初恋セレナーデ【番外編】父の娘煩い

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 幼なじみという関係から始まった律と瑠花の恋がようやく実り、瑠花が父に報告したら――案の定、これ。

 娘を溺愛してきたエディにとって、娘に彼氏ができることは非常事態。
 大切な娘だからこそ、いつまでも自分の手元に置いておきたい。
 けれど、娘の幸せを願っていないわけでもなく。
 ただ今回は、娘の相手が気心の知れた友人の息子であり、自分と同じくらい瑠花を大切に思ってくれる相手だと分かっているからこそ、余計に割り切れない。

 いっそクソ猿だったら、
「迷惑千万! 一昨日来やがれ!」
 で済んだのかもしれません。
 ところが相手は、よりによって律。
 文句をつけたいのに、つける隙がない。追い返したいのに、瑠花が幸せそうに笑っている。

 エディにとっては、まさに「認めるしかないのに、認めたくない」という地獄です。
 若い頃は恋に煩い、結婚して娘が生まれれば、妻の生き写しのような娘を溺愛し、今度は娘にまで煩う。
 一途なエディだからこそ、その愛はひたむきというか、極端というか。
 とにかく、真っ直ぐすぎる愛の果てが「娘煩い」にまで発展するという、かなりのこじらせぶりです。

 しかも本人は、いたって真剣。
 娘の幸せを願う気持ちは本物なのに、いざ彼氏ができると、父親としての威厳と寂しさと嫉妬が一斉に押し寄せてくる。
 結果、言動だけがどんどん大げさになっていく。
 でも、どこか憎めない、愛嬌いっぱいのエディ。

 瑠花にとっては少々重すぎる父の愛でも、律ならきっとうまいこと受け止めてくれるはず。
 そしていつか、娘婿となった律となんだかんだ仲良くしている情景も浮かんできます。

 最初は「娘を泣かせたら許さん!」と凄んでいたくせに、気づけば律を食事に誘い、相談に乗り、最後には誰よりも頼りにしている。

 そんな未来も、きっとそう遠くないのでしょう。
 娘に彼氏ができて、ただ複雑な心境に陥る父親だけでは終わらない。
 そこから全力でこじらせ、全力で空回りし、それでも全力で娘を愛してしまうあたりが、エディです。

 今後も、そんな不器用で愛情過多、そしてどこかコミカルなエディのファンが一人でも増えてくれることを願って。

【初恋シリーズ】

『初恋ラプソディ』 十歳の少年・律が、三歳年上の幼なじみ・瑠花に淡い恋心を抱く物語。

『初恋セレナーデ』 それから五年後。 成長した律が「ずっと好きだった」と瑠花に想いを伝え、幼なじみだった二人の恋が始まる物語。

『初恋ノクターン』 十七歳の夏、ウィーンへの留学が決まった律。 瑠花に寂しい思いをさせるくらいならと、一度は別れを考えるものの、二年間の遠距離恋愛を乗り越え、再び彼女のもとへ帰ってくるまでの物語。

 番外編も公開しています。 本編とは少し雰囲気を変え、コミカル要素強めでお届けしています。 そちらも併せて楽しんでいただけると嬉しいです。

【新作のお知らせ】

『リーガルウェポン』を公開しました。
 今回は、法廷を舞台にしたリーガルドラマです。

 これまでの作品とは少しテイストが変わりますが、主人公は―― かつて“最終兵器”と呼ばれた、あの天使。 神城玲です。
 子どもの頃は、天使のような笑顔で容赦なく核心を突いていた玲も、今は23歳。 新米弁護士として法廷に立ちます。
 人を傷つけるほど鋭かった言葉を、今度は誰かを救うための武器に。
 弁護士として悩み、迷いながら、一人前になるまで。 大人になった玲の成長を描いた物語です。


 
『Embrace it all―夢の続きを描いて―』

 涼平の指輪ごと梨歩を受け入れた亞紗斗が、梨歩にプロポーズした日の晩。
 亞紗斗は、梨歩の亡くなった恋人・涼平と対面します。
 彼はなぜ、亞紗斗の前に現れたのか。 そして、その時に涼平から渡された一枚の絵とは――。
 本作で描くのは、「Embrace it all」の中核でもある亞紗斗の愛。
 梨歩の過去も、涼平への想いも、そのすべてを受け入れた愛の先に待っていたのは――涼平からの祝福でした。

 初めての方は、気になる短編から。
 シリーズをご存じの方は、彼らのその後を。
 一つの物語から、また別の物語へ。

 それぞれの作品を辿りながら、ブルーヘヴン、Embrace it allの世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。