好きって言ったらキスしてくれる?

 たどり着いた先では、意外なことに中谷が押上に追いついていた。
 正しくは、懸命に名前を呼びながら追いかけてくる中谷をさすがに無視できず、押上が自分から足を止めてやった、の方がより正確なのかもしれない。
 とにかく中谷に後ろから抱きつかれて、押上は校舎の陰で足を止めていた。

「————!」
「おっと」

 その場に立ち竦んだ俺を、悠臣がそっと二人からは見えない位置に移動させる。
 泣きながら押上の背中に抱きついている中谷の姿に、俺はドキドキした。

「なんで居なくなっちゃうの」
「ごめん」

 中谷の涙ながらの問いかけにひと言返したまま、押上は動かない。
 そのうち中谷が落ち着いて、涙を拭いながら、押上に回していた腕を解くと、押上はやっと中谷をふり返った。
 重い沈黙が二人の間に落ちる。
 それを破ったのは押上だった。

「先輩たちに囲まれてるのを見てたら、やっぱり我慢できなくなって……こうなることはわかってたし……受けていいって言ったのも俺なのに……ごめん」

 途切れ途切れに苦しい声を絞り出す押上を、中谷は何度も首を横に振りながら見上げる。

「悪いのは僕だから」
「いいや、俺が悪い」
「ううん! 僕が……!」

 お互いに一歩も譲らず、謝罪の応酬が続いて、気がつけばいつの間にか手を握りあっている。
 距離がずいぶんと近いなと、妙な焦りを覚え始めた俺の腕を、悠臣がそっと引いた。

「これ以上は、悪いかも」
「あ……!」

 俺は慌てて二人に背を向け、校庭の方へ帰り始める。
 悠臣も俺の腕を掴んだまま、同じ速度でついてくる。

「あいつらって……」

 二人からはかなり離れてから、俺は何かを言おうとしたが、うまく言葉にならなかった。

「うん……」

 悠臣もそれ以上は何も言わなかったが、同じことを考えているようなのはなんとなくわかった。