探偵研究部。――カケラノセカイーー ③サマーゲームパーティー番外編 小笠原が見た風景

 ここはどこだろうか。

 まずは自分の手のひらが小さくなっていることに、小笠原は気づいた。
履いている運動靴までの距離から、背丈もずいぶん低くなってることが分かる。

 身にまとうのは、いつもの紺色のスウェットの上下ではなく、膝小僧のみえるハーフパンツに、黒いTシャツ――ちょっとファンシーな白いどくろ柄だ。
 頭には、海賊帽子。その手には、ふわふわ素材でできた剣が握られている。

 ――幼稚園の頃お気に入りだった恰好だ。

 そう気づけばここは、大きな海賊船の上で、甲板には十数名の子供たちが思い思い過ごしていた。

「おーい! そっちいったぞー!」

 ラガーシャツを着てラグビーボールを蹴ったのは、おなじく小さくなった『キュービー』だ。
 あのボールの軌道は、まっすぐには飛ばない。
 しかし、そこでキャッチしたのは、『いぬだいすき』だ。すぐに『豆電球』にパスするが、『キュービー』が突っ込んで、あっというまに三人は団子になっていた。

 釣りを始めたのは『ジェダイ』で、彼がタコを釣ると、『たこ星人』があっという間にたこ焼きを焼き始めた。
 操舵室で船長をしているのは『OPAPI』で、『YUMA』が「ぼくも、ぼくも」と代わりたがっていた。

 船の周りを泳いでいるイルカたちに飛び乗るのは『チョコレート』、『ながれぼし』、『クリステル』。
 猫を抱いているのは『チャーミー』、白い犬を抱いているのは『しろたん』、カメを抱いているのは『オアシス』で、ペット自慢を始めている。
『ベロンチョ』、『おぶちゃん』、『ラッキー』はお人形遊びでファッション談義をしている。

 この船はどこに向かって行くのだろう。

 スピーカーから、かすかに『QUEEN』のエレキギターの音が響いている。
不安になり、左右を見ると、隣には『ハムスター』がアマチュア無線機を握り、『さっちん』が暗闇に向けて懐中電灯でSOSを発信する。

 いつのまにか小笠原の手には、ふわふわの剣でなく、ずっしり重い真鍮製の六分儀が握られている――。

 小笠原は六分儀を構え、満天の星空の中でただ一つ、動かぬ北極星にむけ照準を合わせる。

「ピ――――」

 フルートのように透き通った声とともに、光り輝く一羽の『ナイチンゲール』が宙を切り現れた。

 小鳥はこちらへ近づくと、大きく翼をはためかせ、つっと、小笠原の肩にとまった。

 小鳥は一度その羽根を啄んでから、まっすぐ船の進む先を見つめる。

 釣られるように、小笠原も航路を見つめる。

 不安はもうなかった。

 六分儀があれば、それがどんな場所でも、そこがどこか分かるのだから。


【小笠原の見た風景・了】