入寮した翌日は、高校の入学式だった。
そして入学式の翌日。
初めてのLHRは、これから一年間所属する委員会を決めるという、年度初めの定番の内容だ。
一クラスが三十人弱という人数は、あまり規模の大きなものではない。
だから必然的に、誰もがどこかしらの委員会に所属することになる。
なるべく楽で仕事の少なそうな委員会に人気が集中するのは当然のことだ。
「それじゃあ次~体育委員やりたい奴~」
とりあえず今日の日直が仕切ってくれ、という担任教師からの指示により、教壇に立った出席番号一番の奴の呼びかけに、教室のあちこちでパラパラと手が上がる。
「じゃあ希望者で集まってじゃんけんしてー」
もう何度目になるかしれない号令に、俺は「今度こそ」という思いで席を立った。
「うわーっ、負けたぁ」
渾身のグーをパーで封じ込まれ、俺はがっくりと肩を落とす。
「宝田、じゃんけん弱っ」
「何回負けてんだよ」
「うるせ」
からかってくる奴らを軽く睨むが、こいつらとは昨日の入学式で初めて会ったばかりだ。
『楓寮』以外の『椛寮』と『柊寮』の奴らなんて、顔と名前が一致しているかもまだ怪しい。
それなのに、すでに何年も一緒に過ごした友だちのように、気やすいやり取りができるのは、寮での時と同じように、クラスも同じだった悠臣がもともと知り合いの奴らに、次々と俺を紹介していったからに他ならない。
「もう後がないぞ」
「わーかってるよ」
励ましなのか煽りなのかわからない言葉をかけてくる奴に言い返し、その『悠臣』を目線だけで探した。
廊下側の席でのじゃんけんに参加した俺とは反対の、窓際の席で何人かと談笑している。
(そういえば……あいつは何委員になったんだっけ?)
確認しようかと黒板をふり返った時、進行役の出席番号一番の奴が、授業中とは思えない大きさになっている勝手な話し声を止めさせるために、パンパンと手を叩いた。
「ほんじゃ次~クラス委員やりたい奴~」
それまで呼びかけと同時に、教室内でいくつも上がっていた手が、今度ばかりは一つも上がらない。
クラスの取りまとめ役なんて、一番面倒くさそうな役職、出来ればやりたくないというのがみんなの共通認識らしい。
もちろん俺もそうだった。
「やりたい奴、いないかー? できれば、部活に入る予定の無い奴がいいんだけど……」
役員決めの注意事項としてそう書かれているらしく、用紙をひらひらと振りながら、そいつはくり返す。
「誰もいないかー? ……困ったな」
最後の本音に被さるようにして、窓際から明るい声がかかった。
「じゃあ俺、やろうか?」
(……へ?)
聞き覚えのある声過ぎて、まさかと思ってふり返ったら本当に悠臣だった。
「キタ、いいのかー?」
信じられないというような顔で、確認する奴に、悠臣はいつもの調子でにっこり笑っている。
「ああ、部活に入る予定は無いし……」
委員に決まった奴の名前を黒板に書く係をしていた出席番号二番の奴が、念を押す。
「じゃあ書くぞ、本当にいいんだな?」
「はははっ、いいよ、その代わりみんないろいろ協力しろよ」
「するする!」
「もちろん!」
悠臣の声掛けに、教室のそこら中で上がるテンション高めな返答を、俺は複雑な気持ちで聞いていた。
(なにも一番めんどうそうな委員、自分から引き受けなくても……)
人が好過ぎるのか、重い空気が嫌いでつい盛り上げようとしてしまうのか、悠臣の性分を、俺はまだ図りかねている。
当然だ。いくら同室・同クラスとはいえ、まだ出会ってたったの三日なのだから。
(変な奴だよな……)
確かに心の中で思っただけだったのに、悠臣がふいに俺をふり返ったので、ドキリとした。
そして入学式の翌日。
初めてのLHRは、これから一年間所属する委員会を決めるという、年度初めの定番の内容だ。
一クラスが三十人弱という人数は、あまり規模の大きなものではない。
だから必然的に、誰もがどこかしらの委員会に所属することになる。
なるべく楽で仕事の少なそうな委員会に人気が集中するのは当然のことだ。
「それじゃあ次~体育委員やりたい奴~」
とりあえず今日の日直が仕切ってくれ、という担任教師からの指示により、教壇に立った出席番号一番の奴の呼びかけに、教室のあちこちでパラパラと手が上がる。
「じゃあ希望者で集まってじゃんけんしてー」
もう何度目になるかしれない号令に、俺は「今度こそ」という思いで席を立った。
「うわーっ、負けたぁ」
渾身のグーをパーで封じ込まれ、俺はがっくりと肩を落とす。
「宝田、じゃんけん弱っ」
「何回負けてんだよ」
「うるせ」
からかってくる奴らを軽く睨むが、こいつらとは昨日の入学式で初めて会ったばかりだ。
『楓寮』以外の『椛寮』と『柊寮』の奴らなんて、顔と名前が一致しているかもまだ怪しい。
それなのに、すでに何年も一緒に過ごした友だちのように、気やすいやり取りができるのは、寮での時と同じように、クラスも同じだった悠臣がもともと知り合いの奴らに、次々と俺を紹介していったからに他ならない。
「もう後がないぞ」
「わーかってるよ」
励ましなのか煽りなのかわからない言葉をかけてくる奴に言い返し、その『悠臣』を目線だけで探した。
廊下側の席でのじゃんけんに参加した俺とは反対の、窓際の席で何人かと談笑している。
(そういえば……あいつは何委員になったんだっけ?)
確認しようかと黒板をふり返った時、進行役の出席番号一番の奴が、授業中とは思えない大きさになっている勝手な話し声を止めさせるために、パンパンと手を叩いた。
「ほんじゃ次~クラス委員やりたい奴~」
それまで呼びかけと同時に、教室内でいくつも上がっていた手が、今度ばかりは一つも上がらない。
クラスの取りまとめ役なんて、一番面倒くさそうな役職、出来ればやりたくないというのがみんなの共通認識らしい。
もちろん俺もそうだった。
「やりたい奴、いないかー? できれば、部活に入る予定の無い奴がいいんだけど……」
役員決めの注意事項としてそう書かれているらしく、用紙をひらひらと振りながら、そいつはくり返す。
「誰もいないかー? ……困ったな」
最後の本音に被さるようにして、窓際から明るい声がかかった。
「じゃあ俺、やろうか?」
(……へ?)
聞き覚えのある声過ぎて、まさかと思ってふり返ったら本当に悠臣だった。
「キタ、いいのかー?」
信じられないというような顔で、確認する奴に、悠臣はいつもの調子でにっこり笑っている。
「ああ、部活に入る予定は無いし……」
委員に決まった奴の名前を黒板に書く係をしていた出席番号二番の奴が、念を押す。
「じゃあ書くぞ、本当にいいんだな?」
「はははっ、いいよ、その代わりみんないろいろ協力しろよ」
「するする!」
「もちろん!」
悠臣の声掛けに、教室のそこら中で上がるテンション高めな返答を、俺は複雑な気持ちで聞いていた。
(なにも一番めんどうそうな委員、自分から引き受けなくても……)
人が好過ぎるのか、重い空気が嫌いでつい盛り上げようとしてしまうのか、悠臣の性分を、俺はまだ図りかねている。
当然だ。いくら同室・同クラスとはいえ、まだ出会ってたったの三日なのだから。
(変な奴だよな……)
確かに心の中で思っただけだったのに、悠臣がふいに俺をふり返ったので、ドキリとした。



