貴斗くんは玲くんが気になる

「なー、ノートやったら俺のでもええんとちゃう?」

 俺の目の前で、貴斗と三山がそれこそ一触即発っぽい空気を(主に貴斗が)(かも)し出している。

 貴斗は自分の席からノートを持ってきて、俺が今三山に渡したノートと交換させようとしていた。

「けど貴斗、字汚いじゃん。その点、玲は手本みたいに綺麗。あと分かりやすい!」

 三山は俺のノートをペラペラと捲って、適当なところで貴斗に向けて見せる。

 な、なんか恥ずかしいな。けどありがとう、そう言ってくれるのが一番嬉しい。

「あ、ほんまや綺麗やん……いや、ちょお待て! それ俺に対するヒボーチューショーって知らんの!?」

 貴斗がノートに顔を近付けたと思ったらもう一度三山に噛み付いて、三山から奪おうと手を伸ば……あ、それはしないんだ。

「カイジセーキュー? すんぞ、仕舞いに!」

 ノートから顔を離すと、びしりと三山に向けて指をさす。

「無理に難しい言葉使わなくてもいいんじゃね、背伸びしないでさぁ」

「背伸びしてませんー! 至って普通ですぅ!」

 冷静な口調で言う三山に反して貴斗の声はよく通るから、必然的に教室の注目を集める。

 いつもなら俺も見られてる、って思ったらちょっと嫌な気持ちになるのに、貴斗がわぁわぁ騒いでるからかな。

「……ちょっと、面白くないかも」

 三山にも貴斗にも聞こえないくらい小さな声で、そっと囁く。

 楽しそうにクラスメイトとじゃれる貴斗を見てると、どうしてか胸の奥がザワザワする。

 それもこれも、数日前に貴斗から告白されたからで……俺はまだ答えを出せずにいた。

 貴斗はゆっくりでいいって言ってくれたけど、あんまり待たせても駄目だと思うし……そもそも、同じ男だし。

 いや、恋愛に性別なんか関係ないと思うけど。もし貴斗を傷付けるようなことを言ったりしたら、って思ったら考えるものも考えられなくて。

 こういうところが優柔不断で、イライラさせちゃうんだろうな。

 つくづく俺は駄目だなと思うけど、一人で反省するのは学校が終わってからって決めてる。

 幸い次の時間で終わりだし、帰りのホームルームが終わったらすぐに校門を出よう。

 ──なんて、思ってたんだけどな。