好きって言ったらキスしてくれる?

 指定された教室には、三学年三クラス分のクラス委員が集まっていた。
 俺以外は、当然のことながら二人組。
 そもそもどこに座ったものかときょろきょろしていると、見知った顔がふり返る。

「あ! 宝田!」

 奏先輩だ。
 ほっとした思いで、俺は奏先輩の後ろの席に座った。

「一年B組は宝田一人? もう一人は?」
「……悠臣です。俺を巻き込んでおいて、今日はバイトがあるとかで、自分だけ帰りやがりました」
「帰りやがりましたって……! ははっ」

 奏先輩は面白そうに笑っているが、その隣に座る眼鏡の先輩は、目を剥(む)いて俺をふり返る。

「一年B組は『楓寮』でクラス委員独占したのか?」

『独占』という言い方が少々気にはなるが、要はそういうことなので俺は曖昧(あいまい)に頷(うなず)く。

「はあ」
「くっ」

 眼鏡の先輩は、額(ひたい)を手で押さえて俯(うつむ)いてしまった。

「まあまあ、桑原……やっぱりこういうことは、寮でしっかり申し送りしておかないとさ」

 ぽんぽんと肩を叩く奏先輩を、眼鏡の先輩はぎろっと睨む。

「お前らはちゃんと通達(つうたつ)してたのか?」
「ううん、全然」
「くっ……これだからお気楽人どもの『楓寮』は……」

 ぶつぶつと恨み言をくり返している眼鏡の——桑原先輩は、どうやら他寮の先輩のようだ。
 奏先輩は俺に片目を瞑(つむ)って、親指を立ててみせる。
 俺も親指を立てて応(こた)えた。

(同じ寮の二人でクラス委員をやるのは、寮にとっていいこと……なのか?)

 よくわからないが、奏先輩がニコニコしているので、そうなのだろう。

(悠臣は知ってたのか? だから俺を巻き沿いに?)

 疑問は残るが、とうの本人がいないので、今は確かめようもない。

(後で訊いてみるか……)

 そんなことを考えている時に、右前方から不機嫌な声が聞こえた。

「なんでお前がいるんだよ、中谷」

 聞いたことのある声だなと思い、見てみると、見覚えのある大きな背中が見える。

「あっ、押上(おしがみ)もいるんだね」

 奏先輩の声に、押上は不機嫌そうに振り返る。

「寝ている間に勝手に決められたんすよ」

 今年楓寮に入寮した一年の中でも、一番大柄で、凄みのある押上が睨んでいたのは、奴と同室の中谷だ。
 こちらは俺よりも小柄で、気も弱いらしく、いつもびくびくしている。

「ぼ、僕は、じゃんけんで負けて……」

 奏先輩がにっこり笑った。

「凄い! 一年のクラス委員、楓寮が四人もいるじゃん」

 奏先輩はぱちぱちと手を叩いているが、その隣に座っている桑原先輩は、頭を抱えて机に突っ伏す。

「最悪だ……」

 桑原先輩はその後、委員長決めのじゃんけんにも負け、クラス委員会委員長に任命されていたので、今日はよほど運の悪い日だったのだろう。
 俺もたいして変わらないような気がするので、ひそかに同情した。