初恋ノクターン

 翌朝。
 オレは、瑠花にどう切り出そうか考えていた。
 願ってもない留学のチャンスを目の前にして、二つ返事で行くつもりでいたのに。
 オレの夢の実現と引き換えに、瑠花との時間が失われてしまう。

 その事実が、急にオレの固い決意を揺るがせた。
 瑠花に寂しい思いをさせるくらいなら。
 瑠花を二年も待たせるくらいなら。

 自分の夢と恋の狭間で、オレは初めて、自分の人生を選ぶことの重さを知った。
 半端な覚悟で臨むわけじゃない。
 瑠花のために、オレが夢を諦めるのも違う。
 きっと瑠花だって、そんなことは望まない。
 でも。

 瑠花を日本に残して、遠い異国の地へ一人で行く覚悟が。
 オレの中には、まだ足りなかったのかもしれない。
 会いたいときに会えない。
 泣いていても、抱きしめてやれない。
 何かあったとしても、すぐには駆けつけられない。
 そんな恋人でいるくらいなら――。
 いっそ。
 そう思うことで、オレはこれからしようとしていることを正当化しようとした。

 瑠花のためだ、と。
 自分に何度も言い聞かせた。
 そして。
 オレは、一つの決断をした。
 ――瑠花と、別れよう。