その次のライブの日。
私はまた飛月くんに会いに行く。
学校はまたサボった。でも大丈夫。留年はしないだろうし、ちゃんと卒業さえ出来れば両親は何も言わないから。
でも今日は、ライブ会場に向かっている途中で、思わぬ収穫があった。
「…え?ありさ?」
ありさがいた。ありさも学校をサボっていたのだ。学校をサボっているだけなら全然いいんだけど…。
「…あのおじさん、誰…?」
ありさが50代ぐらいの知らない男性と一緒に歩いていた。しかも腕を組んでイチャイチャしていて、カップルみたいだった。
…カップル…じゃない。あれは明らかに…。
パパ活だ。
「…え。やばー。いいもん見ちゃったー!」
私は何枚も証拠の写真を撮り、動画も撮った。
仮に本当に付き合ってたらそれはそれで問題だし、パパ活だとしても問題。どっちにしろヤバい。
大収穫をした後に、私は飛月くんに会いに行き、今日も飛月くんからたくさん幸せを貰ったのだった。
・
夜。
私はノックもせずに ありさの部屋に入った。
「は?何お前。ノックくらいしてよ」
私がノックしなかったから ありさはキレてきたけど、そんな事はどうでもいい。
「…ありさ。今日って何してた?」
「は?なに急に」
「私は学校サボってた」
「へー」
「でね、私、見ちゃったんだよね。ありさが知らないおじさんと一緒にいるところ」
そう言った瞬間、ありさの目が変わった。明らかに焦りの目になっている。
「…何言ってんの?人違いでしょ」
「…これ」
今日撮った証拠の写真や動画を見せた。
「明らかに ありさでしょ。ねえ、これ、パパ活?それとも本当に付き合ってんの?どっちにしろ問題だけど」
ありさの顔がだんだん青ざめていく。こんなありさを見るの、初めてかも。なんだろう、快感がヤバい。
「あはは!めっちゃ焦ってるね!おもしろーい!ねえ、答えてよ。うちのパパよりも明らかに年上のおじさんと何してたんですかあー!?」
「うるさい!!!」
「ははっ。てか、どっち?パパ活なのか、付き合ってんのか」
「付き合ってる訳ないでしょ!私、同世代のイケメンしか無理だし!」
「って事は、今日のこのおじさんはパパ活って事だね?やばー」
焦ってる。ありさが焦ってる。面白い。愉快すぎる。私の方が優勢な展開、人生で初めて。
「いつからパパ活してるのー?」
「…1年前…」
「うわー…。今までよくバレなかったね。で、1年間でいくら稼いだの?」
「…まゆかには関係ないでしょ!」
「えー?だって、お金の話は興味あるもん」
私は証拠を持っていて、ありさの弱みを握っている状態。なんとか言いくるめて、ありさから いくらか貰って、そのお金を飛月くんに貢ごうと考えている。私の世界は飛月くんを中心に回っている。
「…まあ、100万は稼いだんじゃない?知らないけど」
ありさはバツが悪そうな顔をしながら渋々答えてくれた。
100万…。まあ、1年間たくさんパパ活してたら、それくらいは稼げるか…。
「…ふーん。100万ね…。お金持ちだねえ」
「でも、メイク用品とか服とかに使ったし、まだまだ欲しい物いっぱいあるし!パパ活をやめる気はないから!」
「でも残金はゼロではないでしょ?いくら残ってんのー?通帳見せてよー」
「は?知ってどうすんの?」
「え?口止め料を貰うに決まってんじゃん」
「は?」
「口止め料くれたら、ありさがパパ活してる事、誰にも言わないよ?でも、くれなかったら…。パパとママに言うし、学校にもバラす!こっちは証拠を持ってるんだから、言い逃れ出来ないよ?」
ありさは大きくため息をついた。
「ねえ、とりあえず通帳見せて?いくら残ってんの?」
私は今まで ありさのせいで不憫な思いをしてきたから、その不満が今、爆発している。
ありさは通帳を床に投げ捨てた。
