初恋ラプソディ【番外編】父親同盟、結成。そして、暗雲。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 今回は、我が子を傷つけられた父親二人――エディと亞紗斗が、珍しく完璧なタッグを組むお話でした。

 普段は柔らかく笑っているエディと、必要最低限しか喋らない亞紗斗。

 性格はまるで違うのに、

「娘を傷つけられた」
「息子を殴られた」

 となれば、話は別。

 気がつけば息ぴったりです。

 エディが笑顔で逃げ道を塞ぎ。
 亞紗斗が短い一言で仕留める。

 恐ろしい父親コンビが誕生しました。

 ……が。

 このお話で、本当に容赦がなかったのは、この二人ではありません。

 神城玲、十一歳。

 天使です。

 見た目は。

「お姉ちゃん、別れて正解だね」

「好きな人を泣かせる人って、彼氏にする意味あるの?」

 本人は何ひとつ悪口を言っているつもりがありません。

 ただ、純粋に疑問を口にしただけです。

 なのに、この日一番の破壊力。

 恐るべし、天然。

 そして玲の攻撃対象は、相手の少年だけでは終わりませんでした。

「瑠花お姉ちゃんじゃないの?」

 はい。

 律、終了です。

 本人すらまだ整理できていなかった初恋を、家族全員の前であっさり暴露されました。

 瑠花を守るためなら年上相手にも飛び込めるのに、自分の恋心を指摘された途端、耳まで真っ赤。

 さっきまであんなに格好よかったのに、十歳に戻るのが早い。

 そして、それを聞いた亞紗斗。
「俺が整理している」
「何を?」
「色々だ」

 たぶん本当に、色々あったのでしょう。

 息子が初恋している。
 相手は瑠花。
 三歳年上。
 幼い頃から家族ぐるみ。
 しかも隣には瑠花の父親。

 処理する情報が多い。

 一方のエディも、最初は面白がっていたものの。

 おそらく数分後には気づきます。

「……待って。律が好きなのって、僕の娘?」

 ついさっきまで、

「俺の息子を傷つけた」
「僕の娘もね」

 と完璧な共闘を見せていた父親二人。

 しかし、子どもたちの初恋が絡んだ瞬間、早くも同盟に暗雲が立ち込めました。

 父親同盟。

 結成から崩壊の危機まで、驚異のスピードです。

 そんな大人たちをよそに、瑠花は笑い、律は赤くなり、玲はたぶん何も分かっていません。

 今後も一番危険なのは、玲かもしれません。

 次は誰が、天使の笑顔でとどめを刺されるのでしょうか。

 瑠花と律の初恋とあわせて、そんなところも楽しんでいただけたら嬉しいです。

 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


【初恋シリーズ】

『初恋ラプソディ』 十歳の少年・律が、三歳年上の幼なじみ・瑠花に淡い恋心を抱く物語。

『初恋セレナーデ』 それから五年後。 成長した律が「ずっと好きだった」と瑠花に想いを伝え、幼なじみだった二人の恋が始まる物語。

『初恋ノクターン』 十七歳の夏、ウィーンへの留学が決まった律。 瑠花に寂しい思いをさせるくらいならと、一度は別れを考えるものの、二年間の遠距離恋愛を乗り越え、再び彼女のもとへ帰ってくるまでの物語。

 番外編も公開しています。 本編とは少し雰囲気を変え、コミカル要素強めでお届けしています。 そちらも併せて楽しんでいただけると嬉しいです。

【新作のお知らせ】

『リーガルウェポン』を公開しました。
 今回は、法廷を舞台にしたリーガルドラマです。

 これまでの作品とは少しテイストが変わりますが、主人公は―― かつて“最終兵器”と呼ばれた、あの天使。 神城玲です。
 子どもの頃は、天使のような笑顔で容赦なく核心を突いていた玲も、今は23歳。 新米弁護士として法廷に立ちます。
 人を傷つけるほど鋭かった言葉を、今度は誰かを救うための武器に。
 弁護士として悩み、迷いながら、一人前になるまで。 大人になった玲の成長を描いた物語です。



『Embrace it all―夢の続きを描いて―』

 涼平の指輪ごと梨歩を受け入れた亞紗斗が、梨歩にプロポーズした日の晩。
 亞紗斗は、梨歩の亡くなった恋人・涼平と対面します。
 彼はなぜ、亞紗斗の前に現れたのか。 そして、その時に涼平から渡された一枚の絵とは――。
 本作で描くのは、「Embrace it all」の中核でもある亞紗斗の愛。
 梨歩の過去も、涼平への想いも、そのすべてを受け入れた愛の先に待っていたのは――涼平からの祝福でした。

 初めての方は、気になる短編から。
 シリーズをご存じの方は、彼らのその後を。
 一つの物語から、また別の物語へ。

 それぞれの作品を辿りながら、ブルーヘヴン、Embrace it allの世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。