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「あ、やべ、スマホ教室に忘れたわ」
人を好きになったきっかけなど、ただのきっかけにすぎなくて。
いつから神坂という人間を好きになったのかは分からない。
気づけば目で追っていて気づけば好きになっていた。
教室から見える下校途中の彼をぽけっと眺めていれば、微かに聞こえたその声。
校舎の方に踵を返した彼。チャンスだと思った。
今まで邪魔で邪魔で仕方なかったこの青い目が、この秘密が、きっとこの時のためにあったのだと。
自分が今日1日眼鏡をかけていたかどうかなんて、彼は絶対に知らない。
僕の矛盾に気づくほど、神坂くんは僕のことを知らない。
その現実になんとも虚しくなりながらも、眼鏡を外して鞄の奥底に沈める。
そして、ゴミ箱に捨てられたコンタクトを見下ろした。
僕は、自分の青を利用することにした。
「羽柴、膝、汚れてる」
僕に初めて触れたその手。そして僕の目を欲しているような瞳に見上げられた時、どんどん満たしていくある感情。
人は、この感情を『独占欲』と言う。



