車で走って数時間。ガタンと一際は大きな揺れで、いつの間にか眠っていた俺は目を覚ました。そして、車窓いっぱいに広がる眩しい海に思わず息を呑んだ。
「ここ…」
「あ、なんだ。もう起きたのか」
「先生。…おれ、ここ知ってます」
「は?」
「ここ、…海と来たんです。幻覚の、うみと、」
間違いない。絶対にここに来た。
震える声でそう告げると、先生は少し考え事をするように黙り込んだ。そして、少し迷ったおぶりを見せた後に口を開いた。
「お前が水谷の幻覚を見てるのかも、と思った後さ…、気になって水谷の担任に色々聞いたんだよ」
そこで先生は言葉を切った。不思議に思って横を見ると、先生は目を細めて海を見つめていた。その目はどこか優しいものだった。
「水谷の生前の希望で自然葬___海洋散骨だったそうだ」
初めて知った事実に言葉が出てこなかった。
「だから、水谷は戸田と一緒に海に行きたがったんじゃないか?」
「でも、あの海は俺の幻覚で…」
「そんな無理に割り切らなくていいだろ。あの時の水谷は、お前の中で確かに生きていたんだし」
先生はそう言って笑った。
その言葉に、どこか救われたような気がした。
そして、程なくして車が止まった。
降りるように言われた先に広がっていたのは、海が見える集団墓地だった。いつの間に用意したのか、花を片手に先生は階段を上る。
「せんせい、」
「野暮なことは聞くなよ。…そういうことだ。お前には知るだけの権利がある」
案内された先は、海が眠っているであろう場所だった。
静かで穏やかな一等地。先生は俺に花を渡すと、何も言わずに後ろに下がってくれた。
震える手で、そっと花を供える。
(…ごめん、海。お前が死んだこと、すぐに認めてやれなくて)
手を合わせ、静かに謝る。
言いたいことは、幻覚を見ていた間に沢山伝えた。だから、今度は、
「海の夢、俺に叶えさせてくれ。海が見たかった景色を、俺も見たくなったんだ」
未来に向けての言葉をしっかり伝えた。
先生を振り返ると、何も言わずに階段を降りた。
俺もそれに倣って降りようとした時、やけにさざ波の音が鮮明に耳に届いた気がした。
「ここ…」
「あ、なんだ。もう起きたのか」
「先生。…おれ、ここ知ってます」
「は?」
「ここ、…海と来たんです。幻覚の、うみと、」
間違いない。絶対にここに来た。
震える声でそう告げると、先生は少し考え事をするように黙り込んだ。そして、少し迷ったおぶりを見せた後に口を開いた。
「お前が水谷の幻覚を見てるのかも、と思った後さ…、気になって水谷の担任に色々聞いたんだよ」
そこで先生は言葉を切った。不思議に思って横を見ると、先生は目を細めて海を見つめていた。その目はどこか優しいものだった。
「水谷の生前の希望で自然葬___海洋散骨だったそうだ」
初めて知った事実に言葉が出てこなかった。
「だから、水谷は戸田と一緒に海に行きたがったんじゃないか?」
「でも、あの海は俺の幻覚で…」
「そんな無理に割り切らなくていいだろ。あの時の水谷は、お前の中で確かに生きていたんだし」
先生はそう言って笑った。
その言葉に、どこか救われたような気がした。
そして、程なくして車が止まった。
降りるように言われた先に広がっていたのは、海が見える集団墓地だった。いつの間に用意したのか、花を片手に先生は階段を上る。
「せんせい、」
「野暮なことは聞くなよ。…そういうことだ。お前には知るだけの権利がある」
案内された先は、海が眠っているであろう場所だった。
静かで穏やかな一等地。先生は俺に花を渡すと、何も言わずに後ろに下がってくれた。
震える手で、そっと花を供える。
(…ごめん、海。お前が死んだこと、すぐに認めてやれなくて)
手を合わせ、静かに謝る。
言いたいことは、幻覚を見ていた間に沢山伝えた。だから、今度は、
「海の夢、俺に叶えさせてくれ。海が見たかった景色を、俺も見たくなったんだ」
未来に向けての言葉をしっかり伝えた。
先生を振り返ると、何も言わずに階段を降りた。
俺もそれに倣って降りようとした時、やけにさざ波の音が鮮明に耳に届いた気がした。



