好きって言ったらキスしてくれる?

「このプリント、みんなに配って明後日までに回収してくれ。それから今日の放課後、クラス委員同士の顔合わせの会があるから出席して帰ってくれ」

 担任は俺と悠臣に、プリントの束(たば)を渡しながら言った。

「はい、わかりました」

 前半は笑顔で聞いていた悠臣が、プリントを担任から受け取りながら、表情を少し曇(くも)らす。

「放課後はちょっと……今日は用があって……」

 担任は特に気にしたふうもなく、あっさりと言った。

「そうか? だったら宝田だけでいいから」

(は?)

 不満たっぷりの返事は声に出さず、なんとか心の中だけに留めた。

「よろしくなー」

 担任に軽く頭を下げて、悠臣がプリントを配り始めるから、俺もそれに倣(なら)う。
 最前列の奴に急いでばらまいて、自分の席へ帰ろうとしている悠臣を捕まえた。

「放課後の用って、なんだよ?」

 適当なことを言ってさぼろうとしているとは思わないが、巻き込まれて委員になった感の強い俺だけが、委員会に出席しなければならないことが釈然とせず、訊いてみる。

 悠臣は笑顔のまま、「ああ、バイトだよ」と言った。

(バイト……)

 そういえば、こいつと同じ中学出身の同寮の奴らが、悠臣が部活に入らない理由を、バイトが忙しくてとか言っていた気がする。

(嘘じゃないんだろうけど……)

 よほど疑いの目で見てしまっていたらしい。
 悠臣がにっこり笑って言った。

「お詫びにお土産持って帰ってくるから……よろしくな」
「……おお」

 そこまで恨みに思っていたわけではないので、ひとまず放課後の委員会には俺だけで出席することに同意した。