きみの青に飛び込む



羽柴は「ごめん」と小さな声で謝ったあと先に歩き始めた。少し後ろをついていく。

「俺にバレたら結構まずい?」

その背中にそう声をかけた。

「…なんで?」

「クラスでも結構友達とわいわいやってる方だし、口軽そうに見えるかもって」

「ふっ…」

ふ?
羽柴は足を止めてこちらを振り返る。その薄い唇が弧をえがいていた。

「確かに、ちゃんと見てないと誰かに言いそうだな、神坂くん」

「なっ、言わねぇよ、信用ないな!」

ぴゅうっと強めの風が吹いた。
羽柴の前髪がゆらゆらと揺れて、奥に潜んでいる青色が見えた。
オレンジ色の空の光がその瞳にそっと触れて、羽柴という空間が芸術作品みたいな特別感で包まれているような、不思議な感覚。

これは、秘密にしないと。

学校で俺しか知らないこの秘密を守らないと。
なぜかって、そんなの羽柴がバレたくないって言っているわけだし。
それ以外の理由…理由。

「じゃあ、俺が誰にも言わないようにこれからちゃんと見張ってくれよ」

「え?」

羽柴に近づく。そして、羽柴の前髪に触れれば警戒するように羽柴が肩をあげた。
そう、そうやって見ていてくれたらいい、俺が誰にも言わないように。
その青い目が俺をじっと見つめている。
なぜか、ある感情が自分を覆い尽くした。

「…その青い目で」

人は、この感情を『独占欲』と言う。