Over the EDEN ―夢の向こう側へ―


 イントロが流れた。
 柔らかなハープの音色。

 エディは音楽ソフトを使い、ストリングスやパーカッション、ベースの音が重なり合ったメロディーを作成したようだ。機械的だが、曲の外枠と構成はかなり明確に作られている。

 そこに重なるエディの歌声と、梨歩の声に見立てた女性ヴォーカルの歌声。

「今回は、梨歩と僕のツインヴォーカルだ」
「え!?」
「前回はあくまで梨歩がメイン、僕はコーラスだったからね。今回は、音にも歌にも二十年分の厚みを持たせたいから、より重厚な仕上がりになっているんだ」

 いつになく熱量の多いエディ。

 かつてのEDENに、新たなサウンドが追加される。

 梨歩の歌とアコースティックギターの音。

 律のヴァイオリン。

 瑠花のグランドハープ。

 玲のピアノ。

 これらを加えることで、メロディー自体の厚みだけでなく、色鮮やかで鮮烈な音色になる。


曲名は。
『Dreaming…again』――

 ポップなイントロの後。
 アコースティックギターの繊細な旋律が、プロローグを綴るように冒頭の歌詞へと緩やかに繋がっていく。

  頬をかすめる潮風 夕映えの海
  オレンジ色に染まる街
  高まる鼓動 重なり合う君と僕の未来
  誓いの鐘が鳴る前に 交わした約束
  これからもずっと君の隣で(僕の隣で)

 サビ直前の煌びやかなピアノとハープの協奏。
 シンセパートが刻むベースの重低音にストリングスが重なる。
 やがて、大きな放物線を描くように高らかに、ドラマチックにユニゾンする。

 エディのソロ。
  生きて行く 何があっても
  この手を離さない 

 梨歩のソロ。
  今 この瞬間の連続が
  確かな明日へと続いていく

 ツインヴォーカル。
  幾重にも重なる虹の向こうに
  鮮やかに彩られた 僕たちの未来を信じて
  生きていく
  生きていく
  時は満ちていく

 間奏。

 ヴァイオリンとハープが、それぞれ二重奏。
 シンセサイザーのストリングスと、情熱的なエレキギターの咆哮。疾走感のある、アップテンポなビートを刻むドラムの躍動。

 梨歩のソロ。
  繋いでいく 夢の続きを
  描き続けていた

 エディのソロ。
  今 もう一度あの頃の
  僕たちが奏でた旋律を

 ツインヴォーカル。
  幾重にも重なる音の向こうに

 エディのフレーズに梨歩のフレーズが重なり。
  ドラマチックなサウンド響かせて(青く染まった春の景色を) 

 エディが。
  繋いでいく

 梨歩が。
  繋いでいく

 二人の音が重なり合う。
  命 巡っていく


 二人のハーモニー。
  生きていけ 何があっても

 梨歩。
  その手を離さない

 エディ。
  今 守りたい人がいるだけで
  それだけで僕は 幸せだと思える

 二人のハーモニー。
  そんな未来に向かって 今日まで生きてきた
  過去も 今も この先の未来も
  ずっと

 転調し、二人は更に高音域に到達。
 やや高めのハスキーな声と、溌溂とした伸びやかなハイトーンヴォイスが、空気を震わせるように融合しながら旋律に溶けていく。

  僕たちの時間は
  続いていく
  続いていくんだ

  これからもずっと
  夢の続きを
  描き続けて

 二人のパートに、全員のハーモニー。
  生きていくんだ(伝えていくんだ)

  歌っていくんだ(奏でていくんだ)

 全員で。ゴスペル調に。
  Dreaming again…

 一瞬の静寂。

 ピアノとグランドハープの一音の余韻。


 そして――曲が終わった。

「……」

「……」


 静まりかえる店内。