清掃の時間からはじまる推し活物語 -Season2-

ライブの後、先輩からお礼の電話があった。

「八神、来てくれてありがとな。
みんなにも伝えたけど、ステージからみんなの顔を見て、ちょっと泣きそうになったわ。」

「こちらこそ、招待してくれてありがとうございました!
ファミレスで、みんなでずーっとライブの話して、めっちゃ楽しかったです。
先輩の同期の須藤さんなんか、ファンクラブ入るって言ってたし、草壁さんは推しが決まったって言ってたし、加賀さんは自分もダンス習おうかなって。」

「草壁の推しも気になるけど、加賀はリズム感皆無だからたぶんノリで言ってるだけだわ。
てか、八神、人見知り治ったんじゃね?」

「オタク特有の能力だと思うんですけど、好きなものに関することなら、コミュ力スイッチがONになるみたいです(笑)
それに、先輩の同期の皆さん、いい人ばかりで話しやすかったし。」

「だろ。あいつら、最高なんだよ。」

先輩の友達と、こうして繋がりが持てたことが、俺は嬉しかった。

先輩の好きなもの、好きな人、好きな場所、全部知りたいし、好きな時間を共有したい。

そんな思いが通じたのか、先輩から、嬉しいお誘いがあった。

「東京でのライブが終わったから、次は大阪なんだけど、その前に少しだけ休みがもらえたんだ。
土曜日、会えない?」

「会えるに決まってます!」

「即答かよ(笑)
オレ、最近サウナにハマっててさ。
一緒に行かない?八神、行ったことある?」

「一度だけ、健康ランドのサウナに入ったことはありますけど、ととのうってのがよく分からず…」

「あー、オレも最初はわかんなかったよ。
でも、サウナ好きなメンバーに連れられて何度か通ってるうちに、これかぁってなった。
それに、嫌なことがあっても、サウナに行くと一旦頭が空っぽになって、気持ちが切り替わるんだよね。」


ステージから俺たちの顔を見て、「ちょっと泣きそうになった」と言った先輩の心境とか、サウナで気持ちをリセットする日常も含めて、俺は先輩のことをもっと知りたいし、理解したい。

それに、俺ももうすぐ高3になる。
受験のこととか、将来のことで不安になる日もある。
サウナでととのう、という感覚を知って、ちょっとだけ現実から解放されたい。

たとえ、ととのわなくても、先輩と二人で会えるだけで、俺のストレスや悩みは一瞬で軽くなる。
土曜日が待ち遠しくて仕方がない。