初恋セレナーデ【番外編2】父親同盟、復活

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 今回は、社会人になった瑠花が、律とのデート帰りに実家へ寄るため、一人で乗った電車の中で痴漢に遭うところから始まりました。
 しかも、その犯人は――十年前、瑠花に無理矢理キスを迫り、律を傷つけた元彼。
 まさかの再登場です。

 もちろん、エディが黙って見過ごすわけがありません。
 大切な愛娘を再び傷つけられ、しかも相手は、かつて一度断罪したはずのクソ猿――もとい、瑠花の元彼。

 そして、お決まりの亞紗斗召喚。
 十年前と同じように二人は再びタッグを組み、警察署内の一室で相手親子と向き合うことになります。

 しかし、十年前と違ったのは、瑠花自身ももう子どもではなかったこと。
 謝罪すらせず、相変わらず息子を庇う両親。
 そして本人の口から飛び出した、
「瑠花がなぜ怒っているのか分からない」
「昔付き合っていたから、体に触ってもいいと思った」
 という言葉。
 十年前から何も変わっていないどころか、周囲が本人の問題と真正面から向き合わなかった結果、その歪んだ認識がさらに大きくなってしまった――そんな姿として描きました。
 だから今回、瑠花は自分の言葉ではっきり伝えます。

「あたしの体は、あたしのもの」
「あんたのものだったことなんて、一度もない」
 そして被害届を出し、必要な責任もきちんと取ってもらうことを選びました。
 十年前は、律や父親たちに守られていた瑠花。
 けれど今の瑠花は、自分自身でも戦える大人になっています。
 そこへ遅れて現れた律。
 十年前、頬を腫らし、血を流しながら瑠花の前に立った小さな男の子は、今では百八十センチを越える青年になりました。
「あんたはもう、瑠花の元彼ですらない。ただの加害者だ」
 そして、
「十歳のオレでも分かったことを、大人になった今でも分からないんだな」
 十年前の律の言葉を、成長した彼自身にもう一度言わせることができたのは、今回とても書きたかった場面のひとつです。
 姿も声も大人になった律。
 それでも、瑠花を大切に思う気持ちだけは、あの日から何ひとつ変わっていません。

 警察署を出たあとは、少し空気を変えて。
 痴漢被害に遭った瑠花を助けてくれた青年・槙野楓について、律と話す場面を入れました。
 ちなみに、クソ猿を指して放った、
「痴漢車トーマス」という彼の迷言。
 個人的にかなり気に入っています(笑)。
 そして、この槙野楓。
 実は、エディの友人・佐々木武蔵の妻である玲美――旧姓・槙野――の甥だったりします。
 思わぬところで、またひとつ人物同士の縁が繋がりました。
 そして最後は。
 十年ぶりに――父親同盟、復活。
 ……したはずなのですが。

 帰り道、律の腕に楽しそうに抱きつく瑠花を見たエディが、早速その律を敵視しかけるという事態に。
 亞紗斗から、
「今度は律を敵に回すな」
 と釘を刺されたばかりなのに。
 早くも崩壊の危機です。

 十年前は、まだ幼かった瑠花と律を守るために結成された父親同盟。
 十年経った今、二人はすっかり成長し、幼なじみから恋人になりました。
 それでも。
 形が変わっても、時間が流れても。
 子どもたちを大切に思う父親たちの気持ちは、きっと変わりません。

 ただし。
 今後、父親同盟が最も警戒しなければならない人物は、クソ猿でも律でもなく。
 暴走するエディなのかもしれません。


 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。