玲」
「……やめてください」
「本当に、よかった……」
「…………うん」
 溢れ出す涙。
 それを止めることは、今の玲にはできなかった。

 それから更に時は流れ。
 玲は徐々に一人で依頼を受け、法廷に立つ機会も増えた。

 玲の刺傷事件から五ヶ月ほど経過し、ようやく遙花の離婚が成立した。調停期間中、夫も最終的に離婚に応じ、蒼生の親権者を遙花とすることで話がまとまった。

「色々と助けてくれてありがとう。私もあれから考えたんだけど、やっぱり、会うのはもうこれっきりにしよう」

「待って」
「え?」
「僕はまだ、先輩の気持ちを聞いていない」
「それは…」

「僕は、迷惑をかけられたなんて一ミリも思っていないんだけど」
「でも、怪我をさせてしまったし。もし、また同じことが起こったとしたら、今度は命の保証だって……」
「それでもいい」
「……!」

「先輩も、蒼生君も。僕が守りたい。そばにいたい。迷惑だなんて思わないで、もっと頼ってほしい。それとも、僕のこと、嫌い? むしろ、その方が諦めつく……いや、先輩が僕のこと嫌いでも、今回は引き下がるつもりないから」

「どうして……そこまで」

「好きだから。先輩も、蒼生君も。僕にとっては大事だから。大切にしたいと思ったから。これっきりには、したくない」
「……ありがとう」

「で、先輩の気持ちは?」
「そこは聞くんだ」
「だって、まだ聞いてない」
「意外としつこいのね」
「しつこいよ。しつこくしたくなるくらい……好きになったんだから、仕方ないじゃん」

「回りくどそうで、結構直球なのね」
「だって、もう待つ必要なくなったから」
「それは、私の離婚が決まったから?」

「そうだよ。本当はすぐにでも離婚してほしかったけど、手続き上色々あるから……まあ待ちきれなくなって……感情が暴走しそうになるのを必死に抑えてたくらい」

「わかった。もう降参します」
「え?」
「すぐには無理だけど、これから少しずつだったら。蒼生もいるし」
「ほんと?」
「うん」
「これからも、会ってくれる?」
「うん」
「やった!」

  *