Over the EDEN ―夢の向こう側へ―





 「ずびっ……」
 鼻をすする音、約一名。


 視線の先にいたのは。


「ね、姐さん……」

「……やってくれるじゃないの」


 ロゼが顔を伏せながら、カウンター越しに言う。


「エディ」

「何?」


「ブラボーよ! アンタ最高!」
「え」

「パパ……すご」と瑠花。
「圧巻過ぎる」と律。
「パパ、かっこよ!」と玲。


 自然と拍手が鳴り響く。

「エディさん、全然衰え知らず」
「むしろ進化してね?」
「兄貴にしては、すごい」

 本当は、少し恐れていた。エディは誰に相談するわけでもなく、自分の中にある思いだけを頼りに、この曲を書き上げた。
 思いのままに書き上げた曲だとしても、もしかしたら自己満足と言われるかもしれない。
それでも、二十年間の思いの数々が溢れ出しては止まらず、それが旋律となり、言葉となり。

 途中でやめる気は起こらないほど、没頭した。
 二十年ぶりの曲づくり。
 楽しかった。
 夢の続きを描いているようで。

 ただ、他のメンバーが自分と同じ思いでいるとは限らない。
 描き始めた夢の続きでさえ、もしかしたら叶わないかもしれない。
 そんな不安も抱えながら、それでも弦を弾いた。
 言葉を紡いだ。
 旋律に乗せた。

 描いてよかった――拍手を送られた瞬間、エディはそう思った。

「エディさん」
「若葉ちゃん?」
「夜な夜なこれを一人で、ずっと?」
「あ、バレてた?」
「うん」
「そうか」
「きっと、届くわ」
「え?」
「すべての人に」
「……ありがとう」

 夢の続きを描くのは、かつての仲間だけではない。
 その先の未来にいた、次世代の子どもたちが描く未来もまた。

「さて、これからが本番だ」

「あたし、練習しなきゃ」
「ボクも」
「パパ、今日から一緒に……弾けるんだね」
「ああ」

 彼らが紡ぐ――音と言葉が織り成す世界に。
 
 まだ幼くも、それぞれの音色を響かせる新たな存在を。

 親として、先駆者として。

 導いていく――


 そしていつか。

 親をも越えて、自分たちの音を。

 奏でていけるように。