100万円は無駄じゃなかった

彼と出会ったのは、私の17歳の誕生日でした。

スマホを見ていて、SNSの動画投稿アプリのおすすめ欄を適当にスクロールしていたら、彼が出てきてくれて…。

それがきっかけで会いに行き、私は彼の沼にハマりました。

自分の全財産を全て彼に捧げてもいいと思いました_。



・・・



4月のある日。

今日は、私…と、私の双子の姉の17歳の誕生日。

『ありさ・まゆか 17歳おめでとう』

そんなプレートの乗った抹茶のホールケーキ。

両親は、“表面上は”私達双子の誕生日を祝っている。

でも、私は抹茶が嫌い。抹茶ケーキは双子の姉・ありさの好物。

「2人共、17歳おめでとう!」
「パパ、ママ、ありがとー!超嬉しー!学校でも いっぱい祝ってもらって、プレゼントもいっぱい貰ったの!香水とかリップとか!」
「いいわねえ。ありさ “ は ” 友達がいっぱいいて!」
「うんっ!…まゆかは?プレゼント何貰った?」

ありさは、私に友達がいない事を知っている上でそんな事を聞いてきた。とても悪意を感じる。

「…うざ。部屋戻るわ。ほんとしょーもない」

私が部屋に戻ろうとすると、パパが「まゆか、なんなんだその態度は!せっかくの誕生日なのに!」と、怒ってきた。

正確には『ありさとまゆかの誕生日』じゃなくて『ありさの誕生日』なんでしょ?ありさの事しか祝う気ないくせに…。

「…まじうざい」

私は逃げるように自分の部屋に戻った。

ありさと私は、二卵性の双子。
顔はあまり似ていない。悔しいけど ありさはとても可愛い。一方、私…まゆかは、決して不細工ではないけど、ありさに比べたら少し残念ってよく言われる。ありさが上の上で、私が中の上の顔面らしい。

ありさは顔が可愛い上に、成績も良くて運動も出来て、友達もいっぱいいる。性格は悪いけど、学校では『いい子』で世渡り上手だから、ありさは全てが上手くいっている。

一方、私は…。成績は悪い、運動も出来ない、友達もいない。全て ありさと逆。ただ、性格の悪さだけは おそろい。だけど私は ありさと違って世渡り上手ではないから、周囲と上手くやっていけなくて…。だから友達がいないのだ。

両親は ありさと私を比べてくる。全てにおいて ありさの方が秀でているから、ありさばかり可愛がられる。

小さい頃は気にしてたし、“ありさばかり ずるい!”“もっと私の事も可愛がってよ!”って思ってたけど、今は もうどうでもいい。高校を卒業したら家を出るつもりだから、それまでの辛抱だと思っている。

私はベッドに仰向けになり、自分のスマホを開いた。誰からもお祝いメッセージは来ていない。そもそも学校で誰とも連絡先を交換していないから、来る訳ないけれど。

適当にSNSの動画投稿アプリを開き、おすすめ欄をスクロールした。
動物の動画、アニメの動画、お笑い芸人の動画などが出てきて、少し見てはスクロールしてを繰り返した。

その時、たまたまおすすめ欄に出てきてくれたのが、
泉原(いずみはら)飛月(ひづき)くんだった。

一目惚れだった。

同じ学校の男子の事は嫌いだけど、飛月くんの事は一目見た瞬間に好きになった。

とにかく顔が私の好みのど真ん中だった。
年は20歳。私より年上。好みだ。好みすぎる。

彼のプロフィールを見たら、『アイドル』と書いてあった。
詳しく調べてみると、飛月くんは『はちみつミラー』というアイドルグループに所属している事がわかった。
6人組のグループで、甘々の可愛い系のコンセプトのグループ。飛月くんのメンバーカラーは黄色。

はちみつミラーは2年前にメジャーデビューしていてCDも出している。ただ、CDの売り上げは悪く、SNSのフォロワーも少なく、正直人気グループとは言えない。

CDを1枚買うと、必ず『ツーショット券』という物がついてくるらしい。
毎月たくさんライブがあって、毎回1時間ほどライブをした後に特典会があり、その特典会で推しとツーショットが撮れるらしい。その時に使うのがツーショット券。CDをたくさん買えば買うほど、推しとたくさんツーショットが撮れるという仕組みらしい。ツーショット券はどのメンバーにも使える。推しとたくさんツーショットを撮れば撮るほど推しの収入は増える。

私は無意識のうちにCDを買っていた。とりあえず10枚。出費は2万円ほど。

そして、はちみつミラーのライブのチケットを購入した。普通に売れ残っていた。チケット代は5000円。キャパ1000人の会場。日時は…3日後。学校サボって行くつもり。

ただ、すぐにCDが届く訳ではないので、今は私はツーショット券を持っていない。だから、フリマアプリやSNSで知らない人と取り引きして、CDの定価の値段でツーショット券を買った。どうしても飛月くんとツーショットが撮りたかったから。これも10枚買った。また更に約2万が消えた。

飛月くんに出会った日…私の17歳の誕生日に、合計約4万5000円ほどが消えたのだった。