清掃の時間からはじまる推し活物語 -Season2-

先輩が所属しているONYX ENTERTAINMENTは大手事務所だが、必ずしもVECTAが売れるとは限らない。

アイドル戦国時代の今、頭一つ抜きん出るには、確かな実力、緻密な戦略、そして運が必要不可欠だ。

俺は、矢野先輩のファンだから、当然、VECTAがブレイクすることを望んでいる。

先輩と個人的な付き合いはあるが、一人のファンとして全力で応援するつもりだ。

公式ファンクラブにも入会したし、デビューイベントも申し込んだ。


アイドルオタクの姉に、VECTAのことを話してみたら、流石の反応が返ってきた。

「俺の先輩がいるグループが、デビューしたよ。」

「なんてグループ?」

「VECTA。」

「え!知ってるー!!!
何かの雑誌で気になるイケメン見つけて、検索したら、最近デビューしたグループのメンバーだったんよね!確かそれがVECTAだったはず!」

姉は、興奮した様子でスマホを手に取り、確認した。
「やっぱりそうだ!
えー!あんたの先輩ってどの子?」

「この人。」
姉のスマホを覗き込んで、矢野先輩を指さした。

「マジかぁぁぁ!私が気になってた子じゃん!
後で知ったんだけど、ドリンクのCM出てたよね!
この子絶対売れると思う!」

好きなアイドルの話になると、声がワンオクターブ高くなり、早口になりがちな、オタクの特徴全開で、姉は話を続けた。
(てか、もしかして俺と姉貴、同担?!)

「この子達さぁ、7人全員キャラ違ってていいよね。
私は、入り口はあんたの先輩だったけど、今一番気になるのはこの最年少の子なんだよね~。
子役時代からちょこちょこ見かけてたけど、めっちゃ演技上手いじゃん。
あと、こっちの子はダンススキルあるし、この子は歌うまいよね。」

姉のリサーチ力と情報量、そして、オタクとしての臭覚には驚いた。

ここぞとばかりに、延々としゃべり続ける姉を見て、ふと、他にもこんな人がたくさんいるんだろうな、と思った。

先輩は、もう俺だけの推しではなくなった。

気持ちは繋がっていたとしても、今後、物理的な距離はどんどん離れていくだろう。

そう思った途端、不安と焦燥に駆られ、姉の話が頭に入らなくなった。


…が、とりあえず、姉貴と俺が同担ではないことはわかった。