机の上に突っ伏したまま寝入ってしまったらしい。
「まーくん、りんご食べやぁ。まだ寝とるの?」
祖母のその声に、勢いよく頭を上げる。腕の下にはシャーペンで殴りがきした漫画のプロットとネームが乱雑に散らばっている。
壁掛け時計を見ると、まもなく六時半になろうとしていた。夜更かしして漫画を描いていたせいで寝坊してしまった。槍で突かれたように椅子から飛び降り、スマホを掴む。
「どうしたの? そんなに慌ててからに」
「ちょっと友達に電話せんとあかんでさ」
MINEを立ち上げて花井に電話をかける。しばしの呼出音のあと、起き抜けの花井の声が鼓膜に届いた。
『……悠木、おはよ』
「ごめん、電話するの遅くなった! 寝坊して」
『そうなの……? ああ、六時半……全然、早いじゃん……ありがとう』
昼間は、口から生まれた男を地でいくように滑らかに喋るのに、寝起きの今は、まだエンジンのかからない話し方をするのがおかしい。
「誰と電話しとるがね。こんな朝早くから、大ごとだねぇ」
祖母が部屋に入ってきてベッドに腰掛け、にこにことオレを見上げている。
「ちょっとばあちゃん、あっち行っとってよ。友達と話しとるんだで」
いつもの癖が出て訛り口調で反応してしまってから、はっとする。花井に聞かれてしまったか。
『え、いまの何弁? 関西弁?』
顔が赤らむのがわかる。「あ……な、名古屋弁。ばあちゃんと喋るときだけ、うつっちゃって……」
『いいな。バイリンガルみたいじゃん』
「……ショボいバイリンガルだな」
そう自虐しながらも、心臓の裏側があたたまるのを感じる。
『なんか、めっちゃ可愛かった。もう一回喋って』
「は……はあっ?」今日イチの大声が出た。
「なにごとだね? そんなに大きな声出して」
机の上に広げられた、主人公Aの設定が描かれた紙を見下ろす。もう一つ要素を追加するべきか、と思案する。「男すら軽率に口説く」という要素を。
「まーくん、りんご食べやぁ。まだ寝とるの?」
祖母のその声に、勢いよく頭を上げる。腕の下にはシャーペンで殴りがきした漫画のプロットとネームが乱雑に散らばっている。
壁掛け時計を見ると、まもなく六時半になろうとしていた。夜更かしして漫画を描いていたせいで寝坊してしまった。槍で突かれたように椅子から飛び降り、スマホを掴む。
「どうしたの? そんなに慌ててからに」
「ちょっと友達に電話せんとあかんでさ」
MINEを立ち上げて花井に電話をかける。しばしの呼出音のあと、起き抜けの花井の声が鼓膜に届いた。
『……悠木、おはよ』
「ごめん、電話するの遅くなった! 寝坊して」
『そうなの……? ああ、六時半……全然、早いじゃん……ありがとう』
昼間は、口から生まれた男を地でいくように滑らかに喋るのに、寝起きの今は、まだエンジンのかからない話し方をするのがおかしい。
「誰と電話しとるがね。こんな朝早くから、大ごとだねぇ」
祖母が部屋に入ってきてベッドに腰掛け、にこにことオレを見上げている。
「ちょっとばあちゃん、あっち行っとってよ。友達と話しとるんだで」
いつもの癖が出て訛り口調で反応してしまってから、はっとする。花井に聞かれてしまったか。
『え、いまの何弁? 関西弁?』
顔が赤らむのがわかる。「あ……な、名古屋弁。ばあちゃんと喋るときだけ、うつっちゃって……」
『いいな。バイリンガルみたいじゃん』
「……ショボいバイリンガルだな」
そう自虐しながらも、心臓の裏側があたたまるのを感じる。
『なんか、めっちゃ可愛かった。もう一回喋って』
「は……はあっ?」今日イチの大声が出た。
「なにごとだね? そんなに大きな声出して」
机の上に広げられた、主人公Aの設定が描かれた紙を見下ろす。もう一つ要素を追加するべきか、と思案する。「男すら軽率に口説く」という要素を。



