キタこと北里悠臣と、宝田は、楓寮の308号室で共同生活をしている。
つまり相部屋だ。
高校に入って知り合ったはずだが、とても仲が良く、いつも一緒にいる。
同室の円に、すぐに恋心を抱いてしまった俺から言わせれば、あいつらの間にあるのも、そういう種類の感情なのではないかと思うが、本人たちが気づいているのか、いないのか、公言はしていないので、こちらからは何も言えない。
でも今回のストーカーの件を、宝田がキタには話していないことについては、俺はずっと苦言を呈し続けてきた。
(教えてやれよ……)
これが円だったらと思うと、ゾッとする。
俺が円に向けるのと、キタが宝田に向けるのが、まったく同じ気持ちかはわからないが、あいつがとても宝田を大事にしていることは確かだ。
それなのに自分の知らないところで、今まさに宝田に危険が迫っているとしたら——後で知った時に、取り返しがつかないことになりそうで、それを避けるために、俺はらしくもなくお節介を焼いている。
「浩……優しいね」
円が誉めてくれるので、どんな足労だってプライスレスだがな!
キタは寮の廊下で、ケーキの箱を抱えていた。
「おっ、押上、中谷……宝田は?」
どうやら宝田に食わせたくて、先に帰って甘味を仕入れていたようだが、まずはそれへたどり着くまでに、ヤツが越えなければならない障害について、円が簡単に説明する。
「え……」
絶句していたキタは、円が話し終わる前に、もうケーキの箱を円に押し付けて、寮の玄関へ向かって走り出していた。
「くぉらあっ! 廊下を走んなっ!」
ちょうど出くわした寮長の濱屋先輩が、こめかみに青筋を立てて怒っているので、キタは帰ってきたら反省文確定だが、そんなものどうでもいいだろう。
「あんなキタくん、初めて見た……」
俺の可愛い円が、ちょっと怯えているだろ。あいつ、どうしてくれよう。
だが円の言うとおり、どんなことがあってもいつも笑っているようなキタが、表情を強張らせて目をぎらつかせているのは、俺が見ても迫力だった。
(あんなん、宝田のことどう思ってるか、見たらすぐわかるだろ)
だけどおそらく、宝田本人はわかっていない。
だから、温和なキタがキレるくらい、バカなことをやっている。
(助けてもらってから、たっぷり叱られろ)
その後の流れによっては、二人の関係に変化があるかもしれないが、その場合は何と言おう。
(よお、同士! 仲間だな!)
「…………」
馬鹿らしくなって、考えるのを止めた。
ケーキの箱を抱きしめている円に、「冷蔵庫で保管しておこう」と提案する。
「でも、他の人に食べられちゃうかも……」
名前を書いておいても、中身が減っていることがあるなんて、この寮の治安はどうなってるんだとも思うが、俺の可愛い円に持たせていなくなったんだから、キタの自業自得だ。
「そしたら俺が……円のおやつを兼ねてなんか作ってやるよ」
「ええっ、いいの?」
そんな嬉しそうな顔が見られるのなら、いいに決まっている。
あいつらにとっても、何かのお祝いになればいいなと思った。
(いや、なるだろ……だって、あの顔だぞ)
キタの大迫力のキレ顔は、しばらく忘れられそうにもない。
つまり相部屋だ。
高校に入って知り合ったはずだが、とても仲が良く、いつも一緒にいる。
同室の円に、すぐに恋心を抱いてしまった俺から言わせれば、あいつらの間にあるのも、そういう種類の感情なのではないかと思うが、本人たちが気づいているのか、いないのか、公言はしていないので、こちらからは何も言えない。
でも今回のストーカーの件を、宝田がキタには話していないことについては、俺はずっと苦言を呈し続けてきた。
(教えてやれよ……)
これが円だったらと思うと、ゾッとする。
俺が円に向けるのと、キタが宝田に向けるのが、まったく同じ気持ちかはわからないが、あいつがとても宝田を大事にしていることは確かだ。
それなのに自分の知らないところで、今まさに宝田に危険が迫っているとしたら——後で知った時に、取り返しがつかないことになりそうで、それを避けるために、俺はらしくもなくお節介を焼いている。
「浩……優しいね」
円が誉めてくれるので、どんな足労だってプライスレスだがな!
キタは寮の廊下で、ケーキの箱を抱えていた。
「おっ、押上、中谷……宝田は?」
どうやら宝田に食わせたくて、先に帰って甘味を仕入れていたようだが、まずはそれへたどり着くまでに、ヤツが越えなければならない障害について、円が簡単に説明する。
「え……」
絶句していたキタは、円が話し終わる前に、もうケーキの箱を円に押し付けて、寮の玄関へ向かって走り出していた。
「くぉらあっ! 廊下を走んなっ!」
ちょうど出くわした寮長の濱屋先輩が、こめかみに青筋を立てて怒っているので、キタは帰ってきたら反省文確定だが、そんなものどうでもいいだろう。
「あんなキタくん、初めて見た……」
俺の可愛い円が、ちょっと怯えているだろ。あいつ、どうしてくれよう。
だが円の言うとおり、どんなことがあってもいつも笑っているようなキタが、表情を強張らせて目をぎらつかせているのは、俺が見ても迫力だった。
(あんなん、宝田のことどう思ってるか、見たらすぐわかるだろ)
だけどおそらく、宝田本人はわかっていない。
だから、温和なキタがキレるくらい、バカなことをやっている。
(助けてもらってから、たっぷり叱られろ)
その後の流れによっては、二人の関係に変化があるかもしれないが、その場合は何と言おう。
(よお、同士! 仲間だな!)
「…………」
馬鹿らしくなって、考えるのを止めた。
ケーキの箱を抱きしめている円に、「冷蔵庫で保管しておこう」と提案する。
「でも、他の人に食べられちゃうかも……」
名前を書いておいても、中身が減っていることがあるなんて、この寮の治安はどうなってるんだとも思うが、俺の可愛い円に持たせていなくなったんだから、キタの自業自得だ。
「そしたら俺が……円のおやつを兼ねてなんか作ってやるよ」
「ええっ、いいの?」
そんな嬉しそうな顔が見られるのなら、いいに決まっている。
あいつらにとっても、何かのお祝いになればいいなと思った。
(いや、なるだろ……だって、あの顔だぞ)
キタの大迫力のキレ顔は、しばらく忘れられそうにもない。



