清掃の時間からはじまる推し活物語 -Season2-

姉や二階堂に支えられながら、俺は少しずつ日常を取り戻していった。

そして、春。

俺は大学生になった。
社会学部でメディア論について学んでいる。

二階堂や他のクラスメイト達と卒業旅行にも行ったし、大学で新しい友人もできた。

実家の喫茶店は、矢野先輩の直筆サイン入りポスターに気付いたお客さんの口コミで、VECTAの聖地になりつつある。

以前、先輩が雑誌のインタビューで、好きな食べ物はホットケーキと答えていた。
そのこともあって、VECTAのアクスタと一緒にホットケーキの写真を撮るファンの姿も見かける。


​矢野先輩は、一時体調不良が心配されていたものの、その後ドラマの主演に抜擢され、VECTAの人気はさらに加速した。

先輩の初主演ドラマは深夜枠だったが、本格的なミステリー要素が話題を呼び、毎話放送されるたびにSNSは考察で盛り上がった。
そして何より、ミステリアスでどこか現実離れした雰囲気を持つ矢野先輩に、主人公の役柄がぴたりとはまっていた。

傍目には、お互いそれぞれの道で順調に前へ進んでいるように見えるかもしれない。

でも、俺の中には常に矢野先輩がいて、その存在が薄れることは絶対にない。

先輩が、俺の幸せを願って別れを選んだのだから、俺は全力で幸せになろうと決めた。

姉と二階堂は、別れる必要はないと言ってくれたが、おそらく先輩は納得しないだろう。

ちなみに、姉と二階堂は、性格は全然違うタイプだが、サポーターとして俺たちを支えたいという共通認識をきっかけに、いつの間にか仲良くなっていた。

もしかしたら付き合っているのかもしれないが、はっきり報告されたわけではない。