矢野先輩が、いつまでも俺を離そうとしないので、
「あの、先輩…そろそろ行かないと…」
と、手のひらで背中をポンポンと叩いた。
「んー、八神このあとどうするの?」
先輩は、まだ物足りなさそうな顔をして、渋々体を離した。
「俺は体育館で二階堂の試合を見てから、一緒に帰るつもりです。」
「そか、じゃあオレも久々に試合に出ようかな。」
「え?!先輩が?!
みんなビックリしますよ!」
「元々、バレー部のやつらから『OB戦やるから来れたら来い』って誘われてたんだ。
途中で転校したとはいえ、オレもここのバレー部OBには変わりないし。」
「じゃあ、俺先に行きます。先輩は少し後から来てください。」
「別に一緒でも良くね?」
「ダメです。俺はバレー部とは無関係なので、先輩と一緒に行く理由がありません。」
「…わかったよ。」
先輩とこれからも関係を続けていくためには、慎重に行動しなくてはならない。
先輩は見た目に反して大雑把なところがあるから、俺がしっかりしないと。
体育館では、二階堂たち今年の卒業生を中心としたAチームと、一つ上の代を中心としたBチームが試合をしていた。
OBは直近の卒業生ほど参加人数が多く、上の代になるにつれて少なくなっているようだった。
それぞれのチームには、かなり年上のOBも1、2人ずつ加わっていた。
他にも待機しているチームが3組ほどあって、OB戦は想像以上に盛り上がっていた。
二階堂が、体育館の隅にいる俺に気付いて軽く手を挙げた。
俺は、声に出さずに
「ありがとう」
と口を動かし、手を合わせて感謝を伝えた。
二階堂は全てを理解したように小さく笑うと、相手コートに視線を戻した。
VECTAを愛でる会のメンバーも、各々のタイミングで俺に気付き、
「お!」
という顔をしたり、笑顔を向けてくれた。
試合は両チームとも一歩も譲らず、接戦となっていた。
そこに、矢野先輩がキラキラスマイルで
「お待たせ!」
と言って現れた。
突然のスターの登場に、試合は一時中断し、
「矢野!久しぶり!」
「来れたんだ?!ダメ元で声かけといて良かったわー」
「え?!君、うちのバレー部のOBだったの?」
と、先輩を囲んであっという間に人だかりができた。
ひとしきり盛り上がったあと、先輩の同期の須藤さんが
「矢野には、どのチームに入ってもらおうか?」
と全体を見渡した。
その時、二階堂のチームにいた年配のOBが
「あ、ちょうど良かった。実はさっきから、腰が痛くて…。
君、俺と交替してくれ。」
と、腰を押えながらコートから出ていった。
二階堂は、
「矢野先輩と同じチームで試合するの、久々で嬉しいです。」
と先輩に声をかけ、自分のポジションに戻った。
試合が再開した途端、矢野先輩と二階堂のチームは次々と得点を重ね、あっという間に点差が開いた。
二階堂が的確な位置にトスを上げ、矢野先輩が鋭いスパイクを叩き込む。
バレー部ではない俺が見ても、二人の連携の見事さは一目瞭然だった。
部内での二人の関係性を象徴するような、息の合ったプレーだった。
それに、なんと言っても試合をしている矢野先輩が超絶カッコよくて、俺の心臓は不整脈かと思うくらいドキドキしっぱなしだった。
『お前と一緒なら、オレは今よりもっと輝ける自信がある。』
先輩がそう言っていたことを、今、目の前で証明されているような気がした。
(あの人、俺の恋人なんですけど!! 妄想じゃないよね?!)
そんなことを考えながら、俺は心の中で何度も頬をつねっていた。
おわり
「あの、先輩…そろそろ行かないと…」
と、手のひらで背中をポンポンと叩いた。
「んー、八神このあとどうするの?」
先輩は、まだ物足りなさそうな顔をして、渋々体を離した。
「俺は体育館で二階堂の試合を見てから、一緒に帰るつもりです。」
「そか、じゃあオレも久々に試合に出ようかな。」
「え?!先輩が?!
みんなビックリしますよ!」
「元々、バレー部のやつらから『OB戦やるから来れたら来い』って誘われてたんだ。
途中で転校したとはいえ、オレもここのバレー部OBには変わりないし。」
「じゃあ、俺先に行きます。先輩は少し後から来てください。」
「別に一緒でも良くね?」
「ダメです。俺はバレー部とは無関係なので、先輩と一緒に行く理由がありません。」
「…わかったよ。」
先輩とこれからも関係を続けていくためには、慎重に行動しなくてはならない。
先輩は見た目に反して大雑把なところがあるから、俺がしっかりしないと。
体育館では、二階堂たち今年の卒業生を中心としたAチームと、一つ上の代を中心としたBチームが試合をしていた。
OBは直近の卒業生ほど参加人数が多く、上の代になるにつれて少なくなっているようだった。
それぞれのチームには、かなり年上のOBも1、2人ずつ加わっていた。
他にも待機しているチームが3組ほどあって、OB戦は想像以上に盛り上がっていた。
二階堂が、体育館の隅にいる俺に気付いて軽く手を挙げた。
俺は、声に出さずに
「ありがとう」
と口を動かし、手を合わせて感謝を伝えた。
二階堂は全てを理解したように小さく笑うと、相手コートに視線を戻した。
VECTAを愛でる会のメンバーも、各々のタイミングで俺に気付き、
「お!」
という顔をしたり、笑顔を向けてくれた。
試合は両チームとも一歩も譲らず、接戦となっていた。
そこに、矢野先輩がキラキラスマイルで
「お待たせ!」
と言って現れた。
突然のスターの登場に、試合は一時中断し、
「矢野!久しぶり!」
「来れたんだ?!ダメ元で声かけといて良かったわー」
「え?!君、うちのバレー部のOBだったの?」
と、先輩を囲んであっという間に人だかりができた。
ひとしきり盛り上がったあと、先輩の同期の須藤さんが
「矢野には、どのチームに入ってもらおうか?」
と全体を見渡した。
その時、二階堂のチームにいた年配のOBが
「あ、ちょうど良かった。実はさっきから、腰が痛くて…。
君、俺と交替してくれ。」
と、腰を押えながらコートから出ていった。
二階堂は、
「矢野先輩と同じチームで試合するの、久々で嬉しいです。」
と先輩に声をかけ、自分のポジションに戻った。
試合が再開した途端、矢野先輩と二階堂のチームは次々と得点を重ね、あっという間に点差が開いた。
二階堂が的確な位置にトスを上げ、矢野先輩が鋭いスパイクを叩き込む。
バレー部ではない俺が見ても、二人の連携の見事さは一目瞭然だった。
部内での二人の関係性を象徴するような、息の合ったプレーだった。
それに、なんと言っても試合をしている矢野先輩が超絶カッコよくて、俺の心臓は不整脈かと思うくらいドキドキしっぱなしだった。
『お前と一緒なら、オレは今よりもっと輝ける自信がある。』
先輩がそう言っていたことを、今、目の前で証明されているような気がした。
(あの人、俺の恋人なんですけど!! 妄想じゃないよね?!)
そんなことを考えながら、俺は心の中で何度も頬をつねっていた。
おわり