私は通帳を拾い、残高を見た。
55万残っていた。
「…ありさ」
「何?なんなの?」
「…50万でいいよ」
「…は?」
「だから口止め料だよ。50万でいいって言ってんの」
自分でも最低な事を言ってるのはわかってる。いくら ありさの事が嫌いだからって、口止め料50万は さすがに高い。
でも、小さい頃から ありさだけが贔屓されて、ありさも私に嫌な事をたくさんしてきた。例えば、私のお気に入りのシュシュを勝手に持って行って無くしたのにケロッとしてて謝ってくれなかったり。私が仲良くなりかけていた女の子に私の嘘の情報を流して、そのせいで私は友達が出来なかったり。ありさがママの財布からお金抜いたのに、ありさが「まゆかが抜いているところを見た」と嘘をついたから、私が犯人にされて怒られたり。とにかく、ありさへの恨みが凄い。
あと、これは飛月くんのため。飛月くんに貢ぐためのお金が欲しい。なんなら50万じゃ足りないくらい。
「はあ!?あんた何言ってんの!?」
「え?くれないの?だったらバラす」
「そもそもあんた、50万貰って何に使うの?」
そりゃあ飛月くんに使うよ。
でも、飛月くんの事、はちみつミラーの事、ありさには言いたくない。
だって、言ったら絶対ありさは飛月くんの事を好きになる。あんなにかっこいいんだから、好きにならない方がおかしい。
ありさが飛月くんの事を好きになるのだけは嫌だ。私自身は同担拒否ではないけど、嫌いな人が同担になるのは耐えられないし、生理的に受け付けない。
仮にありさが飛月くんじゃなくて他のメンバーを好きになったとしても、それも嫌。とにかく ありさには、はちみつミラーに関わってほしくない。
私の好きな人と嫌いな人は、交わってほしくない。
「…そりゃあ、私だって服とか買いたいし!てか、何に使ってもいいでしょ!?頂戴よ!くれなかったらマジでバラすから!」
「…マジ最悪…。お前マジでキモいな。お前と双子とか生理的に無理なんだけど」
ぶつぶつ言いながら、翌日に ありさは50万を私にくれた。
勝った。人生で初めて ありさに勝った。
こうして私は、飛月くんのために50万を手に入れたのだった。
・
そして、ありさから手に入れた50万は、飛月くんのグッズや公式写真に使い、そしてもちろん飛月くんとツーショットもたくさん撮り、たくさん会いに行った。
あと、バイトは辞めた。
飛月くんのためにお金を稼がなければいけないけど、それよりも今は、“たくさん飛月くんに会いたい”という気持ちが強かった。今は ありさから手に入れた50万があるから、それが無くなったらまたバイトを始めようと思った。
とにかく今は、飛月くんとの時間を大切にしたい。
「まゆかちゃん!また来てくれてありがとー!」
「あっ!今日は爪も黄色にしてきてくれたのー?超嬉しー!」
「今日いつもとメイク違う?カラコン変えた?あとチークもちょっと違うね!可愛い!似合ってる!」
「ねえ、今日さ、まゆかちゃんにファンサしたんだけど、ちゃんと伝わったかな?まゆかちゃんに いっぱいハート飛ばしたよー!俺からの愛!」
「今日は最前にいたね!もちろん見えてたよ!ライブが始まってすぐに まゆかちゃんが見えて、めちゃめちゃ嬉しかった!」
「毎回来てくれて ほんっとうにありがとねー!大好き!今日も大好きー!」
飛月くんから数えきれないほどの幸せを貰った。
以前の私は、ありさと比べられて、自分に自信が持てなくて、どんどん自分の事が嫌いになって、生きる意味が見つからなかった。
でも、今は違う。飛月くんからたくさん「可愛い」とか「大好きだよ」って言ってもらえて、少し自分に自信が持てて、飛月くんのおかげで私は生きている。だから本当に飛月くんには感謝してもしきれない。
