最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、亞紗斗視点でお届けしました。
理由は、サブタイトルの通り。
亞紗斗の姉についての物語だからです。
亞紗斗はこれまで、きょうだいと過ごすことなく、「一人息子」として育ってきたように見えていました。
けれど実は、双子として生まれていた。
しかも、自分より数分早く生まれた姉がいた――という衝撃の事実が発覚しました。
筆者である私も、びっくりな展開です。
梨歩と付き合い始めて間もない頃。
梨歩が何気なく尋ねた、
「きょうだいいる?」
その一言に、少しだけ言葉を詰まらせる亞紗斗。
亞紗斗自身、姉がいたことは両親から聞いただけで、ほとんど実感がありません。
知っているのは、自分より数分早く生まれた姉が、わずか数時間だけこの世界を生きたこと。
そして、
ガーディナー亞里紗ステファニー。
その名前だけです。
亞紗斗には、姉を失った記憶がありません。
一緒に過ごした記憶もなければ、声も、顔も、体温も知らない。
だからこそ、強い喪失感を経験したわけではありません。
悲しみを抱くには、あまりにも一緒にいた時間が短すぎた。
けれど。
記憶がないからといって、亞里紗という存在までなかったことになるわけではない。
梨歩が改めてその名前を口にしたことで、亞紗斗は初めて、
「自分には、本当に姉がいたのだ」
と、ほんの少しだけ実感したのではないかと思います。
そして、当時の両親のことを思うと、我が子を失った悲しみや喪失感は、きっと計り知れないものだったはずです。
それでも亞紗斗はまっすぐ育ちました。
大切な人を亡くした相手に寄り添い、その人の過去ごと受け入れることのできる青年に。
恋人を亡くした梨歩。
そして、生まれてすぐに姉を亡くしていた亞紗斗。
二人には「大切な人を亡くした」という共通点があります。
けれど、その喪失の形はまったく違います。
梨歩には、愛した記憶がある。
亞紗斗には、記憶そのものがない。
それでも亞紗斗は、会ったことのない姉の存在を否定することなく、自分の人生の中に残しています。
だからこそ彼は、梨歩の過去にも、
「忘れなくていい」
と言えたのかもしれません。
自分の知らない姉。
けれど、確かに存在した姉。
その見えない存在が、亞紗斗の揺るぎない言葉や、相手の過去ごと抱きしめる包容力を、どこかで支えているのかもしれません。
過去も、喪失も、記憶も。
消すのではなく、抱いたまま生きていく。
それが、この『Embrace it all』という物語なのだと思います。
『Embrace it all』も、気づけば少しずつシリーズとして広がってきました。
ひとつひとつは短編という形ではありますが、梨歩と亞紗斗、そして二人の息子・律。彼らが歩んでいく人生を、これからも少しずつ描いていけたらと思っています。
過去を抱きながら、それでも誰かを愛し、未来へ進んでいく彼らの時間が、この先もたくさんの愛に満ちたものでありますように。
よろしければ、『Embrace it all』のほかの物語にも目を通していただけると嬉しいです。
今回は、亞紗斗視点でお届けしました。
理由は、サブタイトルの通り。
亞紗斗の姉についての物語だからです。
亞紗斗はこれまで、きょうだいと過ごすことなく、「一人息子」として育ってきたように見えていました。
けれど実は、双子として生まれていた。
しかも、自分より数分早く生まれた姉がいた――という衝撃の事実が発覚しました。
筆者である私も、びっくりな展開です。
梨歩と付き合い始めて間もない頃。
梨歩が何気なく尋ねた、
「きょうだいいる?」
その一言に、少しだけ言葉を詰まらせる亞紗斗。
亞紗斗自身、姉がいたことは両親から聞いただけで、ほとんど実感がありません。
知っているのは、自分より数分早く生まれた姉が、わずか数時間だけこの世界を生きたこと。
そして、
ガーディナー亞里紗ステファニー。
その名前だけです。
亞紗斗には、姉を失った記憶がありません。
一緒に過ごした記憶もなければ、声も、顔も、体温も知らない。
だからこそ、強い喪失感を経験したわけではありません。
悲しみを抱くには、あまりにも一緒にいた時間が短すぎた。
けれど。
記憶がないからといって、亞里紗という存在までなかったことになるわけではない。
梨歩が改めてその名前を口にしたことで、亞紗斗は初めて、
「自分には、本当に姉がいたのだ」
と、ほんの少しだけ実感したのではないかと思います。
そして、当時の両親のことを思うと、我が子を失った悲しみや喪失感は、きっと計り知れないものだったはずです。
それでも亞紗斗はまっすぐ育ちました。
大切な人を亡くした相手に寄り添い、その人の過去ごと受け入れることのできる青年に。
恋人を亡くした梨歩。
そして、生まれてすぐに姉を亡くしていた亞紗斗。
二人には「大切な人を亡くした」という共通点があります。
けれど、その喪失の形はまったく違います。
梨歩には、愛した記憶がある。
亞紗斗には、記憶そのものがない。
それでも亞紗斗は、会ったことのない姉の存在を否定することなく、自分の人生の中に残しています。
だからこそ彼は、梨歩の過去にも、
「忘れなくていい」
と言えたのかもしれません。
自分の知らない姉。
けれど、確かに存在した姉。
その見えない存在が、亞紗斗の揺るぎない言葉や、相手の過去ごと抱きしめる包容力を、どこかで支えているのかもしれません。
過去も、喪失も、記憶も。
消すのではなく、抱いたまま生きていく。
それが、この『Embrace it all』という物語なのだと思います。
『Embrace it all』も、気づけば少しずつシリーズとして広がってきました。
ひとつひとつは短編という形ではありますが、梨歩と亞紗斗、そして二人の息子・律。彼らが歩んでいく人生を、これからも少しずつ描いていけたらと思っています。
過去を抱きながら、それでも誰かを愛し、未来へ進んでいく彼らの時間が、この先もたくさんの愛に満ちたものでありますように。
よろしければ、『Embrace it all』のほかの物語にも目を通していただけると嬉しいです。



