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「そんでよ、そのままいい雰囲気になって服脱ぐやん?そしたら、彼女の下着の色何色だったと思う?」
「しろ」
「いや、ピンクだろ」
「赤に1票」
朝っぱらから俺の席の周りを囲んで下世話な話で盛り上がっている友達4人。
ため息をついた。昨日の放課後の時間が打ち消されるように日常で塗り替えられていく。
そういえば、羽柴はもう来ているだろうか、くそう、下品な連中が取り囲んでいるせいで羽柴が見えない。
今日はメガネをしているのだろうか、コンタクトを落としていないだろうか、誰かに、あの目を、
「ブブー、なんと、青!でした!!」
「あお!?」
「話の興味持つタイミング、バグってんぞ神坂」
反応してしまったあとにしまったと思い、慌てて言葉を紡ぐ。らしくない、らしくない、らしくない!
「べ、別にバグってねぇし、誰の何が青色なんてなんも興味ねぇし、なんなのお前ら」
「どした神坂」
「あれじゃね?元カノの下着が青色で嫌な思い出あるんじゃね」
「それか青色の下着の呪いに取り憑かれてんじゃね?」
「あー、あるなこれ」
ねーよ。
「人の机の周りで下品な会話してんなよ、散れ散れバカども」
と、片手を軽く揺らせばケラケラ笑いながら自分の席に戻り始める4人のバカ集団。
1人が離れて行く途中、窓の方に目をやった。
「ラッキー、今日晴れてんじゃん、帰りは彼女と放課後デートだな」
こいつの彼女は、下着の色をバラされている時点ですぐに別れた方がいいと思う。
と、そんなことを考えていればそいつの肩に腕を預けた1人が羨ましそうに言葉を放った。
「いいよなぁ恋人、俺もこんな青空の下で」
「『あお』ぞら!?」
「神坂、呪いが発動してる」
本当、らしくない。4人がやっとこさ俺から離れたあと、俺より少し後ろの方の席で場所も3列ほど離れている羽柴の方に目をやった。
羽柴は頬杖をついてぼうっとしている様子だった。
俺たちのやりとり聞こえてないよな。
「あお」と小さく口を動かす。空気をたくさん含んだ声が朝の騒がしい教室の音にかき消えた。
と、思ったのに。
「っ」
羽柴が不意にこちらを向く。長い前髪、メガネ、黒いコンタクト、その奥に青色が潜んでいるなんて誰も思わない完璧な防備だ。
羽柴の手がゆっくりと上がる。
人差し指と中指を羽柴自身の目の方に向けたのち、俺の方に向けられる。そして、すぐに何事もなかったかのように手が下ろされた。
昨日のことを思い出した。
ーーー「じゃあ、俺が誰にも言わないようにこれからちゃんと見張ってくれよ」
その、青い目で。
そうか、ちゃんと見張ってるからなってそういうことか。
ふいっと顔が逸らされる。
からだを前に戻して、机に顔を伏せた。
薄暗くなった視界で羽柴の動きを脳内で再生する。思わず小さな笑いが溢れた。
なんだよ、あれ、なんか、こう、むず痒い。誰も知らない羽柴の秘密。そして俺が知っているということも誰も知らないという謎の優越感。俺は性格が悪いのだろうか。