私はまた飛月くんに会いに行く。
学校はまたサボった。でも大丈夫。留年はしないだろうし、ちゃんと卒業さえ出来れば両親は何も言わないから。
でも今日は、ライブ会場に向かっている途中で、思わぬ収穫があった。
「…え?ありさ?」
ありさがいた。ありさも学校をサボっていたのだ。学校をサボっているだけなら全然いいんだけど…。
「…あのおじさん、誰…?」
ありさが50代ぐらいの知らない男性と一緒に歩いていた。しかも腕を組んでイチャイチャしていて、カップルみたいだった。
…カップル…じゃない。あれは明らかに…。
パパ活だ。
「…え。やばー。いいもん見ちゃったー!」
私は何枚も証拠の写真を撮り、動画も撮った。
仮に本当に付き合ってたらそれはそれで問題だし、パパ活だとしても問題。どっちにしろヤバい。
大収穫をした後に、私は飛月くんに会いに行き、今日も飛月くんからたくさん幸せを貰ったのだった。
・
夜。
私はノックもせずに ありさの部屋に入った。
「は?何お前。ノックくらいしてよ」
私がノックしなかったから ありさはキレてきたけど、そんな事はどうでもいい。
「…ありさ。今日って何してた?」
「は?なに急に」
「私は学校サボってた」
「へー」
「でね、私、見ちゃったんだよね。ありさが知らないおじさんと一緒にいるところ」
そう言った瞬間、ありさの目が変わった。明らかに焦りの目になっている。
「…何言ってんの?人違いでしょ」
「…これ」
今日撮った証拠の写真や動画を見せた。
「明らかに ありさでしょ。ねえ、これ、パパ活?それとも本当に付き合ってんの?どっちにしろ問題だけど」
ありさの顔がだんだん青ざめていく。こんなありさを見るの、初めてかも。なんだろう、快感がヤバい。
「あはは!めっちゃ焦ってるね!おもしろーい!ねえ、答えてよ。うちのパパよりも明らかに年上のおじさんと何してたんですかあー!?」
「うるさい!!!」
「ははっ。てか、どっち?パパ活なのか、付き合ってんのか」
「付き合ってる訳ないでしょ!私、同世代のイケメンしか無理だし!」
「って事は、今日のこのおじさんはパパ活って事だね?やばー」
焦ってる。ありさが焦ってる。面白い。愉快すぎる。私の方が優勢な展開、人生で初めて。
「いつからパパ活してるのー?」
「…1年前…」
「うわー…。今までよくバレなかったね。で、1年間でいくら稼いだの?」
「…まゆかには関係ないでしょ!」
「えー?だって、お金の話は興味あるもん」
私は証拠を持っていて、ありさの弱みを握っている状態。なんとか言いくるめて、ありさから いくらか貰って、そのお金を飛月くんに貢ごうと考えている。私の世界は飛月くんを中心に回っている。
「…まあ、100万は稼いだんじゃない?知らないけど」
ありさはバツが悪そうな顔をしながら渋々答えてくれた。
100万…。まあ、1年間たくさんパパ活してたら、それくらいは稼げるか…。
「…ふーん。100万ね…。お金持ちだねえ」
「でも、メイク用品とか服とかに使ったし、まだまだ欲しい物いっぱいあるし!パパ活をやめる気はないから!」
「でも残金はゼロではないでしょ?いくら残ってんのー?通帳見せてよー」
「は?知ってどうすんの?」
「え?口止め料を貰うに決まってんじゃん」
「は?」
「口止め料くれたら、ありさがパパ活してる事、誰にも言わないよ?でも、くれなかったら…。パパとママに言うし、学校にもバラす!こっちは証拠を持ってるんだから、言い逃れ出来ないよ?」
ありさは大きくため息をついた。
「ねえ、とりあえず通帳見せて?いくら残ってんの?」
私は今まで ありさのせいで不憫な思いをしてきたから、その不満が今、爆発している。
ありさは通帳を床に投げ捨てた。
私は通帳を拾い、残高を見た。
55万残っていた。
「…ありさ」
「何?なんなの?」
「…50万でいいよ」
「…は?」
「だから口止め料だよ。50万でいいって言ってんの」
自分でも最低な事を言ってるのはわかってる。いくら ありさの事が嫌いだからって、口止め料50万は さすがに高い。
でも、小さい頃から ありさだけが贔屓されて、ありさも私に嫌な事をたくさんしてきた。例えば、私のお気に入りのシュシュを勝手に持って行って無くしたのにケロッとしてて謝ってくれなかったり。私が仲良くなりかけていた女の子に私の嘘の情報を流して、そのせいで私は友達が出来なかったり。ありさがママの財布からお金抜いたのに、ありさが「まゆかが抜いているところを見た」と嘘をついたから、私が犯人にされて怒られたり。とにかく、ありさへの恨みが凄い。
あと、これは飛月くんのため。飛月くんに貢ぐためのお金が欲しい。なんなら50万じゃ足りないくらい。
「はあ!?あんた何言ってんの!?」
「え?くれないの?だったらバラす」
「そもそもあんた、50万貰って何に使うの?」
そりゃあ飛月くんに使うよ。
でも、飛月くんの事、はちみつミラーの事、ありさには言いたくない。
だって、言ったら絶対ありさは飛月くんの事を好きになる。あんなにかっこいいんだから、好きにならない方がおかしい。
ありさが飛月くんの事を好きになるのだけは嫌だ。私自身は同担拒否ではないけど、嫌いな人が同担になるのは耐えられないし、生理的に受け付けない。
仮にありさが飛月くんじゃなくて他のメンバーを好きになったとしても、それも嫌。とにかく ありさには、はちみつミラーに関わってほしくない。
私の好きな人と嫌いな人は、交わってほしくない。
「…そりゃあ、私だって服とか買いたいし!てか、何に使ってもいいでしょ!?頂戴よ!くれなかったらマジでバラすから!」
「…マジ最悪…。お前マジでキモいな。お前と双子とか生理的に無理なんだけど」
ぶつぶつ言いながら、翌日に ありさは50万を私にくれた。
勝った。人生で初めて ありさに勝った。
こうして私は、飛月くんのために50万を手に入れたのだった。
・
そして、ありさから手に入れた50万は、飛月くんのグッズや公式写真に使い、そしてもちろん飛月くんとツーショットもたくさん撮り、たくさん会いに行った。
あと、バイトは辞めた。
飛月くんのためにお金を稼がなければいけないけど、それよりも今は、“たくさん飛月くんに会いたい”という気持ちが強かった。今は ありさから手に入れた50万があるから、それが無くなったらまたバイトを始めようと思った。
とにかく今は、飛月くんとの時間を大切にしたい。
「まゆかちゃん!また来てくれてありがとー!」
「あっ!今日は爪も黄色にしてきてくれたのー?超嬉しー!」
「今日いつもとメイク違う?カラコン変えた?あとチークもちょっと違うね!可愛い!似合ってる!」
「ねえ、今日さ、まゆかちゃんにファンサしたんだけど、ちゃんと伝わったかな?まゆかちゃんに いっぱいハート飛ばしたよー!俺からの愛!」
「今日は最前にいたね!もちろん見えてたよ!ライブが始まってすぐに まゆかちゃんが見えて、めちゃめちゃ嬉しかった!」
「毎回来てくれて ほんっとうにありがとねー!大好き!今日も大好きー!」
飛月くんから数えきれないほどの幸せを貰った。
以前の私は、ありさと比べられて、自分に自信が持てなくて、どんどん自分の事が嫌いになって、生きる意味が見つからなかった。
でも、今は違う。飛月くんからたくさん「可愛い」とか「大好きだよ」って言ってもらえて、少し自分に自信が持てて、飛月くんのおかげで私は生きている。だから本当に飛月くんには感謝してもしきれない。

