「おはよう。」

 「おはよう。」

 朝起きて、学校に行く。夢花と会って「おはよう」を交わす。2学期から学校に行けるようになって、1か月ほど経った。当たり前が当たり前になって、1か月。

 「前期末の成績返却、今日からだよね?」

 「あ! 忘れてた! 私、今日の昼じゃん!」

 前側の入り口横に掲示されたプリントを見ている。今日貼り出されたわけではない。何日も前からそこにあるのに、気にしていなかっただけ。

 「心、浮かない顔だね。心配?」

 「そりゃ心配だよぉ。」

 しゃがみ込んで頭を抱えてしまう。前期中間にあたる1学期末の成績では、テストが受けられなかったからか、ほとんどの科目に「1」が並んだ。中間は仮の成績で、正式記録には残らないと言われているけど、ショックだった。中学校は当たり前に「5」、高校でも苦手な英語でさえ「3」だったから。

 「私のノートで勉強したんだから、大丈夫。それとも私のノートじゃ不安?」

 「いや、そんなことないよ。ないけど。」

 手を振って否定するけど、成績の心配は尽きない。

 「欠席だって、どうなってるか…。」

 本当に心配なのはこっちだ。成績は後から挽回が効く。ぶっちゃけ、大学入試の試験当日に結果が残せれば、行きたい大学には行ける。でも、欠席はそうもいかない。足りない時点で即留年。もう、不安を直視するのが嫌で、夏休み明けから欠席の日数は数えないことにしていた。

 「夏休み終わってから来てるじゃん。その前だって、入院もあったって言うし、大丈夫じゃない?」

 「いやー、入院した時点でかなりヤバかったんだ。入院もやむを得ないけど、公欠とか出停とかじゃないし。」

 「そっか。そうだったんだ。」

 夢花も私の隣にしゃがみ込んだ。そういえば、ここまで詳細に、私が置かれている進級危機について話していなかったかも知れない。

 「やめない…。」

 「ん? なんて?」

 夢花が小さくこぼした声が切れる。

 「やめないよ。クラス変わったって、学年が違うからって。一緒に学校に来るし、一緒に卒業祝ってもらう。」

 「そんな、当たり前じゃん。」

 「だから、心は何も心配しなくていいよ。」

 夢花が肩に乗せた手のひらから、ぬくもりが伝わってきた。