寮の自室へ帰ると、俺は自分のベッドにゴロンと転がった。
「疲れたー」
「だろうな」
悠臣はクスクス笑いながら、荷物の片付けをしている。
疲労度としては、俺と変わらないだろうに、やるべきことをやってから休むという姿勢が眩しくて、俺もむっくり起き上がった。
悠臣の真似をして、鞄の中身を片付けていると、やっぱり笑われる。
「どうした?」
お前みたいにちゃんとしようと思って、とは言えず、俺は話題を探す。
「ん……」
今日に限ったことではなく、悠臣にはいつも話したいこと、話してほしいことがたくさんある。
でもことさら今日は、それが積もりに積もっていて、もう何から話したらいいのかわからない。
「文化祭の劇、寮のやつも出るの?」
とりあえず直近の話題から投げてみたら、悠臣が何とも言えない顔をした。
「うーん……その方がいいようだったらそうするし、裏方がいいようだったらそうする……次のミーティング次第かな」
「なるほど」
それはいかにも、場の空気を読んでなるべくその場を丸く収めようとする悠臣らしい答えで、俺は何度も頷く。
「宝田は?」
逆に訊き返されて、ひとまず「俺も」と答えておいた。
俺の場合は、悠臣の真似をして、その時に求められている答えをうまく出したつもりでも、実は悠臣があらかじめ用意していたレールに乗っただけということが、多々ある。
全て手のひらの上で転がされているようで、面白くない面もあるが、それが結局最善になるので、もうわかっていて乗るつもりでいる。
俺がどうこう一生懸命考えるより、悠臣のほうが、やっぱり視野が広いのだから。
そう思ってはいるけれど——。
「じゃあ演劇部の方も一緒に出る?」
そう問いかけられて、焦らずにはいられなかった。
(それはつまり……悠臣の相手役として!?)
挑むような奏先輩の眼差しが忘れられず、頭の中はそれでいっぱいになる。
「な? は? だって俺、演劇部じゃないし!」
焦りまくる俺を面白そうに見ながら、悠臣はこちらへ近づいてくる。
「俺だってそうだよ」
「寮の出し物レベルならともかく、本格的な演技なんて出来ないって!」
「……そうか」
顎に指を当てて、考えるようなポーズをとった末に、悠臣はくるりと俺に背を向けた。
「奏先輩が予定しているような内容をやるんなら、俺としては、相手は宝田がいいと思ったんだけど……そうか」
そのまま自分のベッドの方へ帰ろうとするので、俺はとっさに腕を掴む。
「だったら簡単に諦めんな! もっと説得しろ!」
「なにそれ……はははっ」
悠臣は吹き出して、ふり返りざまに俺の頭を胸に抱き込んだ。
顔を見られなくなったのをいいことに、俺は食堂で感じた自分の想いを、悠臣に素直にぶつけておく。
「俺は、たとえフリだとわかっていても、お前が他の奴とそんなことしてるの、もう見たくない……それぐらいなら、俺がやる。やってやる!」
悠臣が嬉しそうに俺の頭をぽんぽん撫でる。その手が優しい。
「ありがと、嬉しい」
ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめて、それからふと思い出したように、ぽつりと呟いた。
「あ、でも俺、宝田相手だと、フリで止まれないかも」
「はああああああっ???」
体育祭で、本当にほっぺたに唇を付けられたことを思い出して、火が点いたように顔が熱くなる。
「そこは止めろよ!」
「どうだろ?」
楽しそうな笑い声をあげながら、絶対に顔を上げるつもりがない俺を抱きしめていた悠臣が、ふいに声音を変えた。
「疲れたー」
「だろうな」
悠臣はクスクス笑いながら、荷物の片付けをしている。
疲労度としては、俺と変わらないだろうに、やるべきことをやってから休むという姿勢が眩しくて、俺もむっくり起き上がった。
悠臣の真似をして、鞄の中身を片付けていると、やっぱり笑われる。
「どうした?」
お前みたいにちゃんとしようと思って、とは言えず、俺は話題を探す。
「ん……」
今日に限ったことではなく、悠臣にはいつも話したいこと、話してほしいことがたくさんある。
でもことさら今日は、それが積もりに積もっていて、もう何から話したらいいのかわからない。
「文化祭の劇、寮のやつも出るの?」
とりあえず直近の話題から投げてみたら、悠臣が何とも言えない顔をした。
「うーん……その方がいいようだったらそうするし、裏方がいいようだったらそうする……次のミーティング次第かな」
「なるほど」
それはいかにも、場の空気を読んでなるべくその場を丸く収めようとする悠臣らしい答えで、俺は何度も頷く。
「宝田は?」
逆に訊き返されて、ひとまず「俺も」と答えておいた。
俺の場合は、悠臣の真似をして、その時に求められている答えをうまく出したつもりでも、実は悠臣があらかじめ用意していたレールに乗っただけということが、多々ある。
全て手のひらの上で転がされているようで、面白くない面もあるが、それが結局最善になるので、もうわかっていて乗るつもりでいる。
俺がどうこう一生懸命考えるより、悠臣のほうが、やっぱり視野が広いのだから。
そう思ってはいるけれど——。
「じゃあ演劇部の方も一緒に出る?」
そう問いかけられて、焦らずにはいられなかった。
(それはつまり……悠臣の相手役として!?)
挑むような奏先輩の眼差しが忘れられず、頭の中はそれでいっぱいになる。
「な? は? だって俺、演劇部じゃないし!」
焦りまくる俺を面白そうに見ながら、悠臣はこちらへ近づいてくる。
「俺だってそうだよ」
「寮の出し物レベルならともかく、本格的な演技なんて出来ないって!」
「……そうか」
顎に指を当てて、考えるようなポーズをとった末に、悠臣はくるりと俺に背を向けた。
「奏先輩が予定しているような内容をやるんなら、俺としては、相手は宝田がいいと思ったんだけど……そうか」
そのまま自分のベッドの方へ帰ろうとするので、俺はとっさに腕を掴む。
「だったら簡単に諦めんな! もっと説得しろ!」
「なにそれ……はははっ」
悠臣は吹き出して、ふり返りざまに俺の頭を胸に抱き込んだ。
顔を見られなくなったのをいいことに、俺は食堂で感じた自分の想いを、悠臣に素直にぶつけておく。
「俺は、たとえフリだとわかっていても、お前が他の奴とそんなことしてるの、もう見たくない……それぐらいなら、俺がやる。やってやる!」
悠臣が嬉しそうに俺の頭をぽんぽん撫でる。その手が優しい。
「ありがと、嬉しい」
ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめて、それからふと思い出したように、ぽつりと呟いた。
「あ、でも俺、宝田相手だと、フリで止まれないかも」
「はああああああっ???」
体育祭で、本当にほっぺたに唇を付けられたことを思い出して、火が点いたように顔が熱くなる。
「そこは止めろよ!」
「どうだろ?」
楽しそうな笑い声をあげながら、絶対に顔を上げるつもりがない俺を抱きしめていた悠臣が、ふいに声音を変えた。



