悠真は、扉の前で動けなかった。
「開けちゃダメ」
確かに聞こえた。
しかも、その声は自分の声だった。
扉の向こうにいるはずの蓮の声と、自分自身の声。
あり得ない。
「……誰だ?」
悠真は扉から一歩離れた。
返事はない。
しばらく待っても、何も起こらなかった。
やがて、廊下に夕方のチャイムが響いた。
悠真は逃げるように旧校舎を出た。
その夜。
悠真は眠れなかった。
机の上には、昨日撮った写真を印刷したものが置いてある。
写真には自分一人しか写っていない。
それでも、悠真は覚えていた。
隣には蓮がいた。
絶対にいた。
翌朝、悠真は一つのことを思いついた。
学校の記録を調べればいい。
蓮が本当に存在していたなら、名簿や卒業アルバム、過去の資料のどこかに痕跡が残っているはずだ。
図書室へ向かい、古い学校新聞を探す。
何冊もめくっていく。
そして――
「……あった」
古い新聞の一面に、奇妙な記事が載っていた。
今から二十年前。
この学校の旧校舎で、生徒が一人行方不明になったという記事だった。
名前は――
佐伯蓮。
「……え?」
悠真の手が止まった。
記事によれば、佐伯蓮は当時の高校一年生。
放課後、旧校舎に入ったあと、行方が分からなくなったらしい。
しかし、さらに奇妙なことが書かれていた。
――校内を捜索した結果、生徒が使用していた形跡は発見されなかった。
そして記事の最後には、手書きの文字が残っていた。
「四階の教室を調べること」
悠真は眉をひそめた。
「四階……?」
この学校の旧校舎は三階建てだ。
四階なんて存在しない。
その日の放課後。
悠真は旧校舎へ戻った。
昨日の扉の前まで来る。
扉は閉じたままだった。
悠真はその横の壁を調べた。
すると、壁紙の一部が剥がれていることに気づいた。
指でめくる。
その下には、古い案内図が隠されていた。
一階。
二階。
三階。
そして――
四階。
「……なんで?」
図面には、確かに四階が描かれている。
しかも、四階には一つだけ教室があった。
4年4組。
悠真は図面を持って、階段を上った。
一階。
二階。
三階。
そして、その上には――
屋上へ続く扉しかない。
「四階なんて……ない」
悠真が呟いた瞬間。
背後から、
――コン。
音がした。
振り返る。
昨日の扉が、階段の踊り場に立っていた。
「……え?」
さっきまで、廊下の奥にあったはずなのに。
扉だけが移動している。
そして、その扉の上には新しい表札が取り付けられていた。
4年4組
悠真は後ずさった。
すると、扉の向こうから声がした。
「悠真」
蓮だった。
「ここだよ」
悠真は答えなかった。
「ずっと待ってる」
ドアノブが、ゆっくり回る。
カチャ……。
扉が少しだけ開いた。
隙間の向こうは真っ暗だった。
その暗闇の中から、白い手が伸びてくる。
悠真は反射的に後ろへ下がった。
すると、手が床に何かを落とした。
古い学生証だった。
拾い上げる。
そこには――
佐伯蓮
と書かれていた。
しかし、写真だけが違っていた。
そこに写っているのは蓮ではない。
――悠真だった。
「……なんで、俺が?」
その瞬間、教室の奥から声が響いた。
「やっと見つけた」
扉が、ゆっくり開いていく。
そして悠真は見てしまった。
暗闇の向こうに並んでいる、何十枚もの学生証。
そこに写っている顔は、全部――
自分だった。
「開けちゃダメ」
確かに聞こえた。
しかも、その声は自分の声だった。
扉の向こうにいるはずの蓮の声と、自分自身の声。
あり得ない。
「……誰だ?」
悠真は扉から一歩離れた。
返事はない。
しばらく待っても、何も起こらなかった。
やがて、廊下に夕方のチャイムが響いた。
悠真は逃げるように旧校舎を出た。
その夜。
悠真は眠れなかった。
机の上には、昨日撮った写真を印刷したものが置いてある。
写真には自分一人しか写っていない。
それでも、悠真は覚えていた。
隣には蓮がいた。
絶対にいた。
翌朝、悠真は一つのことを思いついた。
学校の記録を調べればいい。
蓮が本当に存在していたなら、名簿や卒業アルバム、過去の資料のどこかに痕跡が残っているはずだ。
図書室へ向かい、古い学校新聞を探す。
何冊もめくっていく。
そして――
「……あった」
古い新聞の一面に、奇妙な記事が載っていた。
今から二十年前。
この学校の旧校舎で、生徒が一人行方不明になったという記事だった。
名前は――
佐伯蓮。
「……え?」
悠真の手が止まった。
記事によれば、佐伯蓮は当時の高校一年生。
放課後、旧校舎に入ったあと、行方が分からなくなったらしい。
しかし、さらに奇妙なことが書かれていた。
――校内を捜索した結果、生徒が使用していた形跡は発見されなかった。
そして記事の最後には、手書きの文字が残っていた。
「四階の教室を調べること」
悠真は眉をひそめた。
「四階……?」
この学校の旧校舎は三階建てだ。
四階なんて存在しない。
その日の放課後。
悠真は旧校舎へ戻った。
昨日の扉の前まで来る。
扉は閉じたままだった。
悠真はその横の壁を調べた。
すると、壁紙の一部が剥がれていることに気づいた。
指でめくる。
その下には、古い案内図が隠されていた。
一階。
二階。
三階。
そして――
四階。
「……なんで?」
図面には、確かに四階が描かれている。
しかも、四階には一つだけ教室があった。
4年4組。
悠真は図面を持って、階段を上った。
一階。
二階。
三階。
そして、その上には――
屋上へ続く扉しかない。
「四階なんて……ない」
悠真が呟いた瞬間。
背後から、
――コン。
音がした。
振り返る。
昨日の扉が、階段の踊り場に立っていた。
「……え?」
さっきまで、廊下の奥にあったはずなのに。
扉だけが移動している。
そして、その扉の上には新しい表札が取り付けられていた。
4年4組
悠真は後ずさった。
すると、扉の向こうから声がした。
「悠真」
蓮だった。
「ここだよ」
悠真は答えなかった。
「ずっと待ってる」
ドアノブが、ゆっくり回る。
カチャ……。
扉が少しだけ開いた。
隙間の向こうは真っ暗だった。
その暗闇の中から、白い手が伸びてくる。
悠真は反射的に後ろへ下がった。
すると、手が床に何かを落とした。
古い学生証だった。
拾い上げる。
そこには――
佐伯蓮
と書かれていた。
しかし、写真だけが違っていた。
そこに写っているのは蓮ではない。
――悠真だった。
「……なんで、俺が?」
その瞬間、教室の奥から声が響いた。
「やっと見つけた」
扉が、ゆっくり開いていく。
そして悠真は見てしまった。
暗闇の向こうに並んでいる、何十枚もの学生証。
そこに写っている顔は、全部――
自分だった。
