先輩は学業と芸能活動で超多忙なはずなのに、毎日必ず、チャットでメッセージを送信してくれた。
なかなか会うことが叶わない日々の中、
「おはよう」
の一言だけでも、それが先輩と俺を繋ぐ大切な命綱のようなものだった。
VECTAの、デビュー曲のリリースイベントは、全国の大型商業施設のオープンスペース等で行われ、フリーライブの後に特典会がついていた。
俺は、姉と一緒に申し込み、二人とも参加券をゲットできたので、一緒に会場に行くことにした。
以前は、姉がイベントに行く度に「夕飯おごる」とか「〇〇買ってあげる」と条件を提示されて、渋々付き合っていたが、今は同行者がいることを心強く思う。
ほぼ女性ばかりの中、男の俺が一人でイベントに参加するのは、ちょっと勇気がいる。
東京郊外にあるショッピングモールには、予想よりも大勢のファンが集まっていた。
デビューしたばかりとはいえ、メンバーの中には俳優業をしていたり、先輩のようにCMに出ている者もいるからだろう。
注目度の高さがうかがい知れた。
実は、今日のリリイベに来ることは、矢野先輩には内緒にしていた。
ちょっとした悪戯心と、先輩に変に意識させたくないと思ったからだ。
姉と一緒に、優先観覧エリアの抽選のため、列に並んでいたら、後方の女子達の会話が聞こえた。
「絶対人気出るから、今のうちこういうイベント参加しまくっといた方がいいよね。」
「それな。わしら席運悪いから、会場大きくなったら、星屑席しか当たらんもんな。」
…姉は、チケットが当たらなくなると熱が冷めるタイプだから、もしかしたら一緒に来られるのも今のうちかもしれない。
整理券の番号は、全体の真ん中あたりになった。
俺は周囲の女性達よりは身長があるから、見やすく感じたが、姉は前の人の頭と頭の隙間からステージを見るかたちになっていた。
イベント開始時間が迫り、いよいよVECTAがステージに出てくると思うと、緊張とワクワクとドキドキで居てもたってもいられなくなった。
推し活って、このアドレナリン出まくりの瞬間が最高に楽しい。
時間ピッタリに、ステージ下手からメンバー達がぞろぞろと出てきた。
会場は、黄色い歓声と、
「えええ、ちょっと、カッコよすぎ…」
「顔小さ…」
「脚長ッ」
というどよめきが沸き上がった。
俺も、メンバー達を見た瞬間、人間離れした雰囲気に圧倒され、
「ヤバッ」
と、声が漏れてしまった。
一番最後に、矢野先輩が出てきた瞬間、一際大きな歓声が上がった。
俺は、心の中で「先輩ッ…!!!」と叫んでいた。
イケメン揃いのVECTAの中でも、矢野先輩の美貌は特に際立っていた。
スタイルおばけなので、遠目でも見つけやすい。
もし、俺の高校の先輩じゃなく、たくさんいるアイドルの一人として出会ったとしても、一目で魅了されただろうと思う。
メンバー紹介と、わちゃわちゃしたトークのあと、デビュー曲を歌い、会場は大いに盛り上がった。
あっという間に時間は過ぎ、少し休憩を挟んで、特典会がはじまった。
特典会は、メンバーが横一列に並んでいる前を、客が順番に通り過ぎる、いわゆる「お見送り会」だった。
そうめん流しのようにメンバーの前をスルスルと通過するファンに、笑顔で手を振るメンバー達。
緊張で落ち着かず、何度も深呼吸して、自分の番が来るのを待った。
姉は、手を振りながら、
「がんばってー!応援してます!」
と、メンバーに声をかけながら、慣れた様子でスタスタと歩いて行く。
俺は何と声をかけたらいいかわからず、ヘラヘラペコペコしながら、歩を進めた。
メンバー達は全員、しっかりと俺の目を見て
「ありがとう!」
「また来てね!」
と言ってくれた。
推し(先輩)以外のメンバーでも、やはり目が合うとドキドキしてしまう。
最後に、矢野先輩がいて、他のメンバー同様、笑顔で手を振りながら
「ありがとう!」
と声をかけてくれたが、言外にいろいろな感情が含まれていることは、さすがに察した。
なかなか会うことが叶わない日々の中、
「おはよう」
の一言だけでも、それが先輩と俺を繋ぐ大切な命綱のようなものだった。
VECTAの、デビュー曲のリリースイベントは、全国の大型商業施設のオープンスペース等で行われ、フリーライブの後に特典会がついていた。
俺は、姉と一緒に申し込み、二人とも参加券をゲットできたので、一緒に会場に行くことにした。
以前は、姉がイベントに行く度に「夕飯おごる」とか「〇〇買ってあげる」と条件を提示されて、渋々付き合っていたが、今は同行者がいることを心強く思う。
ほぼ女性ばかりの中、男の俺が一人でイベントに参加するのは、ちょっと勇気がいる。
東京郊外にあるショッピングモールには、予想よりも大勢のファンが集まっていた。
デビューしたばかりとはいえ、メンバーの中には俳優業をしていたり、先輩のようにCMに出ている者もいるからだろう。
注目度の高さがうかがい知れた。
実は、今日のリリイベに来ることは、矢野先輩には内緒にしていた。
ちょっとした悪戯心と、先輩に変に意識させたくないと思ったからだ。
姉と一緒に、優先観覧エリアの抽選のため、列に並んでいたら、後方の女子達の会話が聞こえた。
「絶対人気出るから、今のうちこういうイベント参加しまくっといた方がいいよね。」
「それな。わしら席運悪いから、会場大きくなったら、星屑席しか当たらんもんな。」
…姉は、チケットが当たらなくなると熱が冷めるタイプだから、もしかしたら一緒に来られるのも今のうちかもしれない。
整理券の番号は、全体の真ん中あたりになった。
俺は周囲の女性達よりは身長があるから、見やすく感じたが、姉は前の人の頭と頭の隙間からステージを見るかたちになっていた。
イベント開始時間が迫り、いよいよVECTAがステージに出てくると思うと、緊張とワクワクとドキドキで居てもたってもいられなくなった。
推し活って、このアドレナリン出まくりの瞬間が最高に楽しい。
時間ピッタリに、ステージ下手からメンバー達がぞろぞろと出てきた。
会場は、黄色い歓声と、
「えええ、ちょっと、カッコよすぎ…」
「顔小さ…」
「脚長ッ」
というどよめきが沸き上がった。
俺も、メンバー達を見た瞬間、人間離れした雰囲気に圧倒され、
「ヤバッ」
と、声が漏れてしまった。
一番最後に、矢野先輩が出てきた瞬間、一際大きな歓声が上がった。
俺は、心の中で「先輩ッ…!!!」と叫んでいた。
イケメン揃いのVECTAの中でも、矢野先輩の美貌は特に際立っていた。
スタイルおばけなので、遠目でも見つけやすい。
もし、俺の高校の先輩じゃなく、たくさんいるアイドルの一人として出会ったとしても、一目で魅了されただろうと思う。
メンバー紹介と、わちゃわちゃしたトークのあと、デビュー曲を歌い、会場は大いに盛り上がった。
あっという間に時間は過ぎ、少し休憩を挟んで、特典会がはじまった。
特典会は、メンバーが横一列に並んでいる前を、客が順番に通り過ぎる、いわゆる「お見送り会」だった。
そうめん流しのようにメンバーの前をスルスルと通過するファンに、笑顔で手を振るメンバー達。
緊張で落ち着かず、何度も深呼吸して、自分の番が来るのを待った。
姉は、手を振りながら、
「がんばってー!応援してます!」
と、メンバーに声をかけながら、慣れた様子でスタスタと歩いて行く。
俺は何と声をかけたらいいかわからず、ヘラヘラペコペコしながら、歩を進めた。
メンバー達は全員、しっかりと俺の目を見て
「ありがとう!」
「また来てね!」
と言ってくれた。
推し(先輩)以外のメンバーでも、やはり目が合うとドキドキしてしまう。
最後に、矢野先輩がいて、他のメンバー同様、笑顔で手を振りながら
「ありがとう!」
と声をかけてくれたが、言外にいろいろな感情が含まれていることは、さすがに察した。

