初恋ノクターン

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 『初恋ノクターン』は、幼い頃からずっとそばにいた律と瑠花が、少しずつ相手を異性として意識し、恋人になり、そして離れて過ごす時間を越えていく物語です。

 年上の幼なじみだった瑠花を追いかけていた律。
 小さかった彼がいつの間にか自分より背が高くなり、声も変わり、一人の男性として成長していく姿に戸惑いながら、瑠花もまた律への気持ちを変化させていきました。

 そして、十七歳で決まったウィーン留学。

 夢を追いたい。
 でも、大切な人を寂しがらせたくない。

 その狭間で、律は一度、瑠花との別れを選ぼうとします。

 けれど瑠花は、

「あたし、別れないから」

 そう言って、律を送り出しました。

 会いたいときに会えない。
 触れたいときに触れられない。

 そんな二年間を過ごしたからこそ、再会した二人の「お帰り」と「ただいま」には、それまで積み重ねてきた時間のすべてが詰まっているように思います。

 タイトルの「ノクターン」は、夜想曲という意味です。

 静かな夜に誰かを想う時間。
 離れていても消えない気持ち。
 そして、ヴァイオリンを奏でながら夢を追う律。

 そんな二人の恋に似合う言葉として、『初恋ノクターン』というタイトルをつけました。

 律は、梨歩と亞紗斗が選んだ未来の中で生まれた子どもです。
 そして瑠花もまた、若葉とエディが築いた未来の先に生まれた存在です。

 親たちがさまざまな恋や別れを経験し、それでも選び取った未来の中で、今度はその子どもたちが自分たちの初恋を育てていく。

 そんな世代を越えたつながりも、楽しんでいただけていたら嬉しいです。

 律と瑠花の物語は、これからも続いていきます。

 夢を追いながら。
 時にはすれ違いながら。
 それでも、何度でも相手のもとへ帰ってくる。

 二人がこれからどんな旋律を奏でていくのか。

 今後も見守っていただけましたら幸いです。

 また、律の両親・梨歩と亞紗斗が、どのように出会い、過去を抱えながら惹かれ合っていったのかは、 『Embrace it all―すべてを抱いて、生きていく―』で描いています。

 そして、梨歩の過去や、瑠花の両親である若葉とエディの物語をもっと深く知りたい方は、 『君という夢を描いて』 『ブルーヘヴンの彼方に』 もあわせてお読みいただけると嬉しいです。

 親たちが選んだ未来の先で生まれた、律と瑠花。

 それぞれの物語を知ったあとで『初恋ノクターン』を振り返ると、二人の恋がまた少し違って見えるかもしれません。
 ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。