花が散った青い春に何の意味があるのだろうか

 放課後、案の定とでもいうべきか、進路指導室に呼び出された。先生は呆れ顔でため息を吐きながら、俺の前の椅子に座っている。昨日もこの光景見たな~、なんて…。

「さて、なんで呼ばれたのか分かるな?」
「……分かりません」
「くしゃくしゃな上に白紙の進路希望調査な」

 トントンと示された机の上には、ちょうど今朝発掘したプリントがそのまま置かれている。

「お前、卒業後どうしたいんだ?」
「割と本気で1年留年もありかなと思ってます」
「いやなしだよ。卒業してくれ」
「えぇー…」

 俺だって真面目に考えているのに。

 外から運動部の掛け声が聞こえてくる。今頃、同級生は大会に向けて汗を流して部活をしているというのに、何故自分はこんなところにいるのだろう。

「俺は、就職でも進学でも本人が進みたい道を全力で応援したい。でも迷うどころか白紙は困る」

 先生が深く、疲労の色を帯びた溜息を吐いた。
 海は何か目指したい職業があるらしかったが、それも昨日初めて聞いたばかりだ。だからといって、自分の未来が見えてくるわけでもないけど。

「……水谷はどんな感じだった?」
「どんな感じって、何がですか」
「進路とか夢とか」
「知らないです。昨日、初めて夢があるとは聞きましたが」
「昨日…?」
「今まで進路の話とか海としたこと無かったので、昨日初めて知ったんです」

 先生は最初こそ不思議そうな顔をしたが、すぐに納得したように小さく笑った。

「じゃあ、戸田から水谷に伝えといてくれないか。他の先生が言うには、水谷も進路希望調査出してないみたいなんだよ」
「え、俺から言うんですか?」
「なんでも逃げ足が速いらしくてな。いつの間にかいないんだとさ」

 渋々ではあるが、ここは了承しておくべきだろう。

「ええー…分かりました」
「そのついでに、戸田もそろそろ進路決めておけ。せめて…そうだな。夏休み明けまでには決めておいてほしい。そこまで期限伸ばしてやるからさ」
「ありがとうございます」

 そこで話は終わり、俺は急いで海と待ち合わせをしている駐輪場へと向かった。